第26話 雨野の過去

 話をしませんかと雨野から言われたオレは、彼女の部屋へと訪れた。


「さきほど大山君は、自分のことを話すなといいましたね。ということは、私が大山君の過去を知っていることに気付いたのですか?」


「少し前に雨野は、オレに妙なことを言っていたからな」


 図書館で雨野は、オレに関しての情報をさらっと口にした。

 オレの過去を知らない限り『フォースプロミス』なんて言葉は出てこないはずだ。


「そうですか。ですが、気付いてもらえたのならよかったです」


 嬉しそうに微笑む雨野を見てオレは、やはりそうだったのかとあることに確信を持った。


「少し昔話をしましょうか。あなたと私の過去にあった出来事を……」


こうして、雨野は、雨野とオレだけが知る過去の出来事を語りだした。



───────────



 10年前、私は、お父様の付き添いで食事会に行くことになりました。

 そこにはお父様の知り合いの有名な学校の理事長教えてくれました。

食事会のに行くと、私と同じ年くらいの男の子がいました。


「千佳、あちらは大山さんの息子の大山一樹君だ」


 隣に座るお父様は、私に大山さんの息子を紹介した。


「初めまして、雨野千佳です」


「ほら、一樹も挨拶を」


 一樹君のお父様は、隣に座る一樹君にそう言うが一樹君は、何も言わず黙っていた。

 おそらく私と一緒で緊張しているのでしょう。


「すみませんね、一樹は人と話すのが苦手でね。少し緊張しているみたいで」


 一樹君のお父様がそう言って謝る。


「謝らないでください。この場で緊張しない人は、いませんから」


 お父様は、そう言って微笑んだ。


「お父様、少し一樹君とお話ししてもよろしいでしょうか。同い歳である方が一樹君もお話ししやすいかと思うのです」


 私は、小声でお父様にそう言った。


「そうだね。大山さん、千佳が一樹君と少しお話ししたと申しているのですが……」


「いいですよ」


 一樹君のお父様は、許可をもらい、私は、一樹君の隣に座って話しかけることにした。


「初めまして、一樹君。私のことは、気軽に千佳と呼んでください」


「………」


 なかなか話してくれませんね。会話よりゲームっぽいことの方がいいでしょうか。


「一樹君、カウントゲームをしませんか? ルールは、先に50を言った方が負け。数字は、1人、3つまで言うことができます」


 私は、話しながらチラッと一樹君を見たが反応は薄いが首を縦に振っていたのでやってくれそうな気がした。


「では、私から……1、2、3」


 私は3つ数字を言う。すると、一樹君は、3つ数字を言ってくれた。そしてゲームは、進んでいくのだった。



「負けてしまいました。一樹君強いですね」


 私は、悔しそうに言うと一樹君は、初めて私に話しかけてくれた。


「千佳、4の倍数プラス1から始めたら勝てる」


「そうなんですね。知りませんでした」


 今、下の名前で呼んでくれましたね。最初より会話ができてきた気がします。


 食べ終わった後も、私は一樹君とお話して楽しい時間を過ごしました。


「一樹君は、将来の夢はありますか?」


「ない。けど、父親のやっていることをとめたい」


「それはどういう意味ですか?」


 私がそう聞くと彼は、私にすべて話してくれた。 


 2人で話す時間はあっという間で……


「千佳、帰るよ」


 お父様がそう言って先に歩き出す。

 

「あっ、はい。一樹君、今日はお話しに付き合ってくれてありがとうございます」


 そう言って私は、彼と別れた。


 もう二度と会わないとだろうと思って。



──────────



「このあと、一樹君という男の子とは、一度も会っていません。ですが、この学校で再会することが出来ました」


 過去を語った雨野は、嬉しそうにオレの方を見た。


「思い出した。急にカウントダウンゲームしてきた奴か」


「そんなことしましたね。お久しぶりです、大山一樹君。あの時と雰囲気が変わっていないようでいい意味で安心しました」


「雨野こそ変わらないな」


 オレのことをいろいろ知っているわけがやっとわかった。雨野は、過去に一度、会ったことがある。その時、彼女には自分のことを話した。だから彼女がオレのことを知っていてもおかしくはない。


「そういえば、大山君。あの時、私にこの学校に行くと話していましたね」


「そうだな。雨野は、どうしてこの学校に?」


「私は、お父様の勧めでここへ」


 笑うところではないが、雨野は小さく笑った。

 そういうことにしとけということか?


「そうか。なぁ、雨野……」


「何でしょうか?」


「オレの過去をクラスメイトやチームメイトに話したか?」


「あの時、あなたと誰にもいわないことを約束したので誰にも話していません。これからも話すつもりはありません。話してしまったら大山君の計画を邪魔することになりますから」


「それならいい……」


 雨野が嘘をついてるようにも見えないからここは、疑わないでおこう。


「こうやって、お互いに誰かわかったところだが、今まで通りの接し方でいいよな?」


「えぇ、私もそちらの方がやりやすいです。今まで通り私達は、敵対関係で。そうじゃないと私の目標は、達成出来ませんから」


 目標が何かはわからないが敵対関係のままでいれるならいいか。

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