恋の始まりは図書館で
桃麦
第1話
「今から、紙を配るので自分のなりたい当番の時間を書いてください」
誰も聞いていない中、私は声を張りあげる。
はぁ、やっぱり誰も聞かないよね…。
今は図書室で図書委員の会議中。だけどみんなやる気ゼロで協力的な態度の人なんて誰もいない。私自身、自分では結構ハートが強い方だと思ってる。けれどこんなに誰も聞いてくれないと、折れるのも時間の問題な気がしてきた。
まぁ、でも私以外の人が図書委員長をしてたら大変だったかもね。私、本が好きって言う気持ちだけでモチベーション保ってるようなもんだし。
「みなさん、静かにして下さい」
数人がチラリとこちらを見ただけですぐに元通り会話を始める。
基本、図書室って私語厳禁なんだが…。
呆れてものが言えない。
ポン
「?」
急に肩に手を置かれ、驚いて後ろを見ると副委員長の赤星彼方が立っていた。「任せとけ!」とでも言うようにウインクしてみんなに向き合った。
「みんな!今から大事な係決めをするらしいぞ!ちゃんと聞いとかなきゃ、変な時間の当番になるかもしれねーよ?」
その瞬間、みんなが会話をやめて私を見た。
「ほら、最初から説明してもらえるか?」
私を気遣うような、それでいて自慢げな感じが顔ににじんでいる。
私はコクリとうなずいて、みんなに同じことを繰り返し始める。
「今から、紙を配るので…」
話しながら隣の赤星に軽く頭を下げた。すると赤星は気にするなとでも言うかのように首を振って微笑んで私を見てくる。
ドキンッ
その瞬間、大きく私の胸が高鳴ったのがすぐにわかった。
その時私は…恋に落ちたのだ。
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