婚約破棄された悪役令嬢は愛されたい!!

桃麦

第1話

「ねぇ、ライアン、これからどうしたらいいと思う?」

だら〜んとソファに寝転びながらそう言った私を一瞥した後、ライアンは呟く。

「んなこと言ってもどーしよもねぇだろ…」

私は悪役令嬢。昔、まだ私が日本人だった頃に読んだ小説の悪役だったのだ。小説の物語がこちらの世界でフィナーレを告げたのは昨日。今まで10年以上婚約していた王子に私は婚約破棄され、今はフリー状態だ。

「私の頑張りで断罪は回避できたもののこれからどうすればいいのよ!」

「私たち、の頑張りだからな?そこ、忘れんな。」

ライアンは私の唯一の相談者。ちっちゃい頃からの知り合いで、ライアンだけには転生のことも小説のことも話している。今まで危機に陥ったときに何回も助けてくれた。

「これから婚約者探そうにも、悪役令嬢の私なんかをもらってくれるところはないだろうし…」

はぁ…と深くため息を吐く私をバカにするような目でライアンが見てくる。

「別に王子はリーレイのことを嫌って婚約破棄したわけじゃないんだろ?単純にリーレイ以上に好きな人が出来たってだけだ。だからそこまで気にしなくていんじゃねぇの?ていうかそもそもお前は王子のことが好きだったのかよ?」

「それ、今関係ある?」

「大ありだっつーの!」

いや絶対に関係ないでしょ、と私が突っ込むとライアンは口をモゴモゴさせる。

「いや、まぁ、関係ないっちゃないけど、個人的に気になるというか、なんというか…」

「ぜーんぜん聞こえない!はっきり喋ってよね!はぁ、誰でもいいから私をちゃんと見て、愛してくれる人、いないかなぁ…。」

「いつか現れるんじゃねーの、運命の王子様が」

テキトーにそう言ったライアンに私は頬を膨らませながら抗議する。

「その、王子に昨日フラれたんじゃないの!」

いや、それは運命の王子様とは言わないんじゃ…というライアンの言葉を無視してリーレイは呟く。

「今度のパーティーで良さそうな人に話しかけてみようかしら?」

するとライアンの顔は真っ青になり、慌てて話し始める。

「待つんだ!それじゃあ、運命の相手は見つからないぞ!遊ばれて終わるだけだ!」

うーん、ライアンがそう言うのならそうなのかなぁ。今までライアンが言ったことで当たらなかったことがないし。

「まぁ、いいや。というか、ライアンこそいまだに婚約者いないよね?大丈夫なの?」

今まで私と関わっていたせいか、ライアンは婚約者がいない。小説の中では名前すら出てこないモブ役だったのだが、こうして近くで見てみると結構なイケメンだし、正直ほかの人にあげたくないくらい、いいやつだ。そんなライアンからは浮いた噂なんて一つも聞いたことはないし、相談事もされたことがない。というか、相談は全部私がライアンにしている。

え、待って、もしかしてだけどライアンに婚約者できないのって私のせい?私みたいな悪役面の人が近くにいたせいでみんな話しかけづらかったとか?

サーッと血の気が引く私を気遣うようにライアンがこちらに寄ってくる。

私は急いでソファから立ち上がるとライアンに近づいて告げる。

「ライアン、もう私と関わるのやめたほうがいいかもしれない。」

「はぁ⁉︎何言ってんだ、リーレイ。」

私は急いでライアンが私から離れた方がいい理由を説明する。

「つまり、自分のせいで婚約者候補が俺に近づいてこないっていいたいのか?」

「そのとーり!私といるとデメリットしかないわよ!」

ライアンはめんどくさそうに髪をかき上げながら反論する。

「つまり、リーレイは俺に話しかける根性がない女子と婚約してほしいって言うのか?」

「え?いや、別にそんなわけじゃ」

「じゃあ、別にいいじゃねぇか。お前のお陰で根性がない女と結婚せずに済むんだからな。それに俺、本当に好きな相手には自分からアタックするし、外堀から埋めてくから。」

いつになく真剣なライアンの目にドキンとすると同時にライアンの口から出た「好きな相手」という言葉にズキズキと胸が痛む。

私の胸、病気…かしら?

そんな心を隠すように出来るだけいつも通りに振る舞う。

「まぁ!ライアンに好かれた女子は大変ね〜、気づいたら逃げられなくなってそうだし」

「あぁ、もちろんそのつもりだぜ。あ、そろそろ俺帰る。」

「あ、うん、ありがとう、今日も話聞いてくれて」

ライアンはそれに応えるように片手をあげると部屋から出ていった。


部屋からでたライアンはポツリと呟く。

「俺に好かれた女子は大変…ね。あの、様子じゃ絶対に気付いてないよなぁ…。」

リーレイは、まだ気づいていない。

王子に婚約破棄されるように仕向けたのはライアンだと言うことを。

そして、ライアンに婚約者ができないのはリーレイにライアンがメロメロなのを知っている周りの者たちが遠慮しているからだということを。

2人が紆余曲折ありながらも想いが通じ合うのはそう遠くない未来である。


                  end

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