第17話 規格外の嵐 災いは天の狭間に

 「滅拳爆撃メギラバースト!!」


・・・

異様な禍々しい赤いオーラを纏い、飛び出したゴブリンの

いびつで斑の文様のある鋭い鉈は

リズのそのちらりと覗いた白い首筋に向かっていた


「(ニチャア・・)」

その首に自分のぬらりと光る刃物が食い込むのを想像して

ゴブリンは すでに悦に浸っていた


かつてはこの瞬間的な攻撃によって

自分の破滅すらわからない幾多の間抜けな獲物たちを屠ってきたのだ


(( 体がうずく・・まずは目の合った このひ弱な人間の女からだ・・

この女を食って俺は完全となる・・


いや・・、血が足りない

全部だ 全部の人間 

この視界にいる全ての人間を血に沈める・・


同族の雑魚共は狩れると人間共は思っているのだろうが俺は違う

俺は目覚めたんだ・・


人間どもに絶望をくれてやる 

獲物だ すべてはこの俺の獲物 俺のものだ・・ ))


・・・

ゴブリンが接近した圧によって リズの淡い色の髪の毛が舞い


触れるほど近づいたゴブリンの鉈に僅かにかすめて切れて風に流れていく


「「  」」

だがそのとき

同時にゴブリンは自分の胸のあたりに何かのエネルギーの塊があることに気が付く


「グギぎゃ?(なんだこれは)」


その瞬間

「ズギャアアアアアン!!」


リズの瞬間入力によって

ハイパワー・イヴとなった巨大な禍々しいオーラの右腕が振りぬかれ

ゴブリンの体の中央に風穴を開け


「あぎギャアアアア・・!!」

同時にゴブリンを遥か遠くまで力任せに吹き飛ばした



(ふう・・! 結構危なかったなあ・・でもオリジンだと

瞬間移動攻撃してくる敵ってたまにいるから

落ち着いて対処できた気がする・・)


「ギギャ・・」

「ブシュウウウ・・」

ゴブリンは吹き飛んでいたが 

途中の大きな木の幹にぶつかって遮られて止まっていて

そこで爆発飛散したような状態で体の末端以外 

原型があまり残っていなかった


ゴブリンが吹き飛んだ血肉は内蔵であったはずの部分からよく見ると

虫の体ような残骸が大量に露出していて物凄くグロテスクだった


そこから同時に

「シュン・・」

ゴブリンが手に持っていた文様の武器が光になって

別の場所に流れていって消えて

バラバラになった死体からも何かの光が

その場から漏れ出て消えていっているのが見えた


「(シュウウ・・)」

ゴブリンのバラバラ死体と向き合ったリズの右腕からは

エネルギーをそこで爆発させた後の排気の煙が放出されてた


(おええ・・!なにこれえ めっちゃ虫みたいなの出てきたんだけど

どういう生き物なのこれ 気持ち悪い・・!

虫がゴブリンに化けてたの・・?いや食べてたのかも

魔物ってなんでも食べるって聞いたけど悪食すぎでしょ)


・・・

そこに辺りの様子をキョロキョロと慎重に見てから

リズの近くまで駆け寄ってきたネロ


「わあ・・、リズ・・すごいね・・ ゴブリンひき肉になっちゃったね・・

僕しばらくハンバーグ食べれないよ」


「ちょっとやめてよ・・ていうか意外と余裕あるのねネロ」


「うん・・なんかあれを見て平気そうなリズをみてると

大丈夫なような気がしてきて・・ケガはない?」


「うん・・大丈夫みたい」


「リズのさっきのは・・魔法なの?」


(そういえばせっかくゴブリンが接近してきてくれたんだから

普通のパンチでよかったわね・・


離れてたから わざわざ遠距離も攻撃できるイヴの技を使ってしまったわ

使おうって思ってたからそのまま使ってしまったけど)


