第61話 ゲンゴ襲来 後 その目が見ていたもの
「ザワザワ・・」「ざわ・・」
突如あらわれた魔法の結界によって視界が塞がれた試合会場はざわついていた
「なんだあ 見えなくなったぞお!」
「あの子がちょうどすげえ迫力だったのに」
「見ろ 法典の来賓席の方も全体が黒く覆われているぞ」
「どうなってるんだ・・?」
・・・・・
一方の観客席のネロたち
「見えなくなった・・!」
「リズ・・? アスラもどうなっちゃったんだろう・・!」
「アスラちゃん・・」
心配をするネロやマギハちゃん
「なんでしょう これは・・守りの保護結界魔法・・?
誤作動、でしょうか・・?
しかしこれは認識阻害の性質を持つ魔法でもあるような・・」
騒がしくなる会場を注視していたアーノルド先輩が声を荒げる
ステージ上では 突如発生した事態に調査をしたり保護魔法を解除をしようと
試みている審判団の姿が見える
「・・・・」
「ふむ・・たしかに認識の阻害は含まれているようだ」
ことの成り行きを静かに見ているシュバルツ先生
「(だが・・これははるかな別物・・音や物理の干渉をも抑えた
風を司る一族の持つ特殊な秘蔵結界・・
この規模の術を連携を待たずに即座に発動可能とするのはその一族の中でも
限られた特別な血統を持つ存在に限られる・・あれはおそらく・・)」
「まあ 私にできることはあまりないな
今は対策の警備の先生方も多い そのうちになんとかなるだろう」
「そ、そうですか・・」
「(まあ ならないがね
上位格の魔法師であっても個人ではすぐにはどうこうできるものではない)」
「(あそこか・・)」
シュバルツ先生がわずかに目を細め赤く光らせる
その視線の先は試合会場の一般観客席エリアの奥の方に向かっている
「(うまく姿も術も隠しているが あれはクロージュ先生・・
他にも待機している者がいる
というより・・動き出した不可解な魔力の波動が多い
この騒ぎで伏していた存在がいよいよ動き出した、か・・)」
(・・・)
「( 星誕祭で行われる武闘大会の原点・・
その以前の名は「勇志の儀」と呼ばれる神聖な祀り事だった
それはかつて還らずの地の白き丘の元に集い
腕に付けた白爪の蝶の羽の鱗粉の爪痕を星を宿す聖痕に見立てて
勇者に足りえる勇志を持つ人間を若者から選び出すための儀と云われてきた・・
だが・・
その廃れた古い風習にはかつてもう一つ隠された意味があった・・
それは この地で生まれた若者たちに
「
密かに法典を含め「
さて どうなることか)」
・・・・・
「
「
「ガギャアアアア!!!」
リズの拳とゲンゴの異形の拳同士が激突する
そのすさまじいエネルギー同士の爆発に 激しく衝撃波が発生する
「(こいつ・・なんて破壊力だ・・!! だが、いける・・!
この力ならお前に届くぞ!!)」
(ググ・・!)
ゲンゴが拳に込めた風で渦を巻く雷の力を
さらにリズに向かってドリルのように強く拳で押し込む
その拳をあふれる邪悪な力で迎え撃つリズ
「・・!」
「(この力・・!!私のイヴの
「(しかも2つの腕に凝縮した力を1つに融合して強化しているわ・・!
このままでは押し切られてしまう・・!)」
「(だけど・・
残念だけどゲンゴ あなたでは届かないわ!!)」
ぶつかりながら
戦う意思に呼応して膨らんでいくリズの右腕の邪悪な力
「ズギャアアアアン!!!」
「うぐう・・!!」
「くっ・・!」
さらに高まった力の衝撃が加わり お互いの体が激しく弾かれる
・・・・
弾かれたリズの右腕
「(押し返すまではいかなかった・・! 変化したあのゲンゴの腕・・
これがゲンゴの特別な魔法の力・・?!)」
「ゴオオオオオ!!」
(・・!いやこれってやっぱり・・
「オリジン」・・だわ
この強力なエネルギー波動・・、そしてこの挙動・・!
ぶつかったときの力の反応がオリジンそのもの
オリジンの高密度の力を使用した技同士がぶつかったときの波動オーラだわ
今までの投げの体術とはかけ離れた力・・!
