第4話 「彼女」との話1

日付をまたいで再び駅へと来た。

今日はあのぼんやりと浮いたまま動かない人は居ないらしく、駅の中まで散歩感覚で見てみることにした。


この旅人機能を使うことで普段はまじまじと見ない他人の顔を見ていくのはなんだか少し新鮮だった。


それに終電の慌ただしさや駅の業務の為に動く人を間近で見ることはなんだか貴重な体験だと感じる。


とはいっても、忙しく働いている人たちを見続けているともういいかなという感じになってきたので、関係者以外は入れない構内を探索することにした。


「!」


例の彼女がいた。

しかも相変わらず浮いているし、口が半開きでちょっと怖い。


……目が合ってしまった。


「こんばんは……」


とりあえず挨拶をする。

多分彼女も旅人なんだし、情報交換でも出来たらいいな。


「……」


無言。

もしかしたら言葉が通じないのか。

そう思い始めたところ。


「こんばんは」

「まさか誰かと会うとは思いませんでした」


「何かご用でしょうか」


僕も会うとは思っていなかったことを伝える。


「そうですか」

「では、以後お見知りおきを」


少し会話をしてから離れる。

それにしても言葉が通じて良かった。

外国の人とかでボディランゲージしか使えなかったら困るしな。


あ、名前を聞き忘れた。

まあまたの機会があればでいいだろうか。


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