「うーん 魔法じゃないぽいのよね・・

私は魔法は全然つかえないし・・一応体術みたいなものかもって

思っているけど」


「ええ・・あんな体術 僕は知らないけど・・」


「それよりゴブリンからなにか光がでてたけど あれは何?」


「あれは・・ゴブリンの魔力の光だよ 

魔物を倒したら体の一部から魔力の光がでるんだ

リズがあのゴブリンを倒したっていうことだよ」


「倒した、か・・そうだったのね」



・・・・・

・・・

その少し前の時刻の 離れた暗い森の中


(ザッザッ・・)

ゴブリンたちの近くから馬車を捨てて逃げ出した山賊リーダーが

山の斜面の茂みを走り下っていく


「ハアハア・・ここまでくればゴブリン共は追ってはこないな

そうだよな

なんで俺が下民のためにタマ張らなきゃいけねえんだ

これでいいんだ


ざまあみろ あいつらみんな・・ゴブリンに食われちまえよ!」


「そうだ・・さらに手を加えてやろう

あいつら明かりはつけてやがるから ここからでも方向はわかる


ファイヤーアローレインだ・・いやだめだな

燃えちまったら後で回収にいけない 

ふつうのアローレインをしこたま浴びせてやろう」


「(ポウ・・!)」

遠くの馬車のある場所に向かって

離れの森から魔法の詠唱を始める山賊リーダー


「へへへ・・俺を馬鹿にしやがってよお

あいつらが慌てふためく様子が目に浮かぶぜ・・!」



・・・・


「ゴゴゴゴ・・・」

そこに上空から突如接近して降り立つ大きな影があった


「ん・・?なんだ急に風が・・」

山賊リーダーがその状況の異様さに気が付く



???「 ククク・・ それは・・駄目だな 」


「なんだお前・・魔物、か・・? お前のその姿・・・このタイミングといい

まさか・・お前が活性した魔物どもの襲撃のボスだな!

ちっ・・!せっかく上手くいきかけてたのによお・・、

どいつもこいつも俺の邪魔しやがって」



???「 面白いことをいう・・だがお前はもう終わりだ 」


「はん!てめえが終わるんだよっ・・! 

魔物の群れのボスさえ倒せば襲撃は終わりだ


俺の技はホーミング付きだ!

この距離なら俺の腕なら外れねえんだよ


俺の才を見抜けなかった世間のことなんざ知らねえ!

俺の力で楽して成り上がんだよ!!


俺のとっておきを見せてやる、蜂の巣になりな・・アローレイン!!」


・・・・・

・・・


がっくりとうなだれている山賊リーダーと

それを眺める謎の大きな影


「 ククク・・なんだその技は? 」



「なあ・・?! なんだお前 化け物が 


この俺の魔法が効いてねえのか・・?!」



・・・・・

「へ、へへ・・やめてくれよ・・、

なあ・・、俺じゃなくてあいつらの所に行ってくれよお・・、

向こうには弱っちい人間共がたくさんいるぜ・・!」



「 それはもちろんすぐに行く・・ 」


「や、やった・・!」



「 だがお前のようなの運命は変わらない・・ 」



「 !! やめろお!くるな!! 


ちがう、ちがうんだ! 俺の人生は本当はこんなはずじゃなかったんだあ!


なあ!なんで俺には魔法の才能がないんだよ!

俺は貴族なんだ・・!

「上」じゃなきゃ駄目なんだよおお!

下民ごときでも使えるような低級の魔法の才能じゃ駄目なんだ・・っ!


魔が差したんだ!

卒業前にほんの少しズルしたのがばれただけじゃねえか!

そんなちっぽけなことで破門しやがってよお・・!

俺が今までしてきた苦労の量を考えれば

そんなことは当然許されて然るべきだろうが!!」



「 お前は何を言っているんだ・・?懺悔のつもりか・・?


魔の法は星が選んだ才

人には選べぬものだ


いつから人間というのはそこまで驕るようになった・・?

