真夜中の旅人<ミッドナイト・トラベラー>

@gameglass

第1話 「僕」の話

[真夜中ミッドナイト]、そういう名前のアプリがある。


真夜中の街中を歩けるという名目で配信されて、少しして配信停止になったアプリだ。


歩けるといっても、写真を組み合わせて作られた某ビューソフトで街中の風景を見るようなもので特に新鮮さも新しさも無かった。


ただ、一点だけ他と違う要素があった。

名前にある通りにすべてが夜中、それも真夜中の写真で構成されているところだ。


最初は面白がって遊んだり眺めていた人もそれなりにいたけど、段々と消えていった。


僕もなんとなく遊んでいた内の一人で、配信停止してからもアプリに接続出来ているから今でもたまに開いている。


「アップデートのお知らせ……?」


更新するにしても遅すぎる気がするし、配信しなくなっても更新されるとは思っていなかったから驚いてしまった。


……更新内容は、旅人トラベラー機能の追加のみ。

これが何かは詳細が無かったけど、ちょっと楽しみだ。


次の日の夜、帰宅してアップデートを済ませる。

お知らせには新機能は真夜中でしか使えないとある。

具体的な時間がさっぱりわからず、ネットで検索してしまった。


真夜中まよなかはだいたい0時前後の30分でおおよそ23:30から00:30


だいたいは深夜0時前後らしい。

詳しくは調べていないけど、間違っていればその時調べ直せばいい。


色々とやることを済ませて寝床ねどこでスマホを操作する。


……時間はだいたい0時前だ。


僕は真夜中ミッドナイトを起動して旅人トラベラー機能をオンにした。


次の瞬間、僕は幽体離脱でもしたように半透明で宙に浮いていた。


……とりあえず自分の体に触ろうとしたらすり抜けてしまった。


それから少しして。

……ほんのちょっと取り乱してしまったけど、真夜中しか有効じゃないとしたら。


時計は今0時15分。

僕は壁をすり抜けて近所を旅することにした。


誰かに見られないかと思ったけど、そもそもここら辺に深夜に出歩く人が全然居なかった。


僕の最初の旅は何もなく、浮いていただけで終わった。

というのも、意識がふっと消えた気がしたらちゃんと体に戻っていたからだ。


結局、僕はこの体験を誰かに話すことはなかった。信じてもらえないだろうし、ネタにしてもオチすらないのだから。


だけど、この日から僕の日課が一つ増えたことは確かだ。

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