持っていたんだわ ゲンゴは
限りなくオリジンに近い力を
でも
そんな技・・オリジンには存在してなかったはず・・?
どうしてオリジンの力が・・)」
「(ふう・・)」
「(だけど・・今はそんなことどうだっていい
私ね、ずっとオリジンしたいなあって思ってたの)」
(感じたの 私の拳がゲンゴの拳に出会って応じた瞬間
私の中にある何かが弾けだしたんだって)
(( 戦える ))
力が体の底から引き出されて湧き上がってくる感覚
リズの脳から体に伝わるイメージが鮮明になり 体がとても自由に感じる
たなびいたリズの髪の隙間からユラユラと燃えるように淡い瞳が光る
「(やるからには・・)」
「徹底的にいくわよ・・!」
「
「
ぶつかり合ったところの衝撃がおさまらないうちに
続けざまにリズは解放された力で一気に攻撃をたたみかける
「!」
「(あのめちゃくちゃな力を連続で・・だと!?)」
「ぐっ・・!」
「・・
「バギャン!!」
即時の対応ができずに
片腕の力のみでためた雷塵掌で半端に撃ち抜いて相殺する
衝撃で後ろに大きくはじかれながらゲンゴは力を纏った腕を使って
もろに衝撃を食らわないように軌道をそらしながら
ガードをかけたものの
(( ズオ!! ))
「(これは・・最初に来た
「メギャアアアン!!」
(バギイイイイ!!)
「うっぐああ・・!」
ほぼ同時の2発目にリズから放たれた、
遠距離にまで集中して放たれる
ゲンゴは結界の上から貫通してダメージを負う
その力は身をよじったゲンゴの体や
背中の黒い翼をかすめながら容赦なく襲い、
貫かれたゲンゴの黒い翼の羽が周りに散っていく
「ズゴゴゴゴゴ・・!」
まるでゲンゴの体から貫通しているように真っすぐに
(・・・!)
「(あの異常に変化した腕を使ってのガード・・とっさにそらしていたけど
連続ガードと被弾で体勢が崩れたゲンゴに向かって
リズは方向キーの力で加速して距離を詰めて さらに容赦ない追撃をする
「ふっ!!」
「ビシイ!」
スピードのある拳でゲンゴにワンツーとコンボを展開して繋げる
「(そこからさらに コマンド強回し蹴り・・!)」
リズが周囲の風を巻き込んで足を振り上げた瞬間
「っ・・まだだ!」
「
(グワ・・!!)
気合で割り込むようにしてゲンゴの拳が入ってくる
「!」
(あのダメージなら押せると思ったけど
強キックコマンドの溜めはやはり隙が大きかったわ・・!)
「バリバリイイイイイ!!」
ゲンゴの腕が振りぬかれる
(だけど・・!)
「
「ギュイイイイ・・!」
対抗してリズも技を放ち
発動タイミングが遅くなったがゲンゴの雷塵掌を迎え撃つ
「バゴオオオオオン!!」
「っ・・・!」
発動タイミングが遅くなった分
強烈なゲンゴの雷塵掌の衝撃を流せずに
「ズザアアアアア!!」
リズは立って受けた姿勢で吹き飛ばされて 衝撃で地面の砂煙が巻き上げられる
「 」
その間にゲンゴは空に飛び上がっていて
「(ブワア・・)」
まるで暗殺者のように砂煙に紛れて
上空から急降下して背後から掴むような体勢に入っていた
「 」
本当は精練されていて音もなくゲンゴは接近してきたのだろう
だけど今は
噴き出した血によって羽の根元が濡れてバランスがおかしくなっていて
それでもゲンゴは音は見事に消していた
が、その流れる血が地面に
「(ポタ・・ポタ、ポタ)」
わずかに数滴落ちる音が
戦いの感覚が鋭くなったリズには聞こえていた
ピチョン・・
(血が・・でてるわよゲンゴ)
「(・・ゲンゴ その手は今日始めに見たわ・・)」
ゲンゴ、でも私は容赦しないわ あなたのことを
(あっ・・)
「(わかる・・使える)」
・・・・
リズは思い返していた
リズが特訓でダンジョンに通ううちに
Pコマンド以外のオリジンのコマンドの感覚を何個か習得できていて
習得したものの中でそこからコンボ攻撃を繋げば
オリジンの強力な固有の技を使えるようになるのではないかと
そう思った
(試してみよう・・!)