お前のような人間は何故

届かぬ天の星ばかりを求め 地を這う己の姿を見失うのか


己の姿を忘れた者は

もはや星の見える地に立つこともできぬ


お前にふさわしい場所は地の底の地獄だ・・ 」



「ふ、ふざけんなああ! 説教なんざ求めてねえ!!


力を・・、よこせえええ!!! 」


(ズシャア!!)

直後に爆発するような風に巻き込まれ山賊リーダーは吹き飛ばされる



「お、俺はこんなところで・・!ぐああああ・・

俺は・・悪くねえ・・」



「ああああああああ」


山賊リーダーは暗い山の斜面の谷底にゴミのように転がり落ちていった




???「 愚かなものだ  次、だな・・」



・・・・・


馬車から少し離れた場所にいたリズたち


戦闘の騒ぎを聞きつけて

リズたちの方に一部のおじさんたちが応援に駆け寄ってくる


「おおーい こっちは大丈夫か! すごい音がしたぞ」


「はい ケガはないです」


辺り一帯を確認するおじさんたち


「なんだこりゃ ひき肉になってるが・・ゴブリンだな

散らかってるな・・虫の魔物もいたのか?

だれがやったんだこれは」


「遠くから一瞬で全然見えなかったが・・ 

お嬢さんがパンチで吹き飛ばしちまった

今時の身体強化の魔法ってのはすげえもんだな」


「このゴブリン・・少しパーツは残ってるな

鬼ゴブリンか・・?

だけど色が普通じゃないし体も大きい個体だ 


こいつは山岳ゴブリンの群れのリーダーじゃないか?」


「リーダーがこのざまなのになんでまだ戦闘は終わってないんだ?


まだ別のゴブリンの統率をるボスがいる可能性があるぞこれは」


(・・・)

おじさんたちによると

どうやらさっきの赤いゴブリンは群れを率いるボスではなかったらしい


「別のボスだってさ・・リズ」


「ふーん? そんなのいるの?」



・・・

その時

「「  」」

何かが満ちた瞬間に一際 夜空の星々が明るくまたたくのが見えた


そこから徐々に光のオーロラのようなものが現れて

それは夜の空をユラユラとゆれ始めていた


(なに・・これ・・)


その現象を仰ぎ見たネロがつぶやく

「これ・・「悪魔の衣」だ」


そのオーロラが現れた時

「ゴコ・・」

同時に

収まったと思っていた地響きがまた始まった


「  」」

今度は前の地響きより大きな振動で遠くのものではなかった

それはリズたちの少し先の距離で起こった



「「ズオオオオオ・・・!!」」(メキッ・・メキバキ・・)


(う、うわ)

視界にはっきり見えたそれは

前にメーリス山地に入る時に見た一際巨大な黒い封石の塊であった


リズたちが見ていた夜の星空たちを遮って現れて

激しい地響きを立てながら 巨大石は傾きながら立ったままの形で崩れて

視界を大きく横切り、徐々に山の斜面を切り込むように

谷のある下へ下へとずれて下っていた


(あんなに大きな石の塊が・・!)


((ズオオ・・))

巨大な石の迫力はこちらの方に倒れ掛かってくるんじゃないかと

思うくらい圧巻で 見上げた視界を高くまで覆っていて


その巨大な黒の封石は

森に入る前に時に見た時は本当に漆黒の闇色という感じで

夜の空に混じると黒に混じって全然見えないんじゃないかと思ったけど


「  」

異様な明るさの星々がその石のある場所を通り過ぎる時

僅かに照らされたその黒封石の隠れていた文様

それらは発光しているような紫の淡い光で

ぼんやりとその石の全体像を闇に浮かび上がらせていて

すごく奇麗で不気味な雰囲気がした


((・・・・))

その空間を割るように縦にそびえた巨石の上の辺りから

小さな星の光が大量に流れていっているのを見ると


それはまるでその大きな石は

はるか昔は大きな生きたお城だったかのように

この星がやってくる夜の間だけ元の姿に還って

流れた星たちを先導しているかのよう


(似てる・・)

