売られるリュード2

「それでは始めましょう!


 1番はこの彼です!」


 リュードとは逆側の端の男性が背中を押されて前に出る。

 見て分かるような簡単な見た目の特徴を説明して、オークションが始まった。


 少しずつ男の値段が上がっていく。


 人の値段としては安すぎるぐらいの価格。

 そこでコールは止まって男は落札された。


 次々に男たちが商品として売られていく。

 途中トーイも誰かに落札された。


「前に出ろ!」


 別に優しく言えばいいのに棒で小突いてリュードを前に押し出す。

 渋々リュードが前に出て、視線が再びリュードに集中する。


「最後はこちら、獣人族の男性です!


 えー……何の獣人かは分かりませんが体つきは他の人と比べてもお分かりになりますようにかなりがっしりとしております。

 その上顔も相当良い……うーん多少生意気そうな目をしていますがそれもまた良いのではないでしょうか!


 それではスタートです!」


 こんなにはっきりと獣人族として扱われるのも商品として扱われるのも初めてだ。

 強い不快感に見舞われながら段々とコールされるリュードの値段が上がっていく。


「白熱していますね!」


 値段をつけられるという行為に複雑な思いを抱える。

 リュードの値段が上がるにつれて1人、また1人と脱落していく。


 残ったのは2人。

 大きくは上がらないが競り合って少しずつまだ値が上がる。


 一際派手な蝶のような仮面をつけた女性と赤い地味目な仮面をつけた女性の競り合い。


「もし、そこの蝶の方」


 地味な女性が派手な女性に声をかける。


「何ですか、赤い仮面のお方?」


「以前の約束、忘れたわけではありませんよね?」


「う……それは…………」


「どうですか、あの方は私にお譲りいただけませんか?」


「……分かりました」


「11番の方が下りられましたので7番の方がご落札となります!」


 どうやら地味な女性がリュードの落札者ということになるらしい。


「ふん、買ってくれる人がいてよかったな。


 こっちに来るんだ!」


 一々扱いが雑。

 抵抗してもいないのに棒で背中を突かれて移動をする。


 劇場の出演者の控え室だった部屋。

 入るとすでに地味な女性が待っていた。


 部屋には何とトーイもいた。

 何の運命なのかトーイも同じ人に落札されたみたいだ。


 地味な女性がお金の入った袋を人攫いに渡して、代わりにカギのようなものを受け取った。


「1つ言っておくわ。


 これはあなたの首についている首輪のカギよ。


 これがなきゃあなたたちは一生魔法が使えないまま。

 だから私には逆らわないこと。


 分かったかしら?」


 あの広いステージ上で聞いていたらよく分からなかったけれどこうして間近で聞いてみると思っていたよりも声が若く感じる。

 リュードは大人しくうなずいておく。


 まだ行動を起こすには早すぎるとそう思った。


 あのカギがあれば首輪が外せる。

 そうすれば魔法も使えるし逃げ出すことができる。


「また会いましたね、リュードさん……」


 売られてしまった。

 その事実にトーイはガックリと肩を落として項垂れていた。


「……久しぶりだな」


 牢屋ぶりだからそんなに久しぶりでもない。


 必要なことはたくさんある。

 まずは自分の置かれた状況の把握が必要だ。


「ルフォンたちは無事だろうか……」


 自分の今後も心配だがリュードは残されたルフォンとラストたちのことも心配だった。

 リュードが意識を失う前に2人ももう気を失っていた。


 人攫いがルフォンたちをどうしたのか分からないが、一緒にいないのなら放っておかれているはず。

 荷物盗まれたりしたらかなり困ったことになっているだろうし、気を失っている間に魔物などに襲われたらひとたまりもない。


 とりあえず自分の命はある。

 生きている以上は諦めなければどうとでもなる。


 ルフォンとラストが無事であることを願うばかりであった。

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