孤独、ではない6
体の中にいるのか、体の神聖力の広がりが遅く、背中に残った最後の魔力と神聖力が押し合う。
「ふぅ……ふん!」
一呼吸おいてダリルが力を込めるようにグッと神聖力を押し流す。
すると黒い魔力が押されて消えて、最後の最後に残ったお尻のところから黒い丸い塊が飛び出してきた。
黒い丸い塊はフラフラと空中を漂って逃げようとするがブレアの張った結界に阻まれて外に出ることができない。
「極悪非道な悪魔よ。
己のやったこと、悔い改めるといい!」
ダリルの持つメイスが神聖力で強い光を放つ。
高く掲げたメイスを振り下ろし、ダリルは黒い丸い塊を殴りつけた。
パンッと音がして黒い丸い塊が弾け飛び、デルゼウズの消えゆく悲鳴が響き渡った。
「終わった……のか?」
「いや、まだ終わっていない!」
ダリルが上を見上げる。
天井の大穴から見える空にはまだ低級悪魔のビクエが飛んでいる。
親玉は倒したけれど安心するにはまだ早いと言わざるを得なかった。
事態の完全な収拾がついて初めて終わったと言える。
「ブレアはここを頼む。
私は残りの悪魔を片付けてこよう」
「……んじゃ俺たちの戦いは終わったってことでいいのかな」
気が抜けて地面に倒れ込むリュード。
最後にデルゼウズに殴られた顔が痛い。
いや、全身が痛い。
まだ肩の治癒も完全ではないし、デルゼウズの攻撃を散々食らった体はぼろぼろだった。
「リューちゃん」
「リュード」
「2人とも来てくれたんだな」
「例え空の上でも、地面の下でも私はリューちゃんを探すよ」
「火の中だろうと水の中だろうとリュードがいるならどこにだっていく」
2人は地面に大の字になるリュードの腕を枕に寝転んだ。
「会いたかったよ、リューちゃん」
「また会えて嬉しいよ、リュード」
「そうだな……俺も嬉しいよ。
抱きしめでもしたいところだけど体が動かなくてな……今は感謝の言葉だけにさせてくれ」
まだ空にはビクエが見えるが魔法が飛び、撃ち落とされているのが見える。
そう時間もかからずに空の掃除も終わるだろう。
久々に見た空、心地よい風。
信頼できる仲間の顔が見れてこんなに安心するものだったとは。
町中では聖職者たちが協力して悪魔を倒し、兵士たちが市民などの誘導を行っていた。
人と悪魔の戦い。
過去に何度も引き起こされた悲劇の中で最も悲劇の小さい悪魔との戦いが終わったのであった。
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