1対1のチーム対抗戦テスト編

第39話 それぞれ動き出すチーム

 パートナー試験制度で行われた中間考査が無事終わり、体育館では、選挙の結果発表が行われていた。


「初めまして、この学年をまとめる者として選ばれた木之本翔太です。選ばれたからには、より良い学校生活が送れるようにしたいと僕は思います」


 投票の結果1位に選ばれた木之本は、1年全員の前で宣言した。


「気づけば、10月。そろそろ順位を上げていかないと残念な結果で1年が終わるわ」


 体育館を出たあと近藤は、オレと一緒に教室へ戻る。


「そうだな……他のチームもそろそろ本気をだしてくるのは、間違いないな」


「こないだの2学期中間で私たちのチームは、8339点。順位は、12位だったわ。それに比べて1位のチームの11156点。追い付けそうにないわね」


「そうだな……」


 約3000も差がある。今のままじゃ1位には、程遠い。


「で、あなたは私に最初オレと組めば1位になれると言ったわ。それは、いつ実行するつもりなの?」


「そんなこと言ったか?」


「あなたは、またそうやってとぼける。まぁ、いいわ。あなたにも考えがあると思うし……」


 近藤は、これ以上オレと話しても無駄だと感じたのか話すのをやめた。


「とりあえず、私は冬休み、できるだけ江川君と山野さんに勉強を教えるわ。巴さんと北原さんは、各自でできると思うから。あなたは、まぁ、勝手にして。勉強をしたいと思ったらしたらいいし、したくなかったらしなくてもいいから」


 近藤がオレにそう言うのは、こないだのオレの話を気にしていてくれているのだろう。


「出来る限りのことはする……ところで近藤、お前にこのチームのリーダーをやってほしい」


「リーダー? なんで私が……」


「チームにまとめ役がいないと不便なこともある。そこで一番真面目な近藤に頼みたい」


「別に構わないけどその変わり私のサポートしてくれるわよね? あなたが私に頼んだことだもの。それぐらいの覚悟はあるわよね?」


「あぁ、わかった」



──────────────



「木之本がリーダーになったけど、千佳それでよかったの?」


 同じく体育館から出た雨野と笠音、松原は、話しながら教室へ移動する。


「えぇ、構いません。木之本君は、真面目な方ですから何の心配もいりません」


「そう……」


「そう言えば、楓君。山野さんとはどうですか?」


 雨野は、隣で歩く松原に聞く。


「どうって、特になんも進展はないよ」


「そうですか」


「ねぇ、前から思ってたんだけど松原はなんで山野さんと付き合ってるの?」


 雨野と松原の会話を聞いていた笠音がふと気になったことを尋ねた。


「雨野がこうしろって……」


「楓君、ひどいですね。これは、あなたが提案したものじゃないですか」


 意味のわからない会話を聞かされる笠音は、途中から聞いていなかった。


「理由は聞くなってことか……ん? ねぇ、千佳。あそこで三条が私達を待ってるみたいだけど」


 笠音は、前からくる視線を雨野に伝える。


「なんでしょうね……」


 雨野はそう言って難しい顔をした。


「無視したらいいんじゃねぇーか?」


 松原は、そう言うと雨野は、首を横に振る。


「楓君と笠音さんは、少しここで待っててもらえますか? どうやら三条君は、私に用があるみたいなので」


 そう言って雨野は、一人で三条のもとへと行った。


────────────


「三条君、どうかしましたか?」


「待っていたぞ雨野」


 三条は、そう言ってもたれていた壁から離れる。


「嫌な予感しかしませんね」


「今回は、大丈夫だ。いい話をもってきたからな」


 今回という言葉に引っ掛かったが、今はスルーする。


「いい話とは?」


「オレのチームと雨野のチームで協力関係を結ばないか?」


「それは、急な話ですね。具体的には、何を協力するのでしょうか?」


 雨野の問いに三条は、答える。あまり乗る気はしなかったが、雨野は、協力することにした。



─────────



「嫌がらせは無くなったのか。それは、よかった」


 平坂は、隣で歩く濱野に言う。


「平坂君、心配かけてごめんね。でも、解決したから私は、もう大丈夫だよ」


「ほんとか? その嫌がらせをした小野寺がまた何をやらかすかわからないぞ」


「確かにその可能性はあるけど。そのときはそのときだよ。今は明るい自分でいたいの。私がずっと何かに怯えてたらみんなに心配かけちゃう」


「濱野、何かあったら1番初めにすることは、仲間を頼ることだ」


「うんっ、わかってるよ。心配かけないためにもまずはチームメイトみんなを頼るね」


 そう言って濱野は、笑う。平坂は、そんな濱野を見て安心した。




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