第3話白霊姫はまた出会う
「聖女様!助けてください!」
突然農具を担いだ人がやってきて私の腕を掴んだ。
「落ち着いてください。大丈夫ですから。」
落ち着けるように微笑む。ヴェールのせいで顔は見えないだろうけど農民はふぅと息を吐き出して呼吸を整えると真剣な面持ちで話し出した。
「先程、土砂崩れが起きて、大量の人が下敷きに…」
「わかりました。今すぐ向かいます!案内してください!」
ルーくん、行くわよ!
「へーい」
だるそうに頷くルーくんを掴むと私は貴族にはあるまじき速さで全速で走った。
「っ‼︎この方々全員ですか?」
私の目の前には数十人、いや、100人超えているかもしれない人数の人がいた。
「はい!」
「みなさん、症状がひどい人から教えてください!」
必死に看病していた人たちにそう告げると私は近くの患者を直す。ここからは体力と精神勝負だ。ルーくんは危なそうな患者がいるとテレパシーですぐに教えてくれる。
「次の患者は、どこですか!」
近くにいた患者をとにかく治しながら私を呼ぶ声の方へ歩く。そんなことを続けて小2時間。命に関わる症状の人は全員治し終わり、ほとんど落ち着いてから軽症者に一気に回復魔法をかける。
「聖女様!」
「どうかなさったのですか?」
「いません!いないんです!俺の、妻が…いないんです!」
っ‼︎まさか、まだ土砂崩れに!
「急いで向かいます!」
ルーくん!
「わかってるさ。」
「どうか、どうか助けてください!お腹には俺たちの子がいるんです!」
来てみると土砂崩れの現場は想像を超える被害だった。さっきの男の人には向こうにいる軽症者の人の看病をしてもらうようにお願いして戻ってもらう。
「ルーくん、お願いできる?」
「もちろんだぜ!俺は生命の精霊だからな!」
ルーくんは生命の精霊。生命がどこに宿っているかすぐにわかるのだ。だけどそんなルーくんの力を知ってしまえばいつか悪用する人が出てきてしまう。そのためにも出来るだけ人がいないところでルーくんの力は借りたい。と、言ってもほとんどの人には見えないんだけどね。
「あそこだ!あそこに生命が3つ光ってる!」
わかったわ!
急いで駆けつけて軽く掘り起こすと一人の女の人が出てきた。
「これは、ひどい…。すぐに治さないと…」
さらに掘り起こそうとするが思いのほか埋もれていて私だけじゃ掘り出せない。貴族の令嬢の力のなさをなめてた。
「これじゃ…急いで誰か呼んでこないと…」
「この人を掘り出せばいんだな。」
え?
突然声が聞こえて振り向くとスコップを持ったイケメンが立っていた。
ザッザッとあっさり掘り起こす。その間に私は回復魔法を使った。
「ひどすぎる…」
女性も命が危ないのにお腹の中の子供は虫の息だった。同時に複数の重症患者を治すなんて初めてのことだ。
「集中しろ!」
わかってるよ、ルーくん!
均一な魔力を注ぎ続けるのには集中力がいる。
「あと…少し…」
イケメンが女性を掘り出したと同時に私の治療も終わった。
「ふぅ…」
「お疲れ、オリビア」
ルーくんもお疲れ様ですわ。
「ありがとうございました。」
ペコリと頭を下げて顔を上げると…そこには昨日のイケメンがいた。
「へ?あ、え?」
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