第82話  法則性

 1学年特別テスト2日目。


 今日のリーダーは、オレか……。正直言ってうまくいく気がしない。スケジュールでは、午後からちょっとした試験があるらしい。せめて何もない日にリーダーをやりたかったと無茶なことを思う。まぁ、昨日の時点で今日何かがあるのかは、わからないのでしょうがない。


「大山、おはよう~」


 まだ眠たそうな花咲は、そう言いながらオレの隣に立った。


「おはよう花咲。寝不足か?」


「昨日、友達とお喋りしてたら1時過ぎてた」


「そうか……」


「てか、なんでこんなに早くに起きて朝食作らないといけないわけ?」


「オレにいわれてもな……。あっ、花咲、お皿の準備をしてくれ」


 オレは、花咲に指示を出すと花咲が何か思い出したような顔をした。


「そっか、今日のリーダーは、大山か。何だか頼りないリーダーって感じ」


「人の嫌みを言う暇があったら皿の準備してくれないか?」


「わかったわかった」


 花咲は、そう言ってお皿を取りに行った。花咲は、また近藤と違って、嫌みを言ってくる奴だな。


「おはよう大山、今日はリーダーだったな」


「ん? あぁ、おはよう平坂」

 

 話しかけられると思ってなかったので少し戸惑ってしまう。


「困ったことがあったら頼ってくれ。リーダーだからといって全てやらなければいけないなんてことはないからな」


 なんて優しいんだ平坂は……。


「優しいな平坂は」


「そうか?オレは、ただ普通のことをいっているだけだが……」


 普通か……。確かに濱野のチームメイトであればこれは普通のことなのか。


「そう言えば、大山、濱野を助けてくれたらしいな。チームメイトとしてオレからも礼を言う。ありがとう」


 そう言って平坂は、頭を下げる。


「礼をいわれるほどのことはしてない。オレは、友達を助けただけだ」 


「そうか……。オレは、ダメだな。チームメイトが困っていても解決することが出来なかった。チームメイトとして悔しい」


 いや、平坂は、十分、濱野の支えになっていると思うが。


「平坂、お前も濱野の助けになっていたと思うぞ。相談に乗ったんだろ? それだけで濱野は、平坂に救われてる」


「それならいいんだが……」


 平坂は、仲間思いな奴だな。濱野と似ているところがある。


─────────


 チームの全員で昼食を食べ終え、食堂から出ようとした時メールが一件来た。


「試験……」




  『1学年特別テスト~小テスト~』

〈試験内容〉チーム対抗戦

〈ルール〉

①この試験は、ランダムで選ばれたチーム同士が戦うことになる。

例)チーム2  対  チーム18

②チームには、メンバー一人一人に番号が決められている。

例)チームにA.B.C.D.Eさんの五人いる。

Aさんには1の番号を、Bさんは、2

Cさんには3、Dさんには4、Eさんには5の数字が与えられる。

③自分達は、相手のチームのメンバーの番号を当てる。

(※番号は適当に与えられていないので何かしら法則性があると思うように)

