雲上タッチ
団田図
プロローグ
手をかざすと病が治る不思議な力を手にした男「淳史」27歳。この行為を『タッチ』と呼ぶ。この力は後天的な病気やケガを治せるが、先天性疾患は治せず、自分自身も治せず、欠損部も戻せない。その能力を知った姉の「真千子」32歳は公益財団法人イカロスを設立し、淳史が力の使い方を間違えないよう管理することとなった。
財団では一日一人しか治せないと公称しているが、淳史が全力を出せば一日三人までは治すことができる。
防犯上、施術者である淳史の顔はメディアなどへの公表はされていない上、財団にも所属させていないため、素顔と名前を知る者はごくわずかである。
タッチの申し込みは、財団ホームページからできる。タッチに当選すると患者の調査・審査がなされ、そこが通ると状況に応じて患者を呼んだり、現地へ赴きタッチをする。タッチの前は必ず淳史の容姿や、話した内容を公表しないといった誓約書へのサインをお願いしている。タッチされたことは公表してもよいが、お勧めしていない。
月曜~木曜は抽選で選ばれた患者を無料で治している。現代医学では治せない重篤な患者しか受け付けておらず、現在は日本国内患者のみで仮運用中である。金曜は特別枠として寄付額の多い順に治す「オークション形式」。世界中の富豪を相手にして、財団の主な収入源となっている。土曜は外交枠として財団の運営を有利に進めるため、政治家や官僚、またはそれらの親族などを治している。選定は真千子の采配による。日曜は休みで、淳史は動物園へ通い、人知れず動物を治しては、元気になった動物を見て癒されている。
財団設立当初は、世間からインチキだと罵られたが、3年がたった今は真千子の世間を渡るバランス感覚が冴え、ある程度受け入れられてきていたのであった。
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