24-2
バタバタと昼食を済ませると出かける準備をする
といってもインベントリやマジックバッグがあるおかげで荷物があるわけではないのだが
「マリク来い」
カルムさんに呼ばれてマリクは外に飛び出していった
「サラサももう出れるか?」
「大丈夫」
私はシアを抱っこしたままレイに馬の上に抱き上げられた
マリクはカルムさんと、ナターシャさんは1人で乗ると走り出す
「はやーい!」
もう何度も乗せてもらっているマリクに怖がるそぶりは欠片もない
むしろ喜ぶ姿にカルムさんもナターシャさんも嬉しそうだ
「そのうちマリクが1人で乗ってるかもな」
「え?」
「意外と筋よさそうなんだよ。時々マリクだけ乗せて手綱引いて歩いてる」
時々というあたりそれさえも怖がりもしないのだろう
「流石2人が選んだ子?」
「だな」
そんな話をしているうちに町が見えてくる
「おい!レイ、カルムもちょっと待て!」
いつものように馬を預けようとしたところで憲兵に引き留められた
「何だよ?」
「何だよじゃねぇよ…その猫の…」
マリクとシアを指さしながら口をパクパクさせている
「ニャア」
それに気づいたマリクが鳴きまねをするものだからみんなが笑い出す
「それはやっぱりサラサの作品か?」
「そうだけど…それがどうかしたのか?」
「いや。うちのチビにも欲しいなと」
少し照れ臭そうに言う憲兵にレイがからかうような笑みを向けた
「今からモリスの店に持ち込むんだ。それがどういう意味かお前ならわかるだろ?」
「お、おう。モリスの店だな。仕事が終わったら行くって言っといてくれ」
注文する気のようだ
「何か本当に楽しいことになりそうね?」
ナターシャさんが悪い笑みを浮かべて言う
「こうやって歩いてるだけで宣伝になってるからな」
「確かに」
すれ違う子供が猫の鳴きまねをしてる姿も見かける
その母親は言うまでもなく凝視している
当然のように振り返って立ち止まる人まで出てくる始末だ
「おいカルム!ひょっとしてその猫…」
「ああ。今からモリスの店に持ち込むぞ」
「マジか…絶対注文する」
「本当に子供服に飢えてるのね」
「まぁそれもあるだろうけど…この可愛さは…ねぇ」
子供独特の体形がその可愛さを引き立てる
たしかに普通の子供服ならここまで注目されることはないかもしれない
「モリスいるかー」
店に入るなりレイが声を張り上げる
「あぁ、どうした?」
モリスさんは奥で休んでいたのか『よっこらせ』という声の少し後に顔を出す
「…は?」
カルムさんに抱き上げられたマリクとレイに抱き上げられたシア
2人を目にしてモリスさんは目が点になっている
「これ、作る気ある?」
レイがけしかけるように尋ねた
「お前…これを作らないなんてありえないだろ」
「言うねぇ」
「で、サラサの要望は?」
モリスさんは私の方を見て尋ねてくる
「私は特にないよ。これサンプルと型紙」
インベントリから取り出した複製したマリクサイズの服を1着とその型紙をモリスさんに渡す
「あとは…ゾウとかウサギとか…バリエーションはモリスさんが考えてね」
「何が狙いだ?」
「狙いがあるのはナターシャさん達だよ」
「ナターシャ?」
モリスさんはナターシャさんを見る
「大した狙いじゃないのよ?私はただ、町に動物姿の子供が沢山いたら面白いなーって。ねぇカルム」
「そうだな」
にっこり笑うナターシャさんにモリスさんはため息をつく
まさかの理由に変な疲れが出たようなそんな感じが見て取れる
「憲兵が仕事上がったら注文しに来るらしい。他にも何人か注文するって言ってた」
「そりゃこれ見りゃ欲しくもなるだろ。俺だって自分の息子と娘に着せたいからな」
モリスさんはニヤリと笑う
「私の取り分少なくていいからその分安くしたげてね。子ども多い家は大変だろうし」
「分かった。ギルドにはこっちで手続きしといたらいいのか?」
「うん。よろしく」
「…相変わらず欲がない」
「儲けより楽しさ、かな」
私の言葉に横でレイが苦笑していた
半月もたつと町では色んな動物の着ぐるみを着た子供達が走り回っていた
それは新たな人間関係が出来るきっかけになったらしい
そしてモリスさんの店には従業員が一人増えたと後で知ることになる
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