第37話 勉強会
オレは、昨日雨野から聞いた木之本翔太という生徒について調べることにした。といっても木之本のいる6組には、知り合いがいない。顔見知りと言えば、三条か加藤。けど、2人と話したことほとんどないしな。
まぁ、とりあえず6組に行くとするか。考えるのやめたオレは、6組の教室へと足を向けた。
直接、木之本と接触するのもありだがそれはそれで警戒される。いろいろ考えて教室の前で立っていると、加藤が、教室から出てきてオレのところへ来た。
「お前、この前いた奴だよな?」
「あぁ、結局よくわからない犯人探しだったよな」
「そうだな。けど、三条は、犯人がわかったみたいでその後は、どうでもよくなったみたいだ」
初対面なのによくしゃべるな……。警戒されていないということか。
「加藤、少し聞きたいことがあるんだか聞いてもいいか?」
「答えられる範囲なら。もしかしてその聞きたいことのためにここで立っていたのか?」
「そうだ。木之本っていう生徒について知りたくてな」
「オレが知ってる木之本は、クラス委員で生徒会に入ってる人で先生からの信頼度も高い奴かな」
やはりどの人に聞いても同じ答えか。
「教えてくれてありがと」
「オレのチームのことなら話せないが他チームの話ならしてやれる。また、今度ゆっくり話そうぜ、大山」
そう言って加藤は、去って行った。加藤とは、少し仲良くなれた気がするな。三条のチームメイトだから怖い奴かと思えばそうでもなかった。人を見た目で判断しすぎたな。
「木之本、これ、どこに置いたらいい?」
「そこら辺に置いといて。あとは、オレが運んでおくから」
教室からそんな会話が聞こえてくると、教室から男子生徒が1人出てきた。
「ん? 誰か待ってる? 呼ぼうか?」
その男子は、オレが立っていることに気付き話しかけてきた。
「いや、誰も待ってない。通りかかっただけだ」
「そうか……」
会話が終了し、オレは立ち去ろうとした時、呼び止められた。
「名前、聞いてもいいか?」
「大山一樹だ」
「オレは、木之本翔太だ。よろしくな」
「よろしく……」
木之本……確かにこの様子からして信頼されてもおかしくない。
「大山、もしよければ今から一緒に勉強しないか?」
「別にいいが……」
「なら、放課後ここに集合な。じゃあ、また放課後に」
──────────
「どこで勉強しようか。カフェでやるか?」
待ち合わせ場所に来た木之本はオレに尋ねた。
「木之本に任せる」
「じゃあ、カフェにしようか」
「あぁ、じゃあそこに───」
そこにしよう……そう言おうとすると見たことのない女子生徒が1人オレと木之本の間に入ってきた。
「翔太君、なにしてんの?」
「香奈、今から大山と一緒に勉強するんだよ」
「大山?……パッとしない人ね」
香奈と呼ばれた彼女は、オレのことを見るなり呟いた。
「ちょっと香奈。大山に謝れ」
木之本は、彼女に注意した。
「ご、ごめん……」
「いや、別に気にしてないから」
オレの中ではかなり傷ついたがここでそんなことを言ったら何度も謝まってきそうで面倒なことになる。
「あっ、紹介してなかったね。この子は、彼女の花咲香奈」
「彼女ってことは、2人は付き合ってるのか?」
「そうだよ。私と翔太君はラブラブだもんね?」
花咲は、オレに謎のアピールをしてきた。
「香奈も一緒に来るか?」
木之本は、花咲に聞いた。
「勉強でしょ? それならやめとく。じゃあね翔太君」
「あぁ、またな」
花咲が去って行き、オレは、彼女の背中を見つめた。
「花咲は、勉強が嫌いなのか?」
「そうみたい。同じチームだけど彼女は、1位を目指すというよりこの学校を楽しむことを優先しているようだし」
「なるほどな……」
「さて、カフェに行くか」
こうしてオレと木之本は、カフェへと向かった。
──────────
「もう5時か。大山、少し休憩しようぜ」
1時間以上近く、カフェで勉強していたオレ達は、ペンを置き、目の前にある飲み物を飲む。
「木之本、今度の選挙に出るのか?」
「よく知ってるな。誰から聞いたんだ?」
「雨野から聞いたんだ」
オレがそう言うと木之本は、なるほどなと言って納得していた。
「生徒会やクラス委員もやって大変かもしれないけどやりがいはあると思うから今回、選挙に出ようと思ったんだ」
「凄いな、オレには真似できない」
「凄いなんて……オレは、こういうことしか出来ないから。いい学校生活を送るためには、まず自分が変える人でなければならない」
いい学校生活か……。こんなこと言われたら木之本が学年代表になると噂になるのも納得がいく。
「雑談したことだし、再開するか」
こうしてオレと木之本は、勉強を再開した。
───────────
週末、オレは、約束通り図書館に集まって濱野と勉強をしていた。
「こことここが重要だね。あとは……ん? 大山君、聞いてる?」
濱野は、ぼっーとしているオレに顔を近づけてきた。
「聞いてる……」
「本当? 大山君がテストの範囲を確認しようって言ったのに……」
濱野は、ムスッとした顔で言う。
「なんかごめん。えっーと……濱野、1つ言ってもいいか?」
「何かな?」
「さっき、こことここが重要と言ったがそれだと応用が出たときに対応できない。だからここの問題は……」
オレは、そう言って濱野の近くに寄り、教科書を使って教えた。
「ってことだけどわかったか?」
オレは、確認のため濱野に聞いたが濱野は、下を向いて手で顔を仰いでいた。
「濱野、何してるんだ?」
「な、なんでもないよ。ちょっとびっくりしちゃって……」
そう言いつつ濱野は、下を向いて話す。
「驚くようなこと言ったか?」
「ううん、言ってないよ」
一体、濱野はどうしたのだろうか。オレ、なんか知らないうちに濱野に何かしたか?
「大丈夫か?」
「う、うん、もう大丈夫」
濱野は、少し顔を真っ赤にして顔を上げた。
「熱とかないよな?」
「ね、熱なんてないよ……」
また濱野の様子がおかしくなり、パニックのあまり椅子から落ちた。
「濱野、今日、大丈夫か?」
「だ、大丈夫~」
濱野は、慌てて立ち上がる。
「ごめんね、大山君。私もう帰らないと行けないから帰るね。テスト頑張ろうね!」
荷物をさっとまとめて濱野は、手を振って帰って行った。
「何があったんだ……?」
──────────
「あ~、私のバカ。せっかく大山君が教えてくれてたのに逃げ出しちゃった。急にあんな距離で来られたら私、心臓がもたないよ」
誰もいない中庭で一人、濱野は壁にもたれかかりさっきあった出来事を思い出していた。
「好きって言ってからよけいに意識しちゃってる。ダメだ、今はテストに集中しないと」
濱野は、そう自分に言い聞かせた。
「一華さん?一人で何をしているんですか?」
「うわぁ~! びっくりした。雨野さんか」
私は、急に声をかけられ驚いた。
「なにもしてないよ。雨野さんは、今、帰り?」
「はい、よければ一緒に寮まで帰りませんか?」
「うん、いいよ」
雨野さんと話してたらさっきのこと忘れられるはず。
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