WAVE
@KiBno
脳波無くても思考は読める
AM8:00 起床、毎朝のコーヒーは欠かせない、自分で豆を挽き90℃の湯を一杯分用意して、カップの中に魅惑の液体が埋まっていくのと、脳が覚醒して意識で埋まっていくのがわかる。
スマホとタブレットの充電を確認、スタイラスペンを忘れずに筆箱に入れたら、それらを乱雑に鞄に入れ、玄関で靴を履き、傘立てから箒を取り出し、外に出る。
昨晩は風が強かったのだろうか、玄関先にどこから飛んできたのか桜の花弁が落ちていた。
このまま春を享受していてもいいのだが、右手の時計は8:32分を示す。退屈な授業に遅れるのはまだしも、新入生のオリエンテーションに遅れるのはまずいのでとりあえず箒に跨がる。
家から大学までは思ったよりも早かった、というのも下見の時に飛んだ時は25メートルだった箒の免許も、春休みを利用して50メートルまで上げておいたのだ。この時間帯に50を飛んでいるのは大学生くらいだからか、空が空いていた。この分なら家で掃除でもしていればよかった。
「それでは新入生オリエンテーションを開始いたします。25年入学生を担当します、斎藤です。これからどうぞよろしくお願いします。」
30代前半くらいの男性の挨拶から始まったオリエンテーションは至って普通で、合格時にもらった冊子に書いてあったことを読み上げているだけだった。こんなことなら本当に掃除をしておけば良かった。
「こんなことなら本当に掃除をしておけば良かった。」
思っていたことが隣から聞こえた。聞こえたということは自分で喋っていないということだ。思わず音の発生源を見てしまうと、自分が“大学”にいることを自覚させてくれるような、カーキのジャケットにデニムのパンツを穿いた丸メガネが似合う女性が暇そうにこちらを見ていた。
「頭にアルミホイルを巻いた方がいいみたいだ。」
不意に見つめ合う形になってしまったからか、訳のわからないことを口走ってしまったが、
「そういう顔をしていただけだよ、似非科学に縋る必要はない」と笑いながら返してくれた。
幸か不幸か思考が似ているらしい。
「この後暇?せっかくだし仲良くなりましょう。」
WAVE @KiBno
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。WAVEの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます