スタートライン

いとかくし

ずるい

私は不細工だ。


 足は短くて太いし、おなか周りは贅肉を付けて、そのくせ胸は無い。顔は小さいけれど、顎が出ている。それを馬鹿にされたっ経験ばかりだ。


 でも来週。


 私は整形をする。

 美しくなる。


 傷つけてきた奴らに復讐してやるんだ。


 小学校の頃。わたしを見て死神だと笑った男子。顎という単語が出たらこちらを向くクラスメイト。私の醜さを陰で笑った女ども。そして気にしている事もしらずにずけずけと、「ぶさいく」「あごだしてわらうな」そう言って顔を拳で痛めつけた母親へ。


 復讐の時なんだ。


 私の状況を理解する友は言った。


「ずる。整形とか」


 わからなかった。


 友人は整った顔をしていた。彼女なりに悩みはあるらしいが、メイクした顔面をSNSに投稿できるほどの顔への自身を持っていた。私には何がずるいと言わせるのかわからなかった。小学生から容姿に悩み、見た目をあきらめ、興味のないふりをしてきた自分。スマホに自分の写真なんて一枚も無い。写真に写るのが嫌いだった。この醜さを形に残すのが嫌だったから。頑張って運動しても、足は太いまま。骨なんてどうしようもないんだから仕方ないじゃん。どうして友人はそんなことを言ったのか不思議で仕方ない。


「私も整形した~い」


 整ってるくせに何を言っているんだ。整形はずるなのか。私は悪なのか。どうしてどうしてどうして。みんなの方がずるいじゃないか。うん十万、うん百万掛けなくても笑われない顔をしている。けなされない顔をもって生まれてきたくせに。美容に理解のある親がいて、服の趣味を否定しない存在がいて。メイクをしても笑わない親がいて、罰ゲームで告白されない人生を送っているんだろう?白い肌を魅せる服を着てもかわいいで許されるんだろ?私が着たら似合わないから仕方ないけど。汚いとか、気持ち悪いとか言われないんだろ?短いスカートも履けない。ウエストをマークしたレースのワンピースだって許されない。かわいいアイシャドウのパレットを見て、こんなブスが使ってもwwとか思われたくなくて、横目に眺めているだけだった。今でもコスメを買うとき、店員に馬鹿にされてるんじゃないかって胸が閉まるのに。


 お金を稼ぐのだって楽じゃない。こんな顔じゃ水商売もろくにできない。こつこつ貯めて。悩んで、貯めて。何がずるいだ。努力の末の決断を。何を軽々しく言う。


 私の顔は。お前らとは違う。


 普通を0とするならば、あなたの顔は20位。


 私は-70で生まれてきた。今やっと0にしようとしているのに。何がずるいだよ。私の90mも前で走り出した癖に、こつこつ努力して手に入れたブーストで距離を縮めようとしたらずるいだなんて。


 お前らの方がずるい。

 私を笑って、傷つけたことも知らないで。

 努力の一つも知らないで。

 一人泣いた夜も無くて。

 悩んでもどうしようもできない無力を理解しないで。


 スタートラインはそろってないんだから。

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