リズはそれを試そうとしてみたことがあった
だが 結果は・・・「使えなかった」
(なんで・・・?)
オリジンの技を発動させるコンボ自体は知っているから分かる
だけどそれだけでは発動できなかったのだ
あの世界が浮かんでこなかった
脳の中に浮かんだ銀河の星の川に流れて あのイヴがいた空間
そこに行けなくてオリジンのコンボが
浮かんでこなくて技の入力ができなかったのだ
・・
それが最後に浮かんできたのはいつだったか
というよりその時で最初で最後だった
それは・・
リズが外の世界ではじめて山賊に襲われた時にメーリス山地の森で出会った、
その時は誤解だったけど
当時は悪魔に間違えられたほどの化け物であり謎の敵であった、
オジキと呼ばれていた風魔一族の大天狗の玄天斎風魔大楽
当時のリズにしてみれば圧倒的な存在だった
(なんでオジキのときは意識にあの空間が浮かんできて流れたの・・?)
たしかオジキに「試してやる」って言われたから
ぶつかってよくわからないけど試してたらなぜか試せてたんだ
あの時は失敗したけど・・
あのときオジキが上位の魔法といわれる祝福の魔法を使っていたから・・?
オジキの生物としての格が高かったから・・?
いや私の腕って魔物にも反応するからオジキの風貌が魔物っぽかったからとか・・
それとも持ってる力が圧倒的だったから・・?
そういうのもあるだろう 強さがある程度はないとダメとか・・
でもそうであるようでそうでない リズ自身でそうであるとわかる
なぜならあの時の感覚は異様だった
だから一番大事なのはその感覚だと思った
その感覚がどこから始まったのかというと それは
「 」
あの不思議な半月の星空の夜の
吹き荒れた風の嵐の中でわたしの目とオジキの目が最初に合ったとき
オジキが私を見て私のことを完全に相手にしたとき
私がオジキを見てオジキのことを完全に相手にしたとき
私の中のイヴへの扉が開いたのだ
そのとき生まれた異様な感覚
それがどうしてだろう 感じるのだ
今日 今 この時 その異様な感覚が流れてくるのを感じていた
(ゲンゴ・・そうあなたに)
ゲンゴはちゃんと見てくれたの? 私のこと
じゃあ私も あなたに・・・
「
対空 強ナユラ砲昇破・滅
それは・・連打で力をためた後Pコマンドと→↑↑↑を
完璧なタイミングであわせたイヴの闇の殲滅対空技
(いけるわ・・!)
(( サアア・・ ))
リズの脳の中に宇宙の星々の空間を見上げながら足元には川が流れているような
あの時戦った時のような空間の流れが浮かんでくる
技に必要なコマンドたちが流れてきて技の軌跡になっている
「バシュウウ」
リズはそれに即対応して
連打のPコマンドの力ためと 少し開けてPコマンド一気に成立させる
「ポウ・・」
力ためとPコマンドが成立し
私の中で青い光が点灯し次へ進んでいく
「バシュウウウウウウ・・・!!」
同時にリズの腕からは邪悪な力が一気に立ち込めて
黒い波動を放つ
前回オジキと戦った時はここで失敗して技を不発した
その時の原因は方向キーの感覚をマスターしていなかったからだ
だけど 今は
(その先にいける・・!)
