祖父譲りの正義感4

 何もしなくても普段から強烈な臭いを放っている魔物避け。

 火をつけて臭いをより拡散させると広い範囲で魔物が逃げ出す代物。


 魔物が逃げ出す臭いと銘打っているけれど普通に人でも裸足で逃げ出したくなる臭いがしている。

 ただただ臭い。


 チリチリと優しく燃える臭い玉で洋館が燃えないか心配だった。

 今のところ燃え出していない。


 1個使えば結構な範囲が数日大丈夫になるぐらいなものをいくつも洋館の中に投げ込んだ。

 あっという間に臭い玉の強烈な臭いが洋館の中に充満して、たまらず男たちは家の中から飛び出してきたのだ。


「行くぞ」


 顔に布を巻いてリュードたちが出てきた男たちに襲いかかる。


 顔に布を巻いたのは何も顔を隠すためだけではない。

 少しでも臭いを防ぎたい、そんな考えの方が強かった。


 特に臭いに敏感なルフォンはリュードがポーション作りなどの時になんかに使うゴーグルまで付けている。


 まずは洋館に向かって左側から飛び出してきた男たちを相手取る。

 半泣きで前もよく見えていない男たちは武器すら持っていない者もいる。


「な、なんだ!」


 先に武器を持った者から倒し、瞬く間に男たちはリュードたちに倒されてしまった。

 この騒ぎなのだ、多少叫ばれたところで他の連中は気づかない。


 これで7人を倒した。


 次は洋館の後ろに回り込む。

 後ろも同様の状態で2階から飛び降りたのか足をやってしまっている者もいた。


「おい、敵襲だ!」


 気づいた時にはもう遅い。

 腰を見たが敵襲だと気づいた男は武器を身に付けていなかった。


 涙目で咳き込んでいたら武器を持っていても対応することは出来なかっただろう。

 さらに10人を片付けて、今度は後ろ側から右側へと回っていく。


「誰だ!」


 左と後ろを片付けていれば多少時間も経つ。

 呼吸を整えて落ち着いてきた男たちに右側へと回り込んだ瞬間にバレてしまった。


 しかし武器を持っているのは3人だけ。


「オラァ!」


 男が斧を振り下ろす。

 リュードがそれをギリギリまで引き付けて回避すると男の腕を切り落とす。


 命をかけた戦いの時に相手に慈悲をかけるなら苦しまず逝かせてやることだ。

 叫び声をあげる暇もなく返す剣で男を倒す。


 ルフォンも1人を片付け、アリアセンも奴隷商の下っ端ごとき簡単に倒していた。


 武器を持たない2人は逃げ出してしまった。


「さて、最後だ」


 およそ半分をこの騒動に乗じて倒すことが出来た。

 もっと減らしたいところだったのだが一旦玄関に集まってしまった以上前側から出てくる人が多いのは仕方がない。


「死ねぇ!」


 角を一番最初に曲がってきたリュードに待ち伏せしていた男が剣を振り下ろす。


「バレバレなんだよ!」


 角を曲がる前から影が見えていた。

 剣を防御してリュードは男に切り返す。


「お前ら一体何者だ!」


 悪臭ばらまかれた挙句、仲間が大勢やられた青筋を立てて中でも偉そうな男が剣をリュードに向けた。


 顔に布を巻いているし怪しさ満点。

 回りくどいやり方に怒りの頂点。


「私はヘランド王国第3騎士団副団長アリアセン・マクフェウスだ!


 大人しく降伏しろ、悪人どもめ!」


 バカ正直にアリアセンが名乗る。

 別に悪くないのだけれどリュードたちは目立ちたくないので名乗らないでほしかったところではある。


「騎士団だと!?


 クソっ……だから村ごと襲うのはやめとけって言ったのに……


 しかし他に騎士を連れちゃいないところを見ると訳ありみたいだな!

 お前ら国に知られる前にやっちまうぞ!」


 各々武器を構えてリュードたちに襲いかかってくる。

 けれども武器を持っているのはその場にいる半数だけ。


 若そうな男女3人なら簡単に倒せると思っていた男たちだったのだがあっという間にやらてしまって、武器を持たない男たちは呆然としていた。


 お飾りなどと言っていたアリアセンもいい動きをしている。

 盾を上手く使い、堅実に相手を倒している。


 ガイデンの戦い方の片鱗を感じる。


 後は偉そうな男と武器を持たない10人にも満たない男たち。

 武器を持っていても勝てなかったのに武器を持っていない男たちが素手でかかっていっても勝てるわけがない。


 命を捨てて戦うことなんてしない。

 男たちはあっさりと降参した。


 臭いで追い出すこととくつろいでいて武器を持っていなかった奴も多かったことが功を奏した。

 戦える人数が思っていたよりも少なくて楽な戦いになった。


 死ぬほど臭いけど死にはしない。

 地下で臭いに苦しんでいた誘拐されていた人たちを助け出してた。


 この洋館は臭いが染み付いてしばらく使うことが出来ないだろう。


 洋館横に停めてあった荷馬車があったのでそれに誘拐された人たちを乗せて移動させることにした。

 捕まえた奴隷商の男たちも拘束して連れていく。


 人数が多かったので歩きの人も出たけれどしょうがない。


 想像以上の大所帯になってしまった。


 リュードたちの無事を喜びながら何をしているんだという表情をエミナがしていた。

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