第71話 作戦会議兼カラオケ大会

 同じく12月31日、三条達のチームは、カラオケに訪れていた。


「ねぇ、なんで私達は、ここにいるの?」


 マイクを持って歌おうとする藤村と島村。ドリンクを飲んで雑談する三条と加藤。机にノートを広げ冬休みの課題をする瀬川。そんな状況の中、豊田だけが不機嫌そうにイスに座り、足を組んでいた。


「そんな怖い顔すんなよ豊田。せっかくいい雰囲気なんだから」


 三条は、そう言って豊田の隣へ移動し座る。


「てか、おかしくない? なんでこのメンツでカラオケにいるのよ。作戦会議ならカフェやいつものフードコートでもいいでしょ?」


「たまには、場所を変えても問題ないだろ? それに藤村が珍しく提案したんだ。たまには、こういうのも悪くない」


 そう、今回、カラオケに行こうと提案したのは、藤村だ。藤村は、北原と椎名、豊田と一緒にカラオケに行った日以来、カラオケにハマったらしい。


「いやいや、ここに来てから雅と島村さんは、歌ってるし、あんたと加藤は、雑談してるし、瀬川は、課題やってるし作戦会議一つしてないじゃない」


「うるさい女だな。だから友達少ないんだよ」


 豊田の話を聞いていた加藤は、横から言う。


「なっ、加藤、あんた……」


 イラっとしてしまった豊田は、加藤に対して言い返そうとしたが、三条に止められた。


「はぁ、お前らしょうもないケンカするなよ。藤村、村島、一旦歌うのやめろ。後、瀬川もな」


 三条は、一人一人に指示し、藤村と村島は、歌うのをやめてイスへ座る。瀬川も広げていたノートを閉じた。


「豊田が早く作戦会議とやらを始めてほしいという要望があったから始めるぞ」


 三条は、チラッと豊田の方を見てチームメイト全員に話した。


「べ、別に私はそんなこと……」


「豊田がチームを大事だと思っていたなんてな」


「なっ、三条!!」


 豊田は、バンッと机を叩き、置いていたグラスがカランと鳴る。


「じゃ、顔が真っ赤な豊田は、ほっといて、冬休みに入る前、全員に出来るだけ他のチームの人と適当に関われと言ったこと覚えてるな?」


 三条は、全員の顔を見回した。


「覚えてるよ~。てか、他のチームと仲良くしてなんか意味あるの?」


 島村は、三条に尋ねる。


「理由は簡単だ。このチームに足りないものは、他のチームとの交流。今後のことを考えると少しでも関わりがないとやっていけないと予想したんだ。友達や親友になれというわけではない。表面上で構わないから仲良くしておけということだ」


「なるほど、確かにこのチームには、コミュニケーションが高く友達がたくさんいる人は、いませんしね」


 瀬川は、納得した様子で頷く。


「では、北原さんや椎名さんと仲良くしてもよろしいのですね!?」

 

 藤村は、三条に謎の圧をかけて尋ねる。


「あぁもちろん。オレらも今のままじゃ一生雨野には、勝てんからな」


「ふ~ん。それよりさ、まだあの時の犯人教えてくれないの?」


 豊田がいう「あの時」とは、交流会旅行の時だ。


「まだ気になっていたのかよ」


「そりゃ気になるわよ。大勢ロビーに人集めて、それで犯人わからずで最後の最後にはみんな帰らすって意味わからないじゃない」


 確かに豊田のいうことは、よくわかる。三条は、犯人をハッキリさせないままあの場にいた人を全員帰らしたからだ。


「犯人ならわかったさ。だから全員帰したんだ」


「えっ!? わかったの?」


 豊田は、予想外のことに驚いた。


「あぁ、あの時、オレはてっきり雨野が犯人だと思ってた」


「そうね、あんた雨野さんを一番に疑ってたしね」


「だが、自室にいると言った奴が一人いたのは、覚えてるか?」


「えっと……」


「大山ですよね?」


 同じくあの場にいた加藤は、豊田の代わりに答える。


「あぁ、そうだ。大山は、自室でスマホを触っていたと発言した。そこで気になったオレは、最後大山が一人になる状況を作り出し聞いてみたんだ。だが、当然本当のことは話してくれなかった……だが、その後、匿名で一件メールが来たんだ。タイミングよくな」


 そこで三条は、フッと笑う。


「タイミング?」


「あぁ、大山が犯人とバレないようにするためだろう……メールは、『私が犯人です。他の人を疑うのはやめてください』という内容だった。おそらくこのメールは、あの中、普通に話していた雨野。だが雨野は、犯人ではない。雨野は、犯人をかばうために嘘のメールを送りつけたんだ。つまり雨野は、その犯人……大山と協力関係をもっている」


「大山君が犯人ですか……ですが、大山君が雨野さんに協力とは、どういうことなんでしょう」


 藤村は、そう言って考え込む。


「さぁ、オレにもわからん。だから藤村……お前には大山と接触してほしい。大山に関しては、オレ達は、なにも知らないからな。情報収集のためにお願い出来ないか?」


「いいですよ。大山君とは、仲良くしたいのでその役目、ぜひ私に!」


 藤村は、笑顔で答えるのだった。


「ならこの話しは、終わり。で、次の話だが……」


 こうして三条達のチームの作戦会議を終えた後は、約2時間のカラオケ大会が始まった。

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