文化祭編

第47話 出し物決め

─────1年3組。


「では、今から文化祭の出し物決めをしたいと思います。ここは、文化委員の宮瀬奈々が仕切らせてもらいます。期末考査も近づいてきているので早めに決めて作業をしたいと私は思います」


 オレは、教壇に立つ宮瀬の話を聞きながら隣の近藤と話していた。


「文化祭なんてぼっちの私にとって苦痛でしかないわ」


「オレもだ。一緒に周る人がいなくて困るな」


「それより、この文化祭は普通の学校でやる文化祭なのかしら?」


「オレもそこは気になってた。チームで競いあっているこの学校で仲良く文化祭なんて想像できない」


「まぁそれは、宮瀬さんの話を聞くのが一番ね」


「そうだな……」


 近藤と話すのをやめてオレは、宮瀬に目を向けた。


「出し物ですが何か候補がある人はいますか?」


 宮瀬は、教室を見渡す。


「はいはーい! 脱出ゲームがいいです」


 1人の女子生徒が手を挙げた。


「面白そうだね。宮瀬さん、出し物って教室と中庭で一つずつ出すんだよね? それなら私は、中庭でクレープやりたいなぁ~。私、クレープの焼き方知ってるから教えれるよ」


 北原がそう言うとクラスの男子がざわっとした。


「北原ちゃんのクレープとか最高じゃん」

「だな。クレープがいいと思いまーす」


 男女の発言に宮瀬は、深いため息をついた。


「今のところ教室は、脱出ゲームで中庭は、クレープってなってるけど他に何かある人は?」


 宮瀬は、全員に聞いた。だが、誰も発言は、しなかった。つまり、今の意見に賛成しているということだろう。


「じゃ決まりね。今から脱出ゲーム班とクレープ班に別れるけど、クレープ班は、北原さんがリーダーとしてやってくれる?」


「もちろんだよっ。任せて宮瀬さん」


 北原は、快く引き受けた。


「じゃあ、脱出ゲームの班がいい人は、こっちにかたまって。クレープ班は、北原さんのところに」


 宮瀬の指示で皆、席を立って移動しだした。


「大山君、あなたはどちらへ行くの?」


「近藤は?」


 オレは、あえて答えず近藤に聞き返す。


「私は、クレープね。クレープ作れるから」


「そうか……なら、オレも近藤と一緒にする」


「あなたクレープ作れるの?」


「いや、クレープっていっても作る意外にも役割はあるはずだ。男子1人いないと困ることも必ずある。それに知り合いがいない班にいっても気まずいだけだ」


「つまり私と同じ班がいいと」


「まぁそうだな」


「あなたそう言うこと好きじゃない人に言ったら勘違いされるわよ」


 近藤は、なぜかキレた様子で北原のもとへと移動した。オレ、何か変なこと言ったのだろうか。モヤモヤしたままオレも北原のところへ向かう。


「クレープ班は、私含め女子13人、男子9人だね。女子には、クレープをどうやって店に出すか決めたいから後で私のところに集まって。男子は……大山君、クレープ班の男子リーダーやってくれないかな?」


 北原は、オレの目の前に来て手を握る。


「あぁ、わかった」


 出来ればやりたくないが断る理由が思い付かないしな。


「ありがと。男子には、クレープの種類を考えてほしいな。文化祭当日は、力仕事を任せるつもりだよ」


 北原がそういい終えるとクレープ班は、女子と男子で別れた。


「江川、オレは話すのが苦手だ。まずは何をしたらいいと思う?」


 オレは、同じ班の江川に聞いた。


「そうだなぁ。北原に言われた通りまずは、どんなクレープがいいか決めようぜ」


「そうだな……」



──────────



 同時刻、1年2組では、すぐに出し物が決まりさっそく準備が進められていた。


「文化祭をやる意味がわからないわ」


 出し物に必要な物を紙に書いていく笠音は、ボソッと呟いた。


「確かにそう思われる方は、たくさんいるはずです。この学校は、本来クラス仲良く文化祭の出し物なんてありえないこと……」


 隣で座る雨野は、そう言ってペンを机の上に置く。


「千佳は、この文化祭、普通に楽しくやって終わると思う?」


「どうでしょう。私にもわかりません。なので私は普通にこの文化祭を楽しみます」 


「そう……」


「雨野さん、笠音さん! フライドポテト班で必要なお金がこんな感じになったんだけど大丈夫だと思う?」


 濱野は、2人に1枚の紙を見せた。


「大丈夫だと思いますよ。私たちの班も同じくらいなので」


「そっか。ありがとね」


 濱野は、そう言って平坂のもとへと行った。


「ところで穂乃果さんは文化祭誰と回りますか?」 


「私は……」


 笠音は、困った。いつも雨野といるが文化祭まで一緒にいなくてもいい。けど、笠音は、雨野以外親しい人はいない。


「もし良ければ一緒に回りません? 他のチームの方を誘うことに少し抵抗があります。そらならばいつも親しくしている穂乃果さんと回った方が私も笠音さんもいいと思うんです」


「そうね。1人で回るのも嫌だし。いいわよ。一緒に回りましょ」


「楽しみですね、文化祭」


「そうね……」



───────────



 同時刻、1年6組。


「翔太~文化祭、一緒に回ろうよ」


 準備中、花咲は、木之本に言う。


「もちろんいいよ。けど、生徒会もあって忙しいから香奈といれる時間が少ないけど大丈夫?」


「うん、大丈夫だよ。その間は他の友達といるから」


「わかった……三条、加藤、少しは手伝え」


 木之本は、先程からなにもしない二人に注意する。


「わかったよ、加藤めんどくさいがやるぞ」


「はぁ~あの2人は、人に言われないと動かないのかよ」


 木之本は、大きなため息をつくのだった。



────────────



 放課後の生徒会では、文化祭について話し合いが行われていた。


「普通に文化祭をしても面白くない……そこで提案があるんだ」


 生徒会長である二年の村上が生徒会2人に聞く。


「提案とは、何でしょう?」


 早見は、首をかしげた。


「文化祭でチーム得点を貰えるイベントをやるんだ。今までやってきた学校行事は、すべてチーム得点を貰えていた。それなのに文化祭ではなにもない。なんてつまらないことは嫌だろ?」


「確かにそうですね。ですが具体的にどんなイベントをするのですか?」


「1つ考えてある。だが、これは当日まで2人には話せない。イベントをすることは、文化祭当日に全校生徒に話す。それまで楽しみにしておくんだな」


「わかりました。楽しみにしてますね、陽翔君」


 早見の言葉に村上は、笑うのだった。

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