④5人中、一人でも多く名前と番号が一致するほどチーム得点が多く得られる。

⑤一人番号を当てるにつき500点得られる。

⑥番号がわかり次第メールを学校側に送ること。

〈注意事項〉

~チーム得点について~

今回は、所属しているチームのメンバーが混ざったチームでやるため獲得した得点は、それぞれの所属しているチームに平等に入る。




「番号を当てる……か」


 早めに法則性を見つけることが今回の試験の必勝法。ちなみにオレ達のチーム15は、チーム3の人達の番号を当てることになっている。


「リーダーさん、この試験、どうやって攻略する?」


 メールの内容を見た松原は、一人で立ち尽くすオレに話しかける。


「そうだな。まずは、みんながどの番号を与えられたか教えてほしい」


 オレは、松原、平坂、豊田、花咲に与えられた番号をまずは、聞くことにした。


 聞いた結果、花咲が1、平坂が2、松原が3、オレが4、豊田が5という番号を与えられていた。


「この順番に法則性がある。だからまず法則性を見つけよう。法則性を見つけたらすぐに相手チームのメンバーの番号を当てる。何か質問のある人は?」


 オレは、慣れない行動に心配になる。


「いや、ないよ。早く法則性を見つけようぜ」


 松原の言葉に皆頷いたことでさっそく法則性を見つけるため取りかかった。


「一番最初に思い付くのがやっぱりあいうえお順だと思うんだけどやっぱり違うよね?」


 花咲は、白紙の紙に5人の名前を書き、みんなに尋ねる。


「あぁ、違うな。あいうえお順なら大山が1番に来るはずだ。だが1番は花咲……。花咲、何か一番に心当たりはないか?例えば何かのテストで1位だったとか」


 平坂は、花咲に尋ねる。


「残念ながら1位になったりしたことないわ。ということは、賢い順じゃないってことか」


 花咲は、一つの選択肢を消去した。


「オレは、そういう順位とかで番号を振り分けてるように見えないと思うんだが」


 松原は、持っているペンを回しながら言う。


「じゃあ、なんだと思うのよ」


 豊田は、松原に尋ねる。


「この法則性には、名前をよく見るべきだと思うんだ。よく考えてみろ。他人のどうでもいい順位を詳しく知る奴なんてどこにいる。誰もがわかるような法則性にしているはずだ。例えばさっき言っていたあいうえお順とかなら他人のことを知らなくてもわかるだろ?つまりそういうことだ」


 なるほど、確かに何かの順位だと思ってしまうと他人の順位を知っているような人じゃないとその法則には、気づけない。さすがにそんなひどい真似は、学校側もしないはずだ。


「名前か……なぁ、みんな、名前をローマ字に書き換えてみるのは、どうだ?」


 平坂は、5人の名前をローマ字に書き換えたものをみんなに見せる。


「ローマ字……平坂、お前凄いな」


 何かに気づいた松原は、平坂の肩を叩いた。


「どういうことだ?」


 何が凄いのかわからない平坂は、真剣な表情で尋ねる。


「ローマ字だろ?頭文字を取ると花咲はH、平坂もH、オレはM、大山がO、豊田がT、これからわかることないか?」


 松原は、試すようにみんなに言う。


「えっ!?もしかしてアルファベット順?」


 豊田が一番に反応し、気づいた。


「あぁ、その通りだ」


「えっ、でもさ同じアルファベットが二つあるじゃん。そこは、どうやって順番を?」


 花咲は、疑問に思い松原に聞く。


「簡単だ。2つ目の文字を見たらいいだけ。平坂はI、花咲はAだ。だから花咲が一番となる。わかったか?」


「なるほど……わかりやすい解説だった」


「それはよかった。で、法則性見つけたことだし次は、どうする?」


 松原は、そう言ってオレに視線を向ける。


「法則性を使って相手のチームの番号を一人ずつ当てていくしかすることはないよな?」


 オレがそう言うと皆は、頷いた。


「チーム3のメンバーって誰がいるの?」


 豊田は、そう言ってスマホで学校のアプリを開く。


「濱野、小野寺、武内、三島、鳥本だ」


 先にアプリを開いてメンバーを見た平坂は、答えた。なら、濱野、三島、小野寺、武内、鳥本の順だな。誰よりも早く、紙にかかず頭の中で結論を出したオレは、誰かが答えにたどり着くのを待った。


「じゃあ、1が濱野さん、2が三島さん、3が小野寺さん、4が武内、5が鳥本の順ってことね」


 豊田は、そう言って名前が書かれている横にに数字を書いていった。


「そういうことになるな。えっと……学校にメールで答えを入力だったか?」


 オレは、スマホを取り出し聞く。


「あぁ、そうだ」


 松原は、オレの質問に答えてくれた。1が濱野、2が三島、3が小野寺、4が武内、5が鳥本………よし、入力完了。メールを送信し、数秒後に学校からメールが返ってきた。



 メールには、『5人すべて番号を当てたためチーム得点に2500点が入りました』とあった。


「2500ってもしかして私らのチーム、ちゃんと法則性を見つけられたってことだよね?」


 花咲は、嬉しそうに言う。


「そういうことだな。松原、お前に感謝する」


 平坂は、法則性を見抜いた松原に礼をする。


「敵対チームからのお礼か……悪くないな。今回の『1学年特別テスト』は、共同接戦のようなものだ。あと3日、お互い協力し合おうぜ」


 松原がそう言うと他のメンバーは、頷く。


 このチームには、人をまとめるような人材は、いないが、チームを上へと引っ張るような人ならいる。あと3日、最初は、このチームじゃ無理かと思ったがこの様子ならなんとかなりそうだな。

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