馳せる想いとお狐さま

@michibata

馳せる想いと現実

この村には、金色の光と温かな光に包まれている場所がある。

 もうすぐここも、もうすぐこの陽だまりも、

  土地の再開発により失われようとしている。

 手を広げ、どんなに渇望しても過ぎ去った日々が掌から溢れては零れ落ち

無常さと切なさに押しつぶされそうになった。

 現実は無常であり非情。僕に出来ることは何もない。

 思い出の地、そこでの日々さへもう戻らない。

 さよならの言葉を言うまでの時間

 別れの悲しさ、それさえも許されない。

 けど、いまならあの日々達に少し手が届く気がした。

 その先は暗く果てしない

 全てを諦め、全てを捨てようとしていた。

だが、全てを諦めきれず、全てを拾おうとして、

零れ落ちていくものたちを必死にすくおうとする。

その度に傷ついては立ち直ってを繰り返していた。

けれどそれも4月から始まろうとしている地域再開発計画によって、

無情にも打ちひしがれる。

どうにかしたいけどできない。

諦めたくないけど、諦めなければいけない現状。

目の前にある現実に目を背けて、全てを忘れようと思っていた帰り道。

ふと近くにある古ぼけた神社。

此処もご神木が切り倒されてしまって、すっかり寂れてしまったんだよなぁ。

陰鬱な気持ちのまま鳥居をくぐり抜けた。

 小さかったころ寄り道していた風景は

すっかり変わり果ててしまってたけれど、何とも言えない温かさだけは変わりなかった。

近くにあるベンチに腰掛け黄昏ながらやるせなさ

を覚えていると、夕日に照らされた両頬の筋が光った。

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