第11話 弾丸の休息2 アランの婚約者

11-1

翌日弾丸の4人が昼前にやってきた

「いらっしゃい…あれ?」

4人の後ろから知らない女性が入ってくる

知らないはずなのに何故か見覚えがあるように感じる

どこかで会ったかな?

首をかしげながらも思い出すことはできなかった


「俺の婚約者のメリッサ。カルムが紹介も兼ねて連れて来いって言うから…」

アランさんが少し照れながら紹介してくれる

「メリッサです。突然お邪魔することになってごめんなさい」

アランさんに続いてメリッサさんが会釈しながら言った


「アランさんにそんな相手がいるなんて気づかなかった…」

でも驚いたのは私だけで他のみんなは知っていたようだ

あれ?でも前に『アランの彼女』とトータさんが言っていたような気もする


「初めまして、サラサです」

「こいつは俺の。一緒に住んでる」

背後から抱き寄せられ私は身動きが取れなくなる

いきなりどうしたというのか


「レイ、いちゃつくのは自分の部屋だけにしてくれると助かるんだが…」

「心配しなくてもお前からサラサを取ろうなんて思わないから」

カルムさんに続きアランさんがあきれたように言う


「そもそもメリッサ相手に牽制してどうすんだよ」

トータさんの言葉にメリッサさんが初めて何が起こっていたのか理解したようだ


「冗談はともかくそろそろ中にはいっていいかしら?」

「ご自由に?」

ナターシャさんとレイのやり取りにみんな笑いながらリビングに入っていく


「この時間ってことはみんなお食事は?」

「もちろんここで食うつもりで来た」

「お前な…」

自信満々に言い切ったトータさんにレイが大きなため息をつく


「じゃぁ期待に応えなきゃですね。何かご希望は?」

「「「肉」」」

ハモってそう言ったのはカルムさんとトータさん、アランさんである

ナターシャさんが手伝うわと言いながらキッチンに一緒に来る

昨日想像した通り誰も疑問にも思わないようだ

よかった…と一人心の中で安堵した


「何がいいかなぁ…」

「リクエストで肉って…アバウトすぎるわ」

「確かに。でもいつもの事だけどね」

そういつもの事だ

大抵リクエストは肉と返ってくる

レイに至ってはそこに『まだ食ったことがない』とつくこともある

なかなか難易度の高いリクエストである


「それにすぐに飲み始めるだろうし…」

そうつぶやいたときレイがキッチンに来た


「お前らも飲むだろ?」

そう言ってエールの小さめの樽をテーブルに置いていった


「ありがたいっちゃぁありがたいけど…せめて1杯目くらいグラスに注いでいく気づかいは出来ないのかしら?」

「ふふ…レイにそれを求めちゃだめですよ」

ナターシャさんの苦笑交じりの言葉に返しながらグラスを取り出した


「ナターシャさん普段はどんなもの作るの?」

「私だけじゃないとは思うけど…基本串焼きかステーキとパンにスープかしら?」

レイが最初に出してくれたものだ

あれがこの世界の普通でレイが特別なわけじゃないらしいと改めて実感する


「…じゃぁ丼にしようかな」

パンをご飯に変えて、焼いた串焼きを乗せればいいので普段のアレンジにもなるだろう


「丼って?」

「ご飯の上にお肉なんかをのせて食べるの」

「面白そうね」

初めて作るものにウキウキしている感じだ


「ご飯は時間がかかるから先に魔道具にセットして…スープの下準備したら煮込んでる間にサラダかな?」

「…手際までいいのね」

「え?」

「説明しながらご飯の準備終わってる」

「あ…」

いつもの感覚でナターシャさんを置いてきぼりにしていたらしい


「えっとじゃぁスープ作りましょう」

気を取り直して今度はゆっくり説明しながら作業の一部をナターシャさんにお願いすることにした


「丼だから豚汁かな」

そう言いながら材料をインベントリから取り出す


「…サラサちゃん?」

「?」

ジーっとこっちを見るナターシャさんに首をかしげる


「あなたインベントリ使えるの?」

耳元で問われて初めて無意識に使っていたことを思い出す

いつもはレイといるため先にレイがインベントリにしまってくれる

ダミーのマジックバッグを持ってるので何かを取り出す時もたいていごまかすことができる

でも携帯食はともかくマジックバッグに野菜や肉などの食材を備蓄する者はいない


「えっと…黙っててもらえると…」

「そりゃ言いふらしたりしないわよ?でもいつもはレイが頻繁にキッチンと行き来してたから、今まで疑問にも思わなかったわ」

驚きながら言うナターシャさんに、実際にはつまみ食いをしに来ていたのだとは言わない

密約を交わしたところで気を取り直して料理を続けた


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