9-3
「流石に寝転がったままは…」
「あ、じゃぁこれ背中に」
せめて背中を壁に預けて座ろうとしたらジェシーさんが枕を背に当ててくれた
「ありがとう。ジェシーさん」
素直に甘えることにしてお礼を言うとジェシーさんは穏やかな笑みを返してくれる
「改めて自己紹介するわね。この孤児院の指導員でジェシーよ。私自身もこの孤児院で育ったの」
「主に料理を担当してるハンスだ。俺もここで育った。引き取ってもらった後2年前からここで働いてる」
「指導員のダレルだ。俺もここで育って引き取ってもらった。ジェシーと結婚してここで暮らしてる」
「二人はそうだったのね?」
私がそう言うとジェシーさんが少し照れたように頬を赤らめた
「同じく指導員のアルトだ。あんたみたいな人が来てくれてて本当に助かった」
アルトさんが頭を下げてくる
「アルトとは知り合いか?さっきも何か言ってたな?」
「いや、俺が知ってるだけだ。サラサだよな?レイの彼女の」
「え?マジ?」
ダレルさんがギョッとしたようにこっちを見た
「はは…初めまして。サラサです」
「ねぇ、サラサさんってどういう人なの?」
ジェシーさんがアルトさんに小声で尋ねている
「レイの事は知ってるだろ?」
「ええ。もちろん」
「レイが保護してからずっと一緒に暮らしてるんだよな?いつから付き合ってんのかまでは知らねぇけど」
「あ~まぁ」
肯定するのもちょっと照れ臭くて苦笑してやり過ごす
「素性がばれてるとは思わなかったんだけど…皆さんにお願いしてもいいかな…」
「なに?」
「私が光魔法を使ったのは秘密にしてもらえないかな?」
「「「「え?」」」」
4人の声は見事に揃っていた
「私表向きには火魔法しか使えないことにしてて…バレるとちょっと面倒なんだよね」
光魔法は他の属性に比べて使える人が少ない
それに変に広まって貴族に利用されたくないということを簡単に説明する
「普通は自慢するもんだと思ってたけど…?」
「一緒にいる人がレイだからねぇ…これ以上目立ちたくないかな」
「あぁ…変な広まり方したらこの町壊れるか…?」
アルトさんが考えながらつぶやいた
「どういう事よ?」
「いや。レイもだけどレイと仲のいい弾丸も貴族が嫌いだって有名なんだよ。そのためにランク上げてないくらいだし…」
「それは聞いたことあるな。実力はSランク以上だって?」
「らしい。だからサラサが心配するのもわかる」
アルトさんの言葉に4人は顔を見合わせている
「そういうことなら私たちは誰にも言わないけど子供たちまでは…」
「それはたぶん問題ないと思う。あの子たちは正確には何があったかわかってないと思うから」
「まぁ…確かに」
ダレルさんが頷いた
「俺らは誰にも言わないって約束するよ。恩人の願いだしな」
ハンスさんが言うと3人も頷いてくれる
「ありがとう」
私は自然とそう言っていた
「ところで…一体何があったんです?」
秘密にしてもらう約束も取り付けられたことだしと、話を戻す
「ああ、突然盗賊が押し入ってきてな…ここは町から少し離れてるから」
ダレルさんが簡単に説明してくれる付き
大きな建物を少しでも安く確保する必要がある為、孤児院は町はず建っているいることが多いらしい
そのせいで冒険者や警邏の目に付きにくく、盗賊に狙われることもあるようだ
「幸いそれほど強くないやつらだったから俺らで何とか」
アルトさんがそう言いながらダレルさんを見る
「アルトとダレルはCランクの冒険者でもあるの」
ジェシーさんが補足説明をしてくれる
「あいつらが押し入ってきた時、子供たちが恐怖から泣き喚いてあいつらが切れたんだ。俺とジェシーで何とか子供たちをなだめながら逃げてたんだけど…」
「私もハンスも戦うことが出来なくて守るのが精一杯だったのよ」
「外で建物の修理をしてた2人をミリーに呼んできてもらって、2人に応戦して盗賊を追い出してもらったけどその時にはもう…」
「俺とジェシーは立つことも出来なくなってた。それに子どもたちもケガして…」
ジェシーさんの口にできなかった言葉をつづけたハンスも悔しそうに地面をにらみつけている
自分たちだけならともかく子供たちに怪我させてしまうなんてと、自分たちの無力を嘆いているのがイヤというほど伝わってきた
それでも自分を盾に子供たちを守るのは簡単なことではないと思う
そう伝えたとしても、ジェシーさんたちの心が軽くなるわけじゃないのが分かるだけに口にはできなかったけど…
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