第51話 不幸中の不幸

 囚われのある日、淳史の元に運のない麻薬の運び屋が運び込まれてきた。


 中南米メキテマラ共和国はアメリカの横に位置し、そこに拠点を置く麻薬組織クロアナカルテルは、大量のアンフェタミンを密造し、全世界へ密輸している。安くて強力。学生にスマートドラッグとして人気だが、粗悪品のため、心臓発作で毎日数人の死者が出ている。


 運び込まれた男性は、カルテルが製造した麻薬を密輸するため、子袋に入れた麻薬を指先ほどの小さな小包にして大量に飲み込むことで税関をすり抜け、後で排泄して取り出そうとしていた。しかし、小包を飲み込んでいる途中で運悪く、胃の中で袋が破けて大量の麻薬を体内へ吸収していた。それにより痙攣し、意識がもうろうとして死ぬのも時間の問題のような状態だ。


 すぐさま淳史はタッチすると、胃の中にあった小包は綺麗になくなり、体内に取り込まれた薬物による反応もなくなり、助かった。


 麻薬を製造した組織が悪いのか。それを欲しがる使用者が悪いのか。安易にお金を稼ごうとする本人が悪いのか。他の雇用を生まない政府が悪いのか。教育を受けさせなかった親が悪いのか。彼は今助かったところで、おそらく同じことを繰り返すだろう。タッチをしても喜ばしく感じない淳史であった。

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