第39話 リベンジ

 30分程で鬼はすぐに見つかりました。


 道中での話し合いで考えられることは、一つ、足が弱点である。一つ、意識外からの攻撃は無効化できない。現状ではこの二つしかない。なので、最初は僕とアキラで対峙し、弱点と思われる足を重点的に狙う。マコトには戦場を大きく迂回してもらい、気配を殺して背後から奇襲を行う。これで駄目なら観察しながら戦って、臨機応変に対応するのみです。


 壊れたバックラーの代わりに、ドロップ品のゴブリンの小盾を装備し、再戦です。


 僕の突進に合わせて、アキラが【雷魔法】で先制攻撃します。魔法が効かないことはわかっていますが、目くらまし程度には使えます。


 我武者羅に振り回す腕を受け流し、注意を上に向けさせるため上半身へメイスを打ち込みます。


 鬼の攻撃を受け流し、メイスを打ち込むを4、5回繰り返し、鬼が苛立ち動きが単調になったところで、アキラが体勢を出来る限り低くしつつ、大胆に踏み込み、ズドムッと震脚をを響かせ鬼の太腿に槍を一突き、素早く槍を捻りつつ引き抜き脛を目掛けて薙ぎ払い、薙ぎ払いの勢いを利用し体を捻り爪先へ一突きするが最後は避けられてしまった。


 鬼へのダメージは………残念ながらなさそうです。足は弱点ではない?しかし、最後の攻撃は避けていた。爪先が弱点?箪笥を六棹くらい用意して欲しいですね。一度仕切り直しをとアイコンタクト。


 少し距離をおき作戦タイムをと思ったのですが、距離を空けた瞬間、プリン1号達を吹き飛ばした衝撃波がきました。アキラに一言、爪先とだけ伝えて回避します。


 左右に別れて回避したため、アキラとは少し距離が空いてしまいました。その隙を逃さず鬼は【雷魔法】を使い、強力な攻撃を繰り出すアキラの方が厄介だとばかりに突進します。


 鬼の攻撃に割り込むため駆けるが間に合わず、アキラは鬼の張り手によって吹き飛ばされた……


 鬼の追撃を阻止するため、駆ける勢いのまま体をぶつける。勢いのついた体当たりに鬼はバランスを崩し動きが止まり、その隙にメイスを爪先へ打ち下ろすがダメージはない。


 アキラの安否は僕以外が狙われた足は弱点じゃないチームを分けるべきではなかった何故僕以外は狙われないと思ったならば弱点はどこだ…………


 思考の渦に捕らわれ、体の動きが止まりそうになったところへ鬼の攻撃が迫る……


 バリッ


 鬼の顔に放たれた、見慣れた【雷魔法】の閃光に気付くと後ろに大きく飛び鬼の攻撃をかわす。


 アキラの方を見ると、半ばで折れた槍を片手に立ち上がっていた。どうやら槍で張り手の威力を殺していたようだ。


 気持ちを切り替えろ。離れていれば、また衝撃波が来る。


 接近戦に持ち込むため鬼に向かって突進する。鬼の猛攻をかわし、いなし、掻い潜る。懐に入り込んで足にメイスを打ち込む。鬼のバランスを崩すために膝にへと。


 鬼がバランスを崩したところへ、アキラは折れた槍の穂先を腰に差し、重い震脚を響かせ、雷を纏わせた拳を叩き込む。


 これもダメージなし。アイコンタクトし、再び距離をとるため後ろに下がる。


 下がった僕達に対して鬼は衝撃波を放つ。


 かかったな…


 衝撃波を放った鬼の背中に後ろからマコトはショートソードを2本突き立てた。


 鬼は体を大きく振るわせると、マコトはショートソードから手を離し背中から飛び降りた。


 これもダメージなし。こちらの打てる手がどんどん失くなっていく。


 マコトは失ったショートソードの代わりを【水魔法】で作り、アキラは雷を纏わせた拳で攻撃をつづける。


 隙をみて背中に突き立ったままのショートソードにアキラの【雷魔法】を当て体の内部から攻撃。


 ダメージなし。


 鬼の髪を切り落としてから攻撃。


 ダメージなし。


 残された槍の穂先で足の甲を地面に縫い止めるように刺し貫く。


 ヴオァオァオァオァ


 初めてのダメージに鬼が咆哮をあげる。


 足へは何度か攻撃を加えているがダメージは今回だけ。赤メッシュ君の時は、折れた刀のきっさきが足の縁を掠め地面に突き立った。本体は地面の中?


 鬼の周辺の地面をメイスで打ち付けるが何も起こらない。


 地面じゃないなら一体何を刺した?影?影なら乱戦中に何度も踏みつけている。


「マコト!アキラ!少し試します、何かあったらフォローお願いします!」


 マコトとアキラが頷く。


 盾を外し、メイスを放り投げ、鬼を挑発するように手招きします。


 鬼の動きはもう十分観察しました。


 挑発されたことに怒った鬼は大振りに腕を振り下ろした。


 ズドーーン

 ヴオァオァオァオァオァオァ


 背中から地面に打ち付けられた鬼が再び咆哮をあげる。


 謎が解けてしまえば、確かにこれは僕向きですね。


 運良く、今週は近所のじいさんに会うことができた。師匠とか先生とか呼ぶのは照れ臭いけど、それでも僕の合気道はあの人仕込みだ。あの人を投げる事に比べたら、この鬼を投げる事なんて朝飯前だ。


 よろよろと起き上がる鬼に向かってもう一度手招きをする。


 人間に負けるのが認められないのか、さっきよりも大きく腕を振りかぶる。


 ズガンッ、ゴギンッ

 ズズーーーン


 頭から地面に叩き付けられた鬼は光の粒子となって消えてゆく。


 後に残ったのは四角い形をした肩掛けカバンと指輪が2つ、それとスキルオーブでした。


「モンドさーーーん!!」


 見守ってくれていたマコトとアキラが抱き着いてきました。


「結局、弱点ってなんだったんですか?」


 マコトが尋ねてきました。アキラも気になるのかじっとこちらを見つめてきます。


「いたって単純でした。本体と影が繋がっていたようで、どちらか片方だけが攻撃を受けてもなんともないが、本体と影が両方同時に攻撃されるとダメージを受けるというものでした。それが分かればあとは簡単、投げて地面に叩き付ければ本体も影も同時に攻撃できます」


「ゲームなんかで良くありそうなやつですね」


「でも分からなければ、無敵の鬼を永遠に相手して、体力がなくなり全滅です。アキラのおかげです。アキラがあそこで鬼の足の甲を槍で貫いてくれたので気付けました」


「ううん、モンドが爪先って言ったから」


 あの乱戦の中でそんな事を言う暇なんてなかったですが……あぁ、アキラが吹き飛ばされる前の事ですね。


「それより、鬼の攻撃を受けたところは大丈夫ですか?」


「槍が有ったから大丈夫。それに回復魔法がある」


「えっ、回復魔法使えたんですか?」


「失礼」


「えっ、でも、【雷魔法】ですよね」


 それ以上は笑みを浮かべるだけで教えては貰えませんでした。


「さあ、ドロップ品拾いましょう」

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