第48話 何度も誘うと嫌われますよ
期末考査1週間前になった日の放課後、自分のクラスである3組では、放課後に残って文化祭の準備を進めていた。
「みんな聞いて。今日からテスト1週間前だから勉強したい人は、帰ってもいいよ」
文化委員である宮瀬は、クラス全員に声をかけた。
「近藤は、帰らないのか?」
オレは、近くで作業をしていた近藤に尋ねる。
「これをやり終えたら帰るわ。大山君は?」
「オレもやるべきことをやったら帰る。近藤、良ければ一緒に帰らないか?」
「話したいことでもあるの?」
オレが何か話したい様子に見えたのかそう尋ねてきた。
「大したことじゃないが、近藤の意見が聞きたくてな……」
「わかったわ。一緒に帰りましょ」
─────────────
「寒くなってきたわね」
学校を出て寮へと帰る中、隣で歩く近藤は、そう呟いた。
「そうだな。文化祭が終われば冬が来てもっと寒くなるだろうな」
「そうね。で、私に何を聞きたいの?」
近藤にそう聞かれて聞きたいことを聞こうとしたが、オレは目の前から歩いてくる人物に気付き近藤に話すのをやめた。
その人物は、オレに気づいたようでオレと近藤の方へと歩いてきた。
「よう、大山」
「こんばんは、村上先輩」
オレは、無視するわけにもいかず挨拶する。どうやらこの前の2人はいないようだ。前に会った時とは、違って村上は、1人だった。
「そっちは、近藤彩沙だな?」
村上は、そう言って近藤を見た。当然、近藤は、初対面なのに村上に名前を覚えられていることに対して驚いていた。
「大山君、この方は?」
近藤は、オレに小声で聞いてきた。
「2年で新生徒会長の村上陽翔先輩だ」
「そう……この人が新しい生徒会長なのね」
オレと近藤がコソコソと話しているのに気づいた村上は、口を開いた。
「そういえば大山。生徒会の件だが、入る気になったか?」
「いえ、あの日から答えは変わってません」
「そうか。返事が変わったらいつでも言いに来てくれ。オレはいつでもお前を歓迎する」
村上は、そう言ってオレの肩をポンと叩いた。
「あの、オレは気にしませんが、こう何度も誘うと嫌われますよ」
「それもそうだな。じゃあ、またな大山」
村上は、話すことがないのかオレと近藤の前から去った。近藤は、生徒会に誘わないのか……。
「大山君、あなた生徒会に誘われていたのね」
「あぁ、なぜオレが誘われるの全くわからない」
「そりゃそうね。あなた、いいところなんて1つもないもの」
「さらっとひどいこと言ったな」
オレは、少し傷ついたが気にせず近藤に先ほど聞こうとしていたことを聞くことにする。
「近藤、今回の文化祭ことの話だが───」
「あなたも考えていたのね。普通に文化祭が行われて終わるのかってことを」
「近藤もか……。近藤は、あるとしたら何があると思う?」
「そうね……交流会旅行の時やった宝探しみたいなことでもやるんじゃないかと私は思うわ。あなたは、何だと思う?」
「オレも近藤と同じ意見だ」
───────────
期末考査当日、オレは、数学だけ実力を発揮し、他の教科は平均ぐらいの点数を調整しながら試験受けた。すべての教科が終わり、短いホームルームが終わる。
「考査は以上です。3日後からは、文化祭があります。準備頑張ってくださいね」
試験監督をしていた担任の静間先生は、そう言って教室を出た。
「みんな今日で文化祭の準備終わりそうだし頑張りましょ」
宮瀬は、クラスメイトにそう言い、文化祭準備を始める。
「大山君、少し話したいことがあるの。だから場所を変えてもいい?」
イスから立つと、隣から近藤に声をかけられた。
「教室では、話せないことか?」
「えぇ、ここじゃ話しにくいわ」
「わかった」
オレと近藤は、人があまり行き来しない廊下へ移動した。
「で、用件は?」
「今日の朝、江川君に文化祭に回ろうと誘われたのよ」
「へぇー、それはよかったな」
江川も少し頑張り始めたのか。前までオレに頼んできていたのに。
「よくないわよ。私、誰かとまわるなんて嫌。それに私は文化祭当日は、空き教室で勉強するつもりよ」
「文化祭の時まで勉強かよ。で、結局、江川には断ったのか?」
「断りたかったけど江川君が何度もお願いしてくるから断るのも悪いと思ったのよ。だから、1時間だけ一緒にまわることにしたわ」
「そうか。それよりオレにその話をした理由はなんだ? オレには全く関係ない話だと思うが」
「江川君が私を誘った理由を私は知りたいの。あなたなら同じ男子だからわかると思って」
そんなこと言われてもオレは、恋愛に関して疎いし何も言えない気がするが。
「江川は、近藤のこと気になっているんじゃないか?」
「私のことを? なんで?」
知るかよと思わず口に出すところだったがここは心の中にとどめる。
「さぁ、後は自分で考えることだな。気になるなら江川本人に聞くのがいいと思う」
「そうね……。本人に聞く前に自分で考えてみるわ」
「それがいいと思う」
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