第38話 今日こうして話して楽しかった

木之本と別れた後、オレは寮へ帰ることにした。

涼しくなってきたな……。

夏もあっという間に終わった。

夏が終われば秋がきて、その後は、冬がきて、1年が終わる。

オレは、一人歩きながふとそんなことを思っていると、前から先ほど会った花咲と会った。


「あんた、さっき翔太君といた大山だっけ?」


「あぁ………。えっと、花咲だったか?」


「うん、そうだよ。大山は寮に帰るの?」


「そうだが………」


慣れない会話にオレは、小さく頷く。


「じゃあ、ちょっと手伝って。どうせ暇でしょ?」


「手伝うって何を?」


「図書館の本の整理整頓よ。クラスの友達に頼まれたの」


「パシリか?」


オレは、そう聞くと花咲は、オレを睨み付けてきた。


「そんなわけないでしょ。いいから手伝って!」


花咲は、オレの手を取り、引っ張った。


「オレはまだ手伝うって─────まぁいいか」


さっき怒らせてしまったことだし、ここは手伝おう。


─────────


夕方の6時。図書館には、まだ少し生徒が残っていた。

オレは、花咲に言われた通り返却された本を元に戻す作業をしていた。

ここの図書館、広いから大変だな。

終わる気がしない……。

手が疲れたので作業をとめていると後ろから花咲に注意を受ける。


「手をとめていいなんて言ってないわよ?」


「はいはいわかりました……」


「わかったらいいの。ところで大山は何組?」


花咲は、オレの隣で作業をしながら尋ねてきた。


「3組だ」


「そりゃ会ったことないわけね。私は、6組。

3組と6組ってあんまり関わりないから会ったことないのは当然か……。ところで大山は、彼女いるの?」


ニヤニヤしながら花咲は、オレに聞いてきた。


「こんなパッとしないオレにいると思うか?」


「パッとしないって……もしかしてさっき私が言ったこと根に持ってる?それならごめん。私、思ったことすぐに言っちゃうから」


「なら直さないとな……その癖を」


「直さないといけないことぐらいわかってる」


また怒られた。

女子の考えてることってよくわからんな。


「話戻すけど……私は、大山、モテると思うよ。理由は言わないけど……」


「そう言ってくれるのはいいが、オレは、恋愛に興味はない」


「あっそ……あっ、ここにある本で最後だから」


そう言って花咲は、後ろに置いてある20冊の本を指を差すのだった。


───────────


「はぁ~疲れた」


図書館を出てオレは、背伸びをした。


「お疲れ様、ありがとね、手伝ってくれて」


花咲は、そう言ってオレに缶コーヒーを渡してきた。


なんで缶コーヒー?

まぁここは、ありがたく受け取っておこう。


「ありがとう」


缶の蓋を開けオレは、コーヒーを飲んだ。


「ねぇ、大山。連絡先教えてよ」


「理由は?」


「そ、その……今日こうして話して楽しかったし、また話したいなぁと思って……」


「別にいいが……」


「じゃ、交換しましょ」


オレと花咲は連絡を交換した。


「ん……これで登録完了ね。じゃあ、またね」


花咲は、そう言って帰っていった。


花咲は、オレが苦手な感じの女子だか、意外と話せた気がする。

まぁ仲良くできそうにはないが……。




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