第36話 終戦
同盟国の経済封鎖が奏功し、軍事大国スパルタノス帝国は、窮地に追い込まれた。
世襲となった軍事政権に反対する臣下も多かった。また、各地で蜂起や内乱が起きたのも、帝国の衰退に拍車をかけた。
そんな中、ロタリンギア軍勝利の報が、大陸を駆け巡った。
第二王子アルフレッド殿下麾下の前衛軍が、僅かな手勢で、3倍もの規模のスパルタノス侵略軍を打ち破ったのだ。
ついにスパルタノスは、停戦を受け容れた。連合軍の前に、帝国は負けを認め、スパルタノス皇帝は無条件で退位した。
シューヴェンで敵の要塞を包囲していた父の連隊も、無事にモランシーへ帰ってきた。彼らの包囲は、思っていたより牧歌的なものだった。塹壕は掘ったが砲撃には至らず、堀りたての横穴の中で、夜な夜な敵の将校と酒を酌み交わしていたという。
……「スパルタノスの司令官はまだ若く、なかなかの好男子だった。フェーリアの夫に、と思ってな」
しかし彼は、光の速さで軍服の首元から婚約者の細密画を取り出し、父に見せたという。
……「略奪婚でもよかったのだが」
ところがフェーリアの名前が出た途端、イケメン将校は要塞の中に逃げ帰ってしまった。どうやら、別動隊の兵士らから、いろいろ聞かされていたらしい。
ともあれ、このイケメン司令官の尽力のおかげで、スパルタノス軍の捕虜となっていたシューヴェン辺境伯夫妻は、いち早く解放された。財産を馬車に積んで大陸中を逃げ回っていたイヲは祖国に帰還し、シェーヴェンの再興に尽力している。
そしてわたしは、ジュリアンの戦死の知らせを受け取った。
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