第16話 アランとメリッサの結婚
16-1
私たちの婚姻がすんで2か月がたった
ナターシャさんとメリッサさんが訪ねてきたのは、相変わらずレイに甘やかされながら幸せな日々を送っているときだった
「いらっしゃーい」
2人を中に通すと暖かい紅茶とお茶請けのスイートポテトを用意した
「やだコレおいしい…」
「ほんとに…いくつでも食べれそう」
どうやら口にあったようだ
「そういえばレイは?」
「今日は迷宮。夕方には戻ると思うけど…?」
レイに用事があったのかと首をかしげると2人そろって首を横に振る
「1か月依頼受けてなかった反動は治まった?サラサちゃん大分抱きつぶされたでしょ?」
「え?!」
何を聞いてくるのかと思わず見返してしまう
「私でも3日に1回はつぶされてたからねぇ…高ランクの冒険者じゃ仕方ないけど」
「ナターシャさんそれどういうこと?」
突っ込んだのはメリッサさんだ
「実力上がると魔力も上がるでしょう?その魔力が勝手に体の中に溜まっちゃうらしいの」
「体の中に溜まる?」
「そう。それが溜まりすぎると体が辛いらしくて…依頼や迷宮で消費しても、中途半端だと余計辛いってカルムが言ってた」
「…それと抱きつぶされるのとどうつながりが?」
なぜかメリッサさんは食い気味で尋ねている
「性行為したら楽になるらしいのよね」
「「え…?」」
私はメリッサさんと顔を見合わせる
「しかもその魔力が抜けていく感覚がすごくいいらしくて…簡単に理性が飛ぶみたい」
ナターシャさんは楽しそうに言う
「だから高ランクの冒険者は絶倫なんだって。レイなんてカルムより実力も魔力も高いからサラサちゃん大変ね」
「!!」
ナターシャさんの言葉に顔が熱くなる
「って今日はそんな話じゃなくて…ようやくね、アランとメリッサが挙式するらしいの」
紅茶を一口飲んでからナターシャさんが話題を180度変えた
「本当?おめでとーメリッサさん」
「ありがと。もーホッとした」
「実際にはもっと早くてもよかったんでしょう?」
1年ほど前に弾丸が休息をとったときには婚約してると言っていたので不思議には思っていたのだ
アランさんに聞いても大抵ごまかされていたので真相は分からずにいた
「実は婚約が成立した後にアランがアランのお父さんと喧嘩しちゃって…」
「喧嘩?」
「婚約したことを報告する前によそから聞いたらしくてすねちゃって…」
メリッサさんはため息交じりに言う
「アランの家とメリッサの家は昔から家族ぐるみで付き合ってるだけにこじれたらしいのよ」
ナターシャさんは完全に呆れている
「サラサちゃんたちの挙式を見てあてられたんでしょ。ようやく機嫌が直ったみたい」
「…親がいたらいたで大変なんだね…」
私は笑うしかなかった
「でね、サラサちゃんにお願いがあって」
「お願い?」
「ナターシャさんから引き継いだ伝統衣装なんだけど…」
言いよどむメリッサアさんが何を言おうとしているのか悟るのは簡単だった
「もちろん譲ります」
「本当?よかったぁ…」
メリッサさんは心底ほっとしたように言う
伝統衣装は幸せのおすそ分けの意味も込めて親しい人に譲る言い伝えを持っている
そう教えてくれたのはナターシャさんだ
その上で譲らないなどという選択肢は無い
「手入れは済んでるから今日持って帰ります?」
「そうさせてもらえるなら嬉しいんだけど…」
「ちょっと待ってね。上から取ってくる」
私は急いで伝統衣装を取ってきた
「何か前よりきれいになってない?」
ナターシャさんが尋ねる
「ほつれてる部分やちょっと取れかかってた飾りだけ手直ししたの」
「相変わらず手先器用…でも大変だったんじゃない?」
「それほどでもないです。もともと裁縫は得意だから」
「まぁ確かにサラサちゃんは器用だし裁縫の腕も相当だけど」
ナターシャさんはう~んと唸る
「それにこの先も引き継いでいくならいい状態で長持ちして欲しいじゃないですか?」
それは素直な気持ちだった
だからこそ年を重ねた飾りを取り換えることも出来るけど、それをするつもりはなく修復に留めたのだから
「ところで挙式はいつなんですか?」
納得しきれないナターシャさんを見て話しを逸らすことにした
「それ、すごい急になっちゃうんだけど来週なの」
「来週?」
「司祭様の都合とか私や親たちの仕事の調整とかいろいろあって…」
メリッサは苦笑しながら言う
「でね、サラサちゃん、丁度いいから弾丸の休息もそこに合わせることになったのよ。だから来週からまたおじゃましてもいいかしら?新婚さんのところにお邪魔するのはちょっと気が引ける気もするんだけど…」
ナターシャさんは少し申し訳なさそうに言う
「新婚って言ってもずっと一緒に住んでるから特に変わったこともないし…」
「本当に?何となくレイが前よりジャレついてるように見えるけど」
「う…前より甘やかされてる気はします…」
隠しきれそうにもないので素直に白状する
「やっぱりぃ。カルムがからかい倒しそうね。楽しみだわー」
ナターシャさんは本当に嬉しそうに笑っていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます