次はどこに行こうか2
「ふぅーん?
まあ偉大なご先祖様だからおかしくはない話ね。
熱心にご先祖様を祀っている人だっていないわけじゃないもの」
「俺がお前を助け出せたのも神様のお導きってやつかもよ?」
「……そうね、なら少しは神様ってやつにも感謝しておくとするわ」
テユノも神様という存在がいるとは思っているがそれを信仰しているかはまた別問題。
竜人族全体的にそんな感じの宗教的な雰囲気の薄い種族であって何をしてくれるかも分からない神様を信仰するつもりがないのだ。
存在そのものを疑ってはいないがいてもいなくても変わりがないという認識なのである。
名高いご先祖様が神様になった。
しかも神様を信仰しなさそうなリュードがそう言うならテユノも多少は信じてみようという気にはなる。
「でも布教するなんてどうやるのよ?」
別に布教することに文句はないし、リュードなら無理に引き込むようなことはしない。
だが問題もある。
竜人族はその数が少ない。
リュードたちがいた村が竜人族にとっての最大の村と言っても過言ではないほどで他の竜人族は世界に散らばってしまっている。
布教云々の前に相手の竜人族がいないのである。
さらに竜人族を見つけることを困難にする理由がもう1つある。
それは竜人族の普段の姿にある。
竜人族の普段の姿は真人族とあまり変わらない見た目をしてある。
そのために竜人族と町ですれ違うことになっても相手が竜人族であったことに気づくのが難しいのだ。
逆に竜人族の側からリュードを見た時にリュードが先祖返りの竜人族だと知らなきゃ気づけもしないだろう。
「そんなにガチガチにやらなくてもいいんだ。
たまたま竜人族を見つけたらちょっと神様がいるよぐらいでやるつもりだ」
ただしリュードは以前シュバルリュイードに教えられていくつか竜人族の集落の居場所を知っている。
竜人族を、見つけられる可能性は他の人よりはるかに高いと言える。
上手くいけばの話だけど布教ついでに村に来るようにお誘いもしてみようと思っていた。
「んーと、じゃあ次はどこに行くの?」
「いい質問だ、ルフォン」
とりあえず向かうべきは獣人族の国。
それは真魔大戦の時魔人族側だった土地にあって今現在真人族の領土にいるリュードたちからは遠い。
魔人族の土地の方に向かって大横断するつもりだけどその道中観光地や美味いもの、あるいは寄っていけそうな竜人族の集落を探していこうと思っていた。
「ひとまず話を色々聞いてみたら隣の国で今しか見られないものがあるらしいんだ。
そこに向かってみよう」
情操教育というべきか、美しいもの見せることはコユキにとっても良い。
血生臭い戦いばかり繰り広げずたまには自然の美を鑑賞するのも旅の醍醐味である。
「まあたまにはいいかもね!」
「あとその国は広い穀倉地帯が広がっていて良質な小麦が取れるんだ。
つまりパンが美味いらしい」
「パン!」
「そう、パンだよ」
コユキは美味いパンが好き。
柔らかくて甘味のあるものが好きで町中で売っている備蓄用ではないパンをよくねだっていたりもする。
ご飯の時もパンを焚き火で炙って食べたりと若干のこだわりも見せている。
旅をする上では腐りにくく日持ちするパンがどうしても主流になるのでコユキにとってはそのパンは不満だった。
「小麦か……私は麺が食べたいな」
「そういったのも良いよな。
乾燥させた麺なんかあれば日持ちするし買っていこう」
観光よりも食い気。
パンのことを聞いてみんな俄然行く気が出てきた。
ついでにその国には竜人族もいるらしい。
大目標は魔人族の土地にある獣人族の国。
そして小目標は隣の国でパンを食うことに決まったのであった。
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