22-2

翌朝、みんなはマリクのはしゃぎ声で起こされた

「晴れたよー」

そう声を張り上げながら皆を起こして回る

私とレイはこれ以上寝るのを諦めて起きてきた


「ねみぃ…」

トータさんは目を擦り、ふらつきながら部屋から出てきた


「あれ?カルムは?」

「この中でぐっすりよ」

ナターシャさんが呆れたように言う


「それにしても…よっぽど嬉しかったのね?」

「そうみたい。ずっと部屋の中だったからねぇ…」

ナターシャさんの視線の先を見るとマリクがてるてる坊主に向かってお礼を言っていた


「俺休みにこんな早く起きたの久しぶりかも…サラサ、コーヒーくれ」

「あ、俺も頼む」

「了解。ナターシャさんは?」

「私はミックスジュースがいいかな」

そう言いながらキッチンの方に一緒に向かう


「マリク」

「なにー?」

「パパ起こしてこい」

「パパ起きないもん」

マリクが拗ねたように言う


「大丈夫だ。走って行ってパパの上に飛び乗ってみ」

「分かった!」

トータさんの言葉にマリクはカルムさんの元に突撃していった

ドアを開け放った音の後にかすかにうめき声が聞こえた気がするけど…

そう思ってナターシャさんを見ると苦笑していた


「…朝食作ろうかな」

誤魔化すように、そして考えないようにしながら食材を取り出す

ナターシャさんと2人で準備を進めているとマリクを肩にのせてお腹をさすりながらカルムさんが起きてきた


「おはよーカルムさん」

「ああ」

「お、カルムちゃんと起こせたな?」

「うん。起こせた!」

側に立ったレイとハイタッチする


「トータの仕業だろ?」

「何がー?」

「ほぅ…レイ、次の依頼は滝の方に…」

「わーるかった!」

トータさんはカルムさんの言葉を遮って言う

その焦った様子を見てみんなが笑う


トータさんは泳ぐのがびっくりするくらい下手でその姿を見られるのを極端に嫌がる

つまりいくつかあるうちの弱点だ


「さて、みんな揃ったし食べましょう」

ナターシャさんが声を張り上げた

一瞬にしてみんながテーブルにやってくる


「ママご飯食べたらお外行く?」

「食べてちょっと休んでからだと嬉しいけど」

ナターシャさんは苦笑交じりに言う


「今日はアランがメリッサもつれて来るんだろ?」

「そうなの?じゃぁ2人が来たらピクニックとかどう?」

「あ、いいかも」

「ぴくにっく?」

マリクが首を傾げる


「お弁当持って遊びに行くのよ」

「行くー!」

即答だった


「じゃぁ沢山お弁当作らないとね」

「お弁当…おにぎり?サンドイッチ?」

「マリク、そこは両方食べたいって言っとけ」

「うん!両方!」

素直に従うマリクを見てナターシャさんがトータさんに呆れた顔を向ける


「色んなもの詰めて持って行こうねー」

「僕も手伝う」

「あら嬉しい」

ナターシャさんがそう言って笑うとマリクも嬉しそうに笑う


朝食を済ませると早速お弁当の準備に取り掛かり、丁度出来上がった頃にアランさんたちがやってきたので、そのまま出かけることにした

マリクは喜びのあまり走り回るのをカルムさんとトータさんが時々交代しながら追いかける

それを見てワイワイ言いながら目的の場所に到着した


「サラサは無理すんなよ?」

「したくても難しいかも」

出産予定日まで2か月弱ともなると流石に体が重い

ここに来るまでもかなりレイが支えてくれていた事にも気付いている


「確かに無理かもな。今なら走ってもマリクのが早いか?」

「流石にそれは無いと思うんだけど…」

といいつつあまり自信はない

それでもやはり日の下に出るのは気持ちがいい


「こうして座ってくつろぐだけでも気持ちいい」

「それわかる。ここのとこずっと部屋の中だったから外に出てるだけでもすごい解放感」

「あはは。メリッサさんはギルドの中だもんね」

もともと古い建物独特のジメっとした感じがあるだけに大変だろうと思う


「こういうの、時々したいね」

「月に1回くらい恒例行事みたいにするのいいかも」

ナターシャさんが乗り気だ


「ピクニックに限らなくてもいいのかも」

「どういうこと?」

「バーベキューとか川遊びとかでも楽しめそうかなーって」

「確かにそうね。自然のなかは気持ちいいし…あとであいつらにも言ってみようか」

聞くまでもなく乗ってきそうだけどとナターシャさんは言う


「あのメンバーいれば怖いものもないしね」

「魔物出ても逆に喜びそう」

「あはは。トータさんとか飯―って飛び掛かっていきそうだよね」

あまりにも想像できそうなことに自然と大笑いしていた

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