金色の妖かし
翔鵜
プロローグ 眠りについた夜
いつものように23時に横になる。
「じゃ、12年後にまた」
今宵は厄介な病魔を葬るべく、少々深い眠りにつく。
「ねぇ考え直さない? 母さん古希になっちゃうわ」
目覚める日時は選択可能だった。不治の病と向き合ううち、次世代に憧れを抱くようになった俺は、親不孝者な未来日を設定した。
「大丈夫。ノーアが母さんはずっと元気だって」
この装置の制御塔である人工知能は、12年後も母が現役の医学博士であると予測した。最近、美容整形してすっかりシミの消滅した彼女は、還暦を過ぎても美しく年老いていることだろう。
『コールドスリープを稼働します。問題ありませんか?』
人工知能のオートマチックボイスが最終確認に入った。カプセルの内部スピーカーから、ブラームスの子守唄が聴こえてくる。
「問題ない。ノーア、母さんを宜しくな」
『承知しました』
俺は一縷の望みに身を委ねて、暗闇に落ちた。
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