第22話 取り乱しちゃってごめんね
「少し休憩にしましょうか」
戻ってきた雨野と近藤は、オレと武内に声をかけてきた。
「そうだな……。休憩ならオレは、少し海岸を歩いてくる」
そう言ってこの場を立ち去る。
1人になったところでオレは、紙を探している生徒の様子を観察した。
すると、濱野が一人でいるところ見かけた。
話しかけようと思い、濱野に近づくとあちらもオレに気付いたようで濱野がオレのところへやって来た。
「あっ、大山くん。いいところに来たね。ちょっと助けてくれない?」
濱野のその言い方に嫌な気がしてオレは、濱野から逃げようとした。
「えっ、ちょっと待って、なんで逃げるの?」
「嫌な気がして……」
「さっき、ヒント教えてたのは、誰だっけ?」
濱野は、ニヤニヤしながらオレを見た。
「で、何に困ってるんだ?」
逃げることを諦めたオレは、濱野に聞く。
「今ね、QRコード読み込んだら、この場所の写真を撮れって言われたの。けど、この場所どこかわからなくて」
そう言って濱野は、スマホの画面をオレに見せた。これは……さっき行ったところだな。
「洞窟だな……」
「洞窟? 何それ、そんなのあるの?」
濱野は、洞窟というワードにテンションが上がっていた。
「わりとここから近いところにある」
「私、場所わかんないし。大山君、一緒に着いてきてほしいな……あっ、もちろん。お礼はするよ」
そこまでいわれたら断りにくいな。
「わかった。一緒に行こう」
「ありがとう大山君」
こうしてオレと濱野は、洞窟へ向かうことになった。
「濱野は、一人で紙を探してるのか?」
「うん、一人でできないことは、いろんな人に助けてもらってるよ」
さすが、濱野だな。濱野は、他クラスとも交流があるためそういうことができるのだろう。
「こないだのチームの順位が5位に上がれたから
1位になるのも難しくないのかもって最近思えるようになったんだ」
「雨野に勝てる……そう思っているのか?」
「ん~雨野さんは、手強いよね。けど、私は誰にも負けないよ」
そう言った濱野からは、強い意思を感じた。
「着いたぞ」
昼前に来た洞窟へ着き、オレは立ち止まった。
「うわ~すごい。洞窟なんて初めて見たよ」
濱野は、感動しながらスマホで洞窟の写真を撮る。
「今、お礼の5点送るね」
「じゃ、戻るか」
「そうだね」
そう言ってオレと濱野は、洞窟を出た。
「残り3時間かぁ~。あと何枚か見つけておきたいな」
濱野は、そう言ってスマホを見た。今、オレと濱野しかこの場にいない。なら、あれについて聞いてみるか。
「濱野にずっと聞きたかったことがあるんだが……聞いてもいいか?」
「何? まさか告白!?」
「違う。オレと雨野でカフェに行った時のことだ」
「カフェ……あっ、大山君と初めて会った日か。それがどうしたの?」
「そのとき、濱野、鞄落としてプリントとか散らばっていただろ……そのとき、オレ、見たんだよ。2学期のテスト用紙を」
オレは、そう言ってチラッと濱野の様子を見た。すると、濱野からいつもの明るさはなくてなっていた。
「み、見ちゃったんだ……そのこと、誰かに話した?」
濱野は、オレの顔を見ずオレに尋ねた。
「誰にも言ってない。もしかしたら上級生から過去問を貰ったということかも知れないと考えたからな」
「そ、そう……。あの、大山君くん……」
「なんだ?」
オレは、濱野の言葉を待っていると濱野は、急に手をとった。
「大山君、お願いします。絶対にこのこと誰にも言わないで」
そのときの濱野は、オレの知る彼女とは違っていた。
「別に誰かに言うつもりはない。オレはただ気になったことを聞いただけだ」
濱野がどういうわけでテスト問題を持っていることを隠しているのかわからないが、相当知られたくないんだろうな。まぁ、オレは別に濱野の秘密を暴いて誰かに教えるつもりは一つもないが。
「ありがとう……ごめんね、なんか取り乱しちゃって」
濱野は、そう言ってオレから手を離した。
「じゃ、帰りは私一人で帰れるから」
さて、オレもそろそろ戻らないとな。
───────────
午後6時、宝探しゲームが終了し、生徒達は、宿泊場所へと戻っていく。
「はぁ~」
オレは、大きなため息をつき、廊下を歩いていく。今日は一日中歩き回っていたので足が痛い。
今日はゆっくり寝れそうだ。そんなことを考えていると、オレが一番会いたくない人物が前から歩いてきた。最悪だ……。オレは、下を向き歩くことにした。
「こんばんは……。理事長の挨拶を無視とは感心しないなぁ~」
その人は、そう言ってオレが通らないように足を出してきた。
「こんばんは理事長……すみません、ぼっーとしてました」
オレは、適当に嘘をつきその人、理事長に言う。
「そんな言い訳を理事長にするとは、怖いもの知らずだな。大山一樹」
「そちらこそ呼び捨ては、どうなんですか?」
理事長は、互いに顔を見合せ笑う。
「どうだね? 学校は……」
理事長は、オレに聞いた。
「正直言ってすごく嫌です」
「本当に正直だな……。少しぐらい楽しめるところはあるだろ?」
「そうですね。そこは認めます……けど、卒業後のことを思うとオレは、生徒達が可愛そうだと思います」
「そうか。まぁ、頑張れよ」
そう言って理事長は、オレの前から去って行った。
「なんなんだよ……」
オレは、我慢できず心の中の気持ちがつい口に出てしまった。
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