ゲンゴにつながった私の軌跡の先にぼんやりとイヴの姿が見えていた
「(イヴ・・!)」
イヴは今は悪魔のような後ろ姿しか見えていなくて
機械でできた装甲のような翼が揺らめいている
イヴは銀河の向こう側を見ていて その表情は分からない
(イヴに・・会える)
私は方向キーの入力に進む
まずはコマンド→ タイミングを合わせる
(ポウ・・)
点灯する
(いけた・・)
だけど この技で難しいのはここから
↑と↑と↑をそれぞれ1フレーム単位の完璧さで入力をしなくてはならない
それも対空する相手の状況に合わせて変えなくてはならないのだ
だけど私はそのタイミングを組織で幼少のときから練習して脳に叩き込んだ
イヴに関していえば 私はオリジンで達人といっていいレベルで
発動までもっていける
(自信も・・あるわ)
後は・・そろえるだけ・・
あともう少しでイヴに
「(やってみせる・・!)」
・・
音はない
ゲンゴは私に気づかれないように気配を消して背後にやってくる
だけど私はそれを知っているの
ひとつ目のコマンド↑を入力する
「(ポウ・・)」
点灯に成功し青く光るランプ 軌跡は進む
ゲンゴは砂煙に紛れ込みながら自分の結界を駆使して
その影が下の私の視界に映らないように抑えていた
だけどそれも私にはわかっていた ゲンゴが空から急降下しつつ近づいてくる
またひとつコマンド↑を入力する
「(ポウ・・)」
入力は成功する ランプは青く光る また軌跡は進む
・・・
最後の場所にやってくる
そこにはイヴがたたずんでいた
イヴは世界の向こう側に向いているままだったけど
遠くから見ると イヴはとても大きくてスリムな女悪魔のように見えたけど
近くにやってくるとイヴの姿はスリムだけど
私の身長より少し大きいくらいだった
星の流れる銀河の中に立つ後ろ姿の
淡い赤の混じるピンク色の長くて奇麗な髪が 風もないのに揺れていて
それがたまに肩の装甲や翼の装甲に当たって星のようにキラキラと輝いていた
「イヴ・・」
私はその後ろ姿に声をかける
しばらく無言のあと
「 ずっと・・まっていたわ リズ 」
向こうを向いたままイヴは 初めて私にその声で応えた
(あれ・・)
奇しくもそれは私とよく似た響きの声だった
だけど私に似た声なのに全然違うひとの声のようだった
妖しくて幾重にも音が重なっているような
「私もよ・・イヴ・・ずっと・・」
「 そう 」
「 でも・・残念ね 」
「・・え?」
「 見ているようで見えてないことって あるわよね 」
イヴはそういうとはじめて私に振り向いてきて
私の目にその悪魔の眼を向けてきた
(え・・・)
イヴは昔からいつもオリジンで見ていたように本当に美しい顔だった
イヴの妖しい悪魔の瞳の中に私の淡い色をもっと深くしたような
深紅の光が揺れていた
(最後のコマンド↑ボタン)
私は見ていた ゲンゴのその翼から無理をして、滴ってしまった血が
地面を濡らして わずかに音を立てたことを
「(タイミングは・・私は間違えない)」
「ギュウウウアアアアア!!」
接近したゲンゴからも
この今の私の邪悪な腕に圧縮されたエネルギーが放つ音が聞こえているだろう
だけどもうここまできたら遅い
発動すればこの邪悪なエネルギーが
対空の捕捉した相手の広範囲を一挙に殲滅する
それが・・
(最後の↑を押せば それが対空強ナユラ砲昇破・滅の発動キーになる)
( 終わりよ・・ゲンゴ)
「
「 」
(スッ・・)
「(
(え・・・?)
