夜の訪れない森ヒュルヒル3

 渋い顔をするラストの言葉を借りるなら可愛くない色をしている。

 デザインもスタイリッシュとは程遠く野暮ったい。


 燃えにくい魔物の素材に耐火性を高める薬剤を塗ってさらに燃えにくくしている。

 色味的に可愛くないのはその薬剤のせいで服のデザインが可愛くないのは服の素材が加工しにくいものであるからなのである。


 本気でヒュルヒルを踏破して回るつもりならガチガチの装備が必要だがリュードたちは通り抜けて行くだけのつもりだ。

 深いところに入らなきゃ本気の装備一式も必要ない。


 なので頭を覆えるフードのついたローブと手を保護する手袋と足を保護するブーツを購入した。

 ローブはやや分厚く、手袋やブーツも重たく頑丈。


 火に強いだけじゃなく普通の服よりも防御力がありそうだ。

 ヒュルヒルに入るのは冒険者のみだ。


 子供は入らない。

 そのために子供用サイズがなくてコユキに合うものがなかった。


 だからちょっとダボダボになってしまったけれどそこはしょうがない。


「大きい!」


 ただまあコユキ本人はぶかぶかとしたローブや靴を楽しんでいるので良しとする。

 いざという時はコユキをローブで包み込むようにして抱えて行くつもりだ。


 あとはテントやリュックなどのいくつか出しっぱなしにしておくことがあって燃えては困るものも買った。

 店員のアドバイスも聞きながら最低限準備をしておく。


 続いて向かったのは食料を扱うお店。

 人数も増えたし食料も多めにストックしておく必要があるけれどそれだけが理由ではない。


「オススメはこちらだよ。


 ちょっと値は張るけど効果はあるよ」


 ヒュルヒルに近いジャンディゴには他にはあまりおいていない食べ物を置いている。

 それは体を冷やす食べ物。


 魔法があるこの世界の食べ物は本当に体温を下げて冷却する効果を持っているものが存在する。

 耐火性のある装備は燃えないというだけであり、環境としてはかなり暑くて厳しい。


 そしてヒュルヒルを抜けて隣国まで行くのには1日ではとても足りない。

 1日ぐらいなら水分補給でもして抜けられるけれど数日ヒュルヒルの中にいるのであれば体を冷やすことが必要となってくる。


 体を冷やして保護しないと脱水症状なり熱中症になってしまう。

 こうした食べ物を使ってより効果を高めた体を冷やす薬なんかもあるので後で買いにはいくつもり。


 でもどうせなら美味しく健康に体を保護した方がいい。

 体を冷やす効果のある食べ物が集まっていて様々な種類のものがある。


 それぞれの食材で体を冷やす効果や持続時間が違っていて、当然味なんかも違う。

 ハーブのようなものもあれば甘めの果物、中には魔物の肉なんてものもあった。


 食材選びはルフォンの領域なのでリュードは手を出さない。

 珍しい食材も多くてルフォンは興奮しながら色々と見て周り、店員を質問攻めにしている。


 コユキにねだられてリュードがこっそり甘いものを買ったりしてルフォンに見つかって怒られるのもワンセット。

 結局ルフォンも許して買ってくれるんだけどね。


「おおっ、すごいな」


 最終的にはほとんどの食材を購入してしまったルフォン。

 物は試しとそのまんま食べられる体を冷やす効果のある果物を食べてみる。


 あっさりとした甘みがあって清涼感のある味。

 食べているとお腹の中がヒンヤリとしてきて冷たさが全身に広がる。


 そんなに冷却効果としては高くない方だが涼しくていい感じだ。

 暑い季節になったら非常に欲しいものである。


 もっと効果の高いものもあるので効果が期待できる。

 一応体を冷やす効果のある薬も購入した。


 食べ物よりも安定的で効果は高いらしいのでいざという時はこちらも使う。

 出来る準備はしたのでこの日は休むことにして次の日からリュードたちは燃える不思議な森であるヒュルヒルに向かうことにしたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る