第51話 ♦のクイーン

「Dウェイバーのダイヤのクイーン様です!」


「「Dウェイバー??」」

「♦のクイーン?」


 改めて話を聞いていると知らない単語が出てきました。僕とアキラはDウェイバーそのものを、マコトは♦のクイーンと呼ばれる人を知らないようです。


「説明しましょう。Dウェイバーとは、とある動画配信サービスを行っている企業が新たに立ち上げたダンジョン専門の動画配信サービスがあり、そこで活躍されている方々の総称となります。ダンジョン配信という性質上、暴力表現があるのでR指定となっています。しかし、ダンジョンを広く知ってもらいたいと考える人たちは多く、R指定表現を排除した切り抜き動画が一般サイトに上がる事もあります」


 なるほど、それを見れば他の冒険者がどのように探索をしているかを見ることができるのですね。時間のある時にでも見て参考にさせてもらいましょう。


「そして、♦のクイーン様は高レベルの冒険者で構成されるパーティ『トランプ海賊団』を率いる、超人気魔法使い系Dウェイバーなのです!」


 高レベルのベテラン冒険者も参加しているのですか。


「♦のクイーン様はおっしゃられました。魔法は火力!魔法一発で戦局を覆すことができる!」


 魔法はここぞというときに切る切り札として温存するべきという事でしょうか。


「また、こうもおっしゃられました。雑魚に全火力ブッぱで瞬殺楽しー!」


「駄目じゃないですか!モンスター全部に全力投球してたら魔力がなくなって、いざという時に魔法が使えないってなったらどうするんですか!?」


 なかなか過激な教えのようです。


「いえ、そこはさすがに考えてますよ。さっきもモンスターを倒すギリギリくらいしか魔力は使っていません。全力ブッぱはもっとレベルが上がって魔力に余裕ができてからです」


 確かに、先ほどの魔法も直撃していれば3体まとめて倒せるくらいの威力はありそうでした。ただ、発動と、着弾までが大分時間がかかっていたのでモンスターに避けられて倒すまでには至らなかったですが。


 浅井さんが後方からの高火力魔法攻撃をメインで使うとなると、うーん、もしかして僕達と相性が悪いのでは?僕達の基本戦術は魔法の牽制からの速攻での制圧ですからね。


 いや、逆に考えるんだ。今までの戦術とは違う視点から考える人材が入ってきたともいえるのではないだろうか。


 そうなると浅井さんから見た僕達はどういうものか、また、浅井さんが攻撃に参加するとしたらどのようになるのかをマコトやアキラと相談しなくては。


 そう思い彼女達の意見を聞こうと顔を向けると何やらマコトと浅井さんの口論が白熱していました。


「パイセンは分かってない!乱撃剣士のNO勤マッソーが凄いんだって!」


「剣士系の配信はただの精神的ブラクラ生産機じゃないですか!」


「魔法使い系は視点が遠すぎてモンスター対応が何してるか全然わかんない!」


「視点が離れてるから、戦闘の時のポジショニングの参考になるんじゃないですか!」


「はい、そこまでです」


 どうやらお互いの好きなDウェイバーの話をしているうちにヒートアップしてしまったようです。えーと、推し活と言うんでしたか。


「ほら、アキラがどうしたらいいのか分からなくて固まっているじゃないですか」


「「ごめんなさい」」


「いい。もう少し続くようだったら、拳で止めるしかなかった」


 アキラの本気か冗談か分かりづらい返事に二人の顔色が青くなりました。


「とりあえず、今後の事について話したいと思います」


「「はい」」


 マコトと浅井さんは反省したのか神妙に頷きます。


「まずは、浅井さんから。僕達とのパーティを体験してもらいましたが、どうでしたか?」


「正直に言うと、私が知っている冒険者と違うところが多くて戸惑っています」


 そうですね、僕達が普通だと思って行動していたことで、浅井さんは何度も驚かれていました。


「もしかしたら、私が足を引っ張るかもしれないという不安もあります。ですが、風間さんが繋いでくれたこの縁を無駄にしたくない!このパーティで私にしか出来ないことを見つけたい!」


「このパーティということは男である僕もいますが大丈夫ですか?」


「男性のいないパーティを探すのが大変なのは分かっています。それに馬場さんは最初からずっと紳士的に振る舞ってくれていました。講習の時の青メッシュのクズ野郎と違って」


「もしかしたら、今は羊のかわを被っているだけの狼かもしれませんよ」


 少し意地悪でそう言ってみると、マコトとアキラに左右を挟まれました。


「「狼になって」」


 しまったぁ、余計なことを言ったー。


「狼だったとしても護衛が頼もしいので、大丈夫ですね」


 そんなやり取りを見て浅井さんはクスリと笑いながら言いました。


「それでマコトとアキラは浅井さんの加入についてどうですか?」


「「誤魔化した」」


「それでマコトとアキラは浅井さんの加入についてどうですか?」


「「はぁ」」


「二人とも大変そうだね、私に出来ることがあれば協力しますよ」


「わかってくれますか、パイセン!」


「浅井はいい子」


 マコトとアキラも浅井さんの加入はOKのようです。外堀がどんどん埋められているような気がします…

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