真っ赤な鳥にさらわれて6
「ちなみにタイムリミットはいつだ?」
「そんなに長くはない……大体100年ぐらいかな?
すぐでしょ?」
「……いや、十分だ」
神様の時もそうだったけれどやはり時間の感覚というものはその存在によって感じ方が違う。
リュードとハッタシュでは時間の感じ方に大きな差があった。
明日にでも爆発するかもしれないような口ぶりで話していたハッタシュであったがその実リュードからすればまだまだ時間があった。
なんなら問題が完全に忘れ去られてからまたここを訪れても十分すぎる時間がある。
「騒ぎが収まってからでも大丈夫そうだな」
「えっ!?
そうなの?」
ハッタシュは本気で分かっていなかった。
「騒ぎが収まるのを待つのもそうだし、俺の仲間と相談する時間も欲しい。
あとはやる時には俺の仲間も一緒にやらせてほしいんだけど」
「それはもちろん!
だけど君のお仲間さんたちはとっても美人さんだったからきんちょーしちゃうね!」
「知らんがな」
ーーーーー
「ここからは向こうに真っ直ぐいくと町があるよ。
ありがとねリュード。
じゃあ待ってるから。
相談してダメでも爆発する前に連絡ちょうだいね」
ハッタシュとの話し合いを終えてリュードは再びハッタシュに持たれてヒュルヒルから移動した。
すぐにでも移動したかったのにハッタシュのせいで移動するまでに時間がかかってしまった。
話し終えた時点で日が暮れていたので次の日に移動すると言うことになっていたけれどなんせ時間の感覚が違う。
リュードという協力者も得て安心したハッタシュは深く眠りこけてしまった。
なんも次の日どころか数日眠り通してしまった。
リュードが声をかけても起きることがなくて結局起きるまで待つしかなかったのである。
起きて平謝りするハッタシュにようやく運んでもらい、ヒュルヒルを抜けて広い草原に下ろしてもらった。
町までいくとハッタシュは目立ちすぎるので騒ぎにならないようなところまで来てお別れとなった。
ハッタシュが遠ざかっていくのを見てようやく自由になれた気がした。
上から見ていた感じでは見えてはいたが下に下ろしてもらってみると意外と町は遠そうだった。
「……疲れたな」
何はともあれ襲われることはなかったしヒュルヒルは火の神物の原因でああなったのではないと分かった。
確かめたいことは確かめられた。
「みんな心配してんだろうな」
ハッタシュが女性が苦手なために誘拐されることになった。
そのせいでみんなに心配をかけることになってしまった。
全部ハッタシュが悪いんだけど心配をかけてしまうことになった結果は変わらない。
ヒュルヒルを抜けるのにも時間がかかってしまった。
歩いていると段々と日が落ちてきた。
このペースなら町に着く頃には夜になっているかもしれない。
走れば多少日が残るうちにたどり着けるかもしれない。
ても運ばれている最中もハッタシュの華麗なる話に付き合わされて気疲れしていて走る気にもならない。
ただ1人で歩く外がこんなにも心細いものだなんて。
魔物が現れたって負ける気なんて全くないけれど漠然とした不安が胸の中に渦巻く。
きっとルフォンたちはこの先の町にいるだろうと思う。
なのに孤独を感じて、孤独とはこんなに寂しいものなのだと思い知る。
誰かが常に周りにいてくれることの温かさ、ありがたさがこうなって初めて身に染みる。
前の世界にいたのならネットで人と繋がれるし、写真でも見ればいいのだけどこの世界には思い出以外に相手を思う方法もない。
「……それだけみんなが大きな存在ってことだな」
リュードの日常に占めるみんなの割合が大きいことを自覚する。
「最初は1人で旅しようとしてたのにな」
ルフォンにはこんな旅は無理だろう。
辛い思いはしてほしくない。
そんな風に思って1人で旅に出るつもりであった。
なのに今はルフォンは隣にいてくれないとならない存在になっている。
ラストやコユキ、それにテユノもいてくれたら心強いかな。
「まっ、仲間っていいよな」
ただ、もう寂しくない。
「リューちゃーん!」
リュードの目には見えていた。
落ちゆき、赤くなり始めた光に照らされながら手を振りリュードの方にかけてくるルフォンの姿が。
それだけじゃない。
ラストとコユキとテユノも。
そのはるか後方には必死に走るロセアの姿もあった。
ルフォンはコユキを背負い、コユキはみんなに神聖力の強化支援をかけている。
「おーい!」
リュードは大きく手を振りかえす。
さっきまで精神的に疲れて走るのも面倒だったけど急に元気が出てきた。
「パパ!」
「おっと!」
リュードに飛びついたのはコユキ。
ルフォンの勢いを利用し、肩を蹴って大きく飛び出した。
リュードは手を広げてコユキをキャッチする。
「コユキずるーい!」
まさかの身体能力に驚いたルフォンだったがすぐに負けじとリュードに飛びつく。
「えいっ!」
「わ、私だって!」
さらにラスト、テユノも勢いに任せてリュードに飛びかかった。
「ちょ、おいっ!」
何人にも飛び掛かられて無事に済むはずがない。
リュードはバランスを崩して地面に倒れる。
「リューちゃん大丈夫だった?」
「今が大丈夫じゃない……」
ルフォンはリュードの体を心配してペタペタと触る。
「はははっ、みんなに心配かけるからだよ?」
「ごめんよ」
ラストはリュードに顔を押し付けて再会を喜ぶ。
「い、勢いで飛びついちゃったけど……大丈夫?」
「ああ、生きてるって感じがするよ」
自分のしたことに顔を赤くしているテユノ。
「パパ、おかえり!」
「ただいま」
コユキはリュードの首に手を回して首筋のニオイをスンスンと嗅いでいる。
幸せな重み。
怒る気にはならなくて、なんだかおかしくてリュードは笑い出す。
そんなリュードの様子の草原の真ん中で重なり合う状況がおかしくてみんなも笑う。
「俺は無事だ。
心配かけてごめんな」
大変なことも多いけどこうして仲間と旅ができるのはいいものである。
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