それは最後の入力を済ませるほぼ同時のタイミング
そのわずかに先
「ズブ・・!」
リズの片方の足がくるぶし程度までだが地面に沈み込んだ
たったそれだけの魔法
すぐさま足を引き抜けば すぐに持ち場に復帰できる
それは攻撃魔法というには あまりにも貧弱な威力であった
だけど それで
リズの体勢がほんの少し崩れて
完璧だったタイミングが一瞬だけずれる
最後のランプは・・「点灯しない」
(そんな・・私の対空強ナユラ砲昇破・滅が・・)
その直後にゲンゴが
音もなく背後から一気にリズの腕を取ってリズのお腹辺りに
「グアシ・・!」
ゲンゴの腕を回して完璧に掴み上げる
「あっ・・」
「ボシュウウウ・・・」
そこで対空強ナユラ砲昇破・滅の発動が不発に終わったことで
掴まれたリズの邪悪な腕からその力が一気に抜けていった
「届いたぞ」
舞い上がった風の砂煙が晴れる
ゲンゴの腕は
元の腕の形に戻っていて
その腕にはずっと血が流れていて
ゲンゴの魔力オーラと私の魔力オーラに挟まれて
その血はバチバチと煙を立てていた
「どう・・して?」
「
血だ 血を魔法の触媒に利用して お前の足元を沈ませた
扱いにくいし 用法は間違ってるし血の量も少ないから ろくな威力にはならないが
他の魔法と違って音は直前まで出ない 体勢を崩すのには使えた」
「最初から・・狙ってたの?」
「いや 偶然だ お前の足元に俺の血が風の切れ間から
かすかに星みてえに光って見えたんだ だから思いついた 」
「そう・・」
「覚悟はいいか?」
「(ギシィ・・)」
「バチバチ・・!」
密着したゲンゴの腕から強く締め付けられる
もう リズがもがこうにもゲンゴの投げ技の形が完璧に入っていて
力が抜け徐々にひび割れていく魔力オーラ以外
リズはろくな抵抗ができていなかった
「(ブワアアア!!)」
ゲンゴは私を掴んだそのままの体勢で
上空高くに飛び上がる
翼をまた広げた時に
その血に濡れた奇麗な黒の羽からゲンゴの血が飛び散って
「ピピッ・・」
私の頬に赤い血が数滴ついて流れる
「
私を抱えてある程度高く飛び上がると
「ゴオオオ・・!」
風の魔法の力も加わって回転しながら空をのぼっていき
そのままゲンゴは私を・・
「ピシ・・・!」
(え・・・?)
ゲンゴに上空で抱えられながら音のした方をみる
「バリイイイイイン!!!」
「!」
それは私のひび割れた防御の魔力オーラが割られた音ではなかった
試合会場で私たちを隠していた秘密の結界が破られる音がして
それが破壊されて崩落しているところだった
「・・!」
「(・・・なんだ?)」
ゲンゴもその異様さを察知する
その結界は周りの景色や音を遮断していたから
結界の壁が破られると一気に元の会場の様子が見えるようになる
するとそこには
「バキャアア・・・アアアン・・・」
試合会場に全体に設置されていた、
大規模な高度の祝福を付与した魔法で作り上げたはずの防護シールドが
破壊されて これも崩落を始めていた
ズオ・・ オ オ ・・
(( ))
それはまるで空が落ちてくるみたいな光景だった
試合会場を見守っているようだった、
魔法で
すでに半分は欠けていたり破損していて斜めになって倒れかかっていた
「うわあああ」
「いやああああ」
「なんだこれは!!」
静かだった世界に遮断されていた音が戻ってきて
轟音と共に観客たちのパニックの声が聞こえてきた
「(これは一体・・・!)」
・・
その時だった
「「 」」
突如として会場のある一点から赤い世界が広がっていく
(風が・・!)
時が止まったように
今まで感じていた風が別のものになってよどんで停滞していくのを感じる
「ズアアアア・・」
やがてその赤い世界は一瞬で会場のすべてを包みこむ
・・
その赤い世界の中心の一点の会場の席に立っていたのは
「「ズズズ・・!」」
逃げ惑う観客たちと見比べたら
その4倍ほどの背丈はあるだろうか
丸々ずんぐりと太った体に頭には大きな禍々しい角と
まるで強靭な羽虫のような邪悪で大きな翼を持っており
その羽をゆっくり広げてたたずんでいた
それはこの世界で
「闇食いデーモン」と呼ばれている異形の存在、
人に悪い夢を見せるという魔物の姿に酷似していた
だけどその大きく不気味な魔物には
「 」
そこにあるはずの顔がついてなくて
「うそ・・」
目はないけど こちらのリズの方をまっすぐに向いていた
(この嫌な感じ・・まさかここで、起こるの・・?!)
赤い世界に浮かぶその存在の闇のデーモンの顔のあった部分から
「「ジ・・ジジジジジジ・・」」
不気味な音を出して
見たこともないような
赤みを帯びた歪んだ球の光が発生して辺りを照らし始めていた
「(え・・・!)」
リズの方に向かってさし向けられた赤い光
そしてその光からやがて
血のように真っ赤な光で滲み出るように
魔法の呪文の文字とも違う、コードのような文字が空中に浮かび上がる
「
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