真っ赤な森を抜けていけ2
さらに付け加えると武器もいい。
実はテユノが持っている槍はドワーフの首長の1人であり、女性ドワーフであったサッテが作ったものであった。
首長を務めるドワーフたちは全員が超がつく一流の職人でもあった。
そんなサッテ作の槍はリュードが出発する時に選別として貰ったものだった。
他のドワーフ製の槍も高品質であるがやはりサッテが作った槍は頭1つ飛び抜けていた。
たまたまそれがテユノと相性が良かった。
テユノに実力があるので武器は良ければ良いほど高いシナジー効果を発揮する。
しかも真っ白で美しい槍はテユノの好みにもドンピシャだった。
やる気も高くてテユノの実力を最大限に引き出してくれている。
「もーげんかい!」
ヒュルヒルの奥に進んでいく。
出来るなら暑さの弱い縁を進んでいきたいが木の密集の都合や地面の草も燃えているので好きに進むこともできないのだ。
進んでいくにつれてさらに温度が上がる。
コユキも見たことないような顔をして溶けてしまいそうだし、そろそろ冷却効果も切れそうになっていた。
「そうだな、そろそろ食べておこう。
効果も1つ強めのものにしよう」
上を見上げると葉が炎で真っ赤になっていて明るく、時間を忘れがちになる。
なんやかんやと昼時になっていた。
「ほら、ちゃんと水分補給はしとけよ」
「ありがとう。
くぅ〜!
美味しい!」
「冷たい!」
こういう時に貪欲に色々試してみてよかったと思う。
リュードは冷凍保存用のマジックボックスの袋から水筒を取り出してみんなに渡す。
冷凍保存の袋に入れていたから凍りかけになっているジュースが中に入っていてルフォンとコユキがゴクゴクとそれを飲む。
こまめな水分補給も大事である。
そしてお昼はルフォンが作っておいてくれていた体を冷やす食材を使ったお弁当である。
お弁当そのものはそんなに冷たくもないのに食べていると体が冷えてくる不思議なお弁当を食べる。
見慣れない食材も多いのにルフォンはそれを見事に調理してみせて絶品である。
「わぁ……すごいわね」
暑さで苦しかったのにスーッと楽になる。
周りの温度が高いの冷却効果としては分かりにくいがかなり苦しさがなくなる。
この温度でこうなら通常時には寒いぐらいかもしれない。
「パーパ!」
「どうした、コユキ?」
コユキがリュードに抱きついた。
胸に顔を埋めて大きく息を吸う。
リュード成分の補充。
暑くて引っ付けなかったけど辛くて頑張ってるからちょっと元気が欲しかった。
今は体を冷やす食材のおかげで楽になったのでリュード成分を補充している。
十分にリュード成分を堪能したコユキは鼻息荒く離れる。
満足げに冷たいジュースを飲んで、なんかいい顔している。
「……ある意味純粋な子だね」
夜コユキが眠っている間にコユキのことを説明されたテユノが軽く笑いながらそんなコユキのことを見ている。
リュードの実子ではないと分かって安心したが話に聞いても不思議なことであることに変わりはない。
経緯もそうだし見た目よりも賢くて能力も高い。
ルフォンやラストをママと慕っているけれどリュードのことはパパと呼んで1番に慕っている。
本当にリュードが大好きなのが見ていて伝わってくる。
子供や親としてというよりも……と考えたところでテユノはやめた。
これ以上ライバルが増えてたまるか。
ニャロやエミナのことなんて知らないテユノは単純にルフォンやラストをライバルだと思っている。
コユキまでライバルになるなんてズルい相手であるとテユノは考えることを止めておく。
「それじゃあ行こう。
もうちょっと開けた場所でもあったらそこで野営することにしようか」
テユノが氷属性の魔法で氷を作ってくれてそれをタオルで巻いて体を冷やしたり、冷却効果のおかげで限界だったルフォンもいくぶんか回復した。
先を急ぎたいが炎を避けていかなきゃいけないし魔物も意外と出てくる。
そんなに進行速度も上がらない。
見たところ魔物はこの過酷な環境に適応して姿形を進化させているようでベースは普通の森に出てくる魔物だった。
ヒュルヒルには普通の森よりも満ちている魔力が多くて魔物もその影響を受けて魔力が多めである。
それでも能力的に多少強いというぐらいで特別な魔物はいない。
けれどある特徴がある。
こんな環境にいるせいか魔物そのものも耐火性が備わっている。
リュードたちには問題は一切ないのだけど一般的に火属性の魔法を扱う冒険者は多いのでそうした人たちにとっては大変だろう。
あとは一回に出てくる魔物の数も多い。
魔力が濃いためなのか知らないけど数もいるのだ。
その代わり魔物から取れる魔石の質も良く、耐火性の高い魔物の素材が取れるので冒険者が入ってくることも頷けた。
何回か魔物との戦いを繰り返し着実に進んでいく。
「うーん……」
少し木が減って周りが開けたところに来た。
リュードは空を見上げる。
時間を確認するのによく空を見て確かめなきゃわからない。
空の向こうのほうがヒュルヒルのせいでなく赤くなっていて夕方であることが確認できた。
「ここらで野営しようか」
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