28-2

「この子もシアみたいに伸びしろたっぷりで生まれてくるのかな?」

お腹にそっと手をあて尋ねた声は何故かかすれていた

自分たちでフォローできるなら構わない

でもそれを越えてしまったらどうなるのか…ふとそんな事が頭を過り怖くなる


「…そこはもう覚悟決めるしかないだろ?俺とお前の子どもが普通であるはずがないってさ」

書き換えられた史実の過去を持つ父親と17歳でこの世界に生を受けた母親

共に神々の加護を受けているのだから普通とはいいがたい


「大丈夫だ。俺にとったら子供たちよりサラサのが驚きだったから」

「大丈夫の意味が分かんない…」

「はは…まぁ何とでもなるってことかな?俺もお前もいるし、それで足りなくてもカルムもナターシャもいる。もちろんアランやトータもな」

前世では手に入れた事の無い、当たり前のように味方となり力を貸してくれる人たちだ


「たとえどんな力を持ってたとしても、逆に何も持ってなかったとしても、ありのまま受け入れてやればいい」

「…そうだね」

レイの当たり前のように発せられる言葉が心に染みていく

それでも不安は消えてくれない


「…また不安になってんのか?」

「頭では分かってるんだけどね…」

我ながら情けないことだと苦笑する


「まぁ、それがサラサなんだろうけどな」

「んっ……っ…」

不意打ちのように落ちてきた口づけに思わずレイの腕をつかむ


「はぁ……っ…ぁっ……」

貪るように咥内を攻められ何も考えられなくなってくる

「…んぁ…レィ……っ…」

必死で応えるものの既に限界だった

身体の力が抜け落ちた瞬間レイに抱き留められる


「ふっ…」

「…何で笑うの…」

解せないと思いながら言うと更に笑みが深まる


「不安、忘れたろ?」

「!」

返す言葉が見つからずただレイを見返すしかできない


「考えなくてもいいことはいつでも忘れさせてやる」

「レイ…」

お世辞にもいい方法とは言えないものの効果は抜群だった

どんな言葉をかけられたところで考えないようにすることなど出来ないのだから…

言葉を返す代わりにレイの胸元に顔を埋めるとレイは何も言わずに抱きしめてくれていた



落ち着いてきたころドアをノックする音がした

「どうぞー」

扉に向かって言うと勢いよく開く

入ってきたのはマリクとリアムだった

2人はチラチラとシアを見る


「「シアと遊ぶー」」

「あはは。待ちきれなくなったか?」

「「うん」」

レイの問いに二人同時に頷くとシアの浮かす枕を捕まえようとベビーベッドのまわりで飛び跳ねる

どうやらこうしてシアの念動力のスキルは高くなっているらしい


「遊んでる…のよね?」

「…トレーニングと言えなくもないけど…遊んでるんだろ」

無理やり自分たちを納得させる

マリクとリアムがそれぞれ届くか届かないかという絶妙な位置を保ち続ける辺り、遊びにしては難易度が高い気もするけれど…


「あふ…」

暫くするとシアの声とともに枕が落ちた

魔力切れのようだ


「終わったー?」

「下で遊ぶー?」

「そうね。みんなで下に行きましょう」

「「うん」」

2人は手をつないで階段を降りていく

レイはシアを抱き上げた


「本当仲いいよな」

「そうだね。見てて楽しい」

2人でそう言いながら下に降りる


「随分長いこと上で話してたのね?」

カルムさんとソファでくつろいでいたナターシャさんがこっちを見て尋ねる


「実はね…」

「2人目ができた」

私の言葉に続いてレイが言った


「本当?」

「そりゃーいい」

2人も笑顔で応えてくれる


「2人目、何?」

マリクがナターシャさんの服を引っ張って尋ねる


「シアの弟か妹ができたんだって」

「弟か妹?」

「そう。まだ男の子か女の子かわからないの」

「んーシアは僕の弟だから…シアの弟か妹も僕の弟か妹?」

「そうよマリク。もちろんリアムにとってもね」

「「じゃぁ仲良くする」」

当然のように言う2人に大人4人が顔を見合わせた

驚くほどいい子に育っているようだ

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