25-5
マリクとメリッサさんのクッキーが準備し終えて少ししてから第1弾が焼きあがった
「できたー?」
そわそわしながらずっとキッチンで待っていたマリクとメリッサさんはオーブンから取り出したクッキーを見て嬉しそうに笑う
「一旦このままね。熱いから触るのはもうちょっと待って」
オイルペーパーを滑らせるように天板からテーブルに移し第2弾を焼き始める
その間にお皿を用意しペーパーナプキンを敷いた
「もう大丈夫かな?マリクこうしてお皿に移そうか」
「うん」
大切そうに1つ1つお皿に移す姿が微笑ましい
「メリッサさんはどうします?お皿で持っていくかラッピングするか…」
「そうねぇ…食いしん坊ばかりだからお皿かな?」
「あはは。さすがアランさんの兄弟」
思わず笑ってしまう
「お姉ちゃん食べてみてもいい?」
「もちろんいいわよ」
ジーっとクッキーを見ていたマリクは耐えきれなくなったのかすでにクッキーを掴んでいた
「おいしー」
1枚食べ終えたマリクは椅子から降りてもう1枚手に取った
「ママできた!」
ナターシャさんに駆け寄り差し出している
「まーありがとうマリク」
ナターシャさんは顔をほころばせてクッキーを口にする
「おいしい!マリクすごいわ」
マリクを抱きしめて撫でまわしている
「随分明るくなったよね」
メリッサさんがつぶやくように言う
「ああやっていっぱい抱きしめて、褒めて、撫でて…愛情たっぷり注いでるもの」
「そうね。私もこの子に同じように愛情注がなきゃ」
「ふふ…そんなに気負わなくても気づいたら注いじゃってますよ」
多分それが母性なのだろう
自分の母親にはそれが備わっていなかったが…
「さて、私の分も仕上げちゃおっかな」
「手伝うわ」
「ありがとう。じゃぁこれをこれくらいの厚みで切ってもらってもいい?」
「了解」
メリッサさんに手伝ってもらい大量のクッキーを仕上げていく
おかげでオーブンはフル稼働だ
かなりの量が焼けたタイミングで玄関が騒がしくなった
「パパ?」
出迎えに走っていったマリクはカルムさんに抱き上げられて戻ってきた
「「「おかえりー」」」
「おう。いい匂いだな?」
アランさんがキッチンを覗く
「男性陣はコーヒーでいいのよね?」
「ああ頼む」
「マリク、ママにジュース入れてきてくれる?」
「うん」
マリクは嬉しそうにキッチンに戻ってくる
「お姉ちゃんとメリッサお姉ちゃんも入れる?」
「お願いしようかな」
「私もお願い」
「分かった!」
役割を与えられて満足げにうなずく
自分の分も含めてグラスを4つ用意し1つずつリビングのテーブルに運んでいる姿が微笑ましい
焼きあがったクッキーを2つのお皿に分けて盛りつける
ジュースを運び終えたマリクは自分の作ったクッキーを同じように運んだ
「お、これをマリクが作ったのか?」
「作った!」
答えながら1枚をカルムさんの口元に差し出した
カルムさんはそのまま咥えるとおいしそうに食べる
「うまいなぁマリク。すごいぞ」
ナターシャさん同様に抱きしめて撫でまわす
「マリク俺も食べていいのか?」
「うん!」
レイが尋ねると嬉しそうに頷いた
「メリッサもちゃんとできたのか?」
「もちろん」
自信満々にうなずく
「じゃぁ帰りに寄るか?」
「そのつもり」
「了解。じゃぁ俺らは帰るよ」
「あ、俺も帰るわ」
アランさんに続きトータさんも言う
「そういやトータ最近依頼の後すぐに帰るよな?」
レイが尋ねる
「…気のせいだろ」
明らかに怪しい
「トータ隠し事は無しだぞ?」
カルムさんが笑顔で凄む
「…彼女ができたんだよ」
トータさんがため息交じりに言う
「まじ?」
「お?」
「やっとか?」
次々とこぼされる言葉にトータさんは居心地悪そうにしている
「いつの間に?」
「…前からちょくちょく飲んだりしてる女。先月たまたまそういう空気になってそれから付き合ってる」
「…酔ってやっちゃった系?」
「ナターシャ言い方!」
アランさんがあきれたように言う
「トータさんそのうち一緒に来てくれるの楽しみにしてますね」
「ああ。そのうちな」
トータさんは頷く
「まぁめでたいってことだな。早く紹介しろよな」
カルムさんがトータさんを小突く
「いてーよ。落ち着いたらちゃんと紹介するって」
しばらくみんなにからかわれたトータさんはアランさんたちと一緒に帰っていった
レイはシアを抱き上げソファに身を預ける
それを見たマリクがカルムさんがソファに座るのを待って抱っこをせがむ
その様子にカルムさんは嬉しそうにマリクを抱きあげた
少しするとマリクは眠ってしまった
「すっごいかわいいんだけど」
ナターシャさんの顔がにやけている
「クッキー一生懸命作ってたから疲れちゃったのかも」
「いつも以上にはしゃいでもいたしね」
「こうしてみるとチビは本当に天使だな」
レイがしみじみと呟いていた
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