共に生きる4

 なのでハチの頬にはルフォンの肉球の跡がついていたのだ。


「いい、命だけはお助けを!」


 事の次第を全てリュードに話されてしまった。

 結果的にルフォンに敗北したハチはルフォンにも逆らえなくなってただ全てバラされるのを黙って聞いているしかなかった。


 リュードの足にしがみついて命乞いするハチ。

 なんとか笑顔で乗り切ろうとしているハチを見て、こんな魔物のせいでドワガルが大騒ぎになっていたのかと思うと情けなくなってくる思いがする。


「そうだな、お前の処遇はルフォンに任せることにするよ」


 ルフォンも勝ったならルフォンにも従わなきゃいけない。

 ここまできて殺す気はリュードにないけどルフォンがそうしたいなら止めるようなつもりもなかった。


「どうするかはルフォン次第だけどもう2度とこんなことはするなよ?」


 実際のところ酒で深く寝ている間のことなので実感がなく、怒りもそんなにわかない。

 殺そうとしたっていうなら話は別だけど性的に襲われかけたというのは何ともことを荒げるには難しいラインの話だ。


 ルフォンの方が怒ってくれているのでそれも怒りにくい理由である。


「どうする?」


 リュードはルフォンに視線を向ける。

 寝起きで殺生はしたくないけどやり過ぎたことをしたのはハチだ。


「もう2度としないって約束するなら許してあげる」


 ちょっとだけむくれて言うルフォン。

 殺すつもりならハチはとっくに死んでいるだろうし、手加減して肉球の跡で済ませたなら殺さないと分かってはいた。


「ほほ、本当ですか!


 もちろん、勝手に子種を頂くことは2度と致しません!」


「これでこの話は終わりだ。


 ……優しいなルフォンは」


 リュードはむくれた顔をするルフォンの頭を優しく撫でてやる。


「守ってくれたんだろ?


 ありがとう」


 守られたのは貞操。

 そんな大切に守っておくもんじゃないかもしれないけど寝ている間に奪われるのはリュードも勘弁したい。


 人生はゆるく生きたいけどそこらへんをゆるくいくつもりもない。


「えへへっ……えいっ、じゃあこれぐらいはいいかな?」


 ルフォンがリュードの腕に抱きつく。

 自分も子種は欲しいとは流石に言えないけど密着するぐらいなら許されるだろう。


「あんたはダメ!」


「ふええ〜」


 こっそりとルフォンが抱きついたのと逆の腕に手を伸ばしていたハチ。

 酒が入って吐いてしまったとはいえ、そのまま勝負を続けていても勝てなかったことはハチにも分かる。


 負けを認められなければ死ぬまで戦うことになる。

 だからハチは負けを認めざるを得ない。


 伸ばした手をさっと戻して、ハチは羨ましそうにルフォンを見ていた。

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