その時私の中で元の世界で見た記憶、

いびつなそびえ立つ巨大なオリジンを模した建物からの光

(( サアア・・ ))

古い橋から見えた都会の都市の

いびつで巨大な建造物が不思議な桜の木の影のようなものに見えて

そこから光の花びらたちが散っていっていく記憶


それがなぜかリズの頭の中にフラッシュバックするように思い起こされた


あの時見た時と似た感覚

世界を流れていく大きな力の存在を感じていた


・・


「な、こりゃあ何が・・」

「危ないぞお!」

すぐ近くで上からやってきて崩れていく黒い封石の塊は

やがてその動きが止まったようで地響きも収まったけど


馬車にいた人たちは怯えて警戒して

さらに不安に駆られた状態になる


・・・・・


その時、 

その星のたちのオーロラと妖しく光る黒い巨石を突っ切るように


(ピシュン・・!)


大きな星の光が一つ流れていって

地平線の直下に真っすぐ割れるような光の軌跡を残しながら降りていく


他の星の光の花びらたちは飛散して散っていく


それは不思議な光景だった



するとその地上にまっすぐ降りていった星の光が一瞬、

影になる場所があってそこで光が遮られる


「・・!」


「「   」」


光が影の場所にさしかかったことで

その空の場所にくっきりと後光のある遮られた影になって 

大きながそこにいることが分かった


「ヴォオオオオ・・」

「ウヴォオオオオ・・」

「ワオオオ・・」

そして周辺からこだまするような複数の不気味な魔物の鳴き声が空間に響き渡る

・・・


(何これ・・、何が始まるの・・?)



そのこだまに呼応するように大きな何かの影の主は見る見るうちに

一気にこちらに見えるまで移動して接近してきていた


「「ゴウ・・!」」

すると突然、上空から

それまではなかった竜巻のように大きな嵐のような風が発生して

端で馬車のとまる広間の中央あたりから渦を巻いて

弾けるように同心円状に外に向かってその風が吹き抜ける


「ズオオオオ!!」


「!!」「うわあ!」

周囲に爆発するような風がふりかかって

体が浮きかけて吹き飛ばされそうになったけど

リズや馬車のおじさんたちはなんとかその場で体勢を低く構えたり

近くの物を掴んで飛ばされないようにして抵抗する



「 ビュウウウウオオオオ・・・ 」


少しだけ向かってくる風の勢いが落ち着いて

そこに大量の巻き込んだ木の葉が舞っていて目の前の視界を遮ってくる


だけど上を向けば 

そこにはもう近くに巨大な影の主がやってきていた


「「 ドン  」」


「ズズズズ・・!」

それはその存在が空に羽ばたいていることがわかる大きな黒い翼のシルエット


だけどその体を支えるには難しいのではないかと思えるくらいに

重厚な体つきをした存在が空にたたずんでいた


やがて天空の星の光がうっすら差してきて

少しだけその姿の影が取れる


「「  」」

一部の影が取れて見えたその怪物の姿は異形の姿をしていて

鬼の仮面でもかぶっているような いかつい鬼の形相

まるで鬼の天狗のような見た目をしていた


・・

すると嵐を引き連れてやってきた、

その大きな天狗のような怪物は静かに響く声を発する



「 長かったが・・ ようやくここへ出られたか


クックック・・隠れても無駄だ


祝福しゅくふく」の風よ  「探知」だ 」



「え・・」

(なにあれ・・あれが本当の・・この襲撃のボスだっていうの?

あれもこの世界の魔物なの・・?しゃべってるよ・・


ていうか 今「祝福」の風って・・

この世界の恩恵を受けた上位の強い魔法だって確か・・

やばくない・・?これ)



「 そこか 」



「 風魔雷龍閃ふうまらいりゅうせん 」


大きな黒い影の天狗がそう唱えると 


その鬼のごとく腕から真っすぐ指をさす


「ギイン・・!」

それはまるで天候を操っているように

おそらくさっきからの強い風の魔法で だけど風なのに


それが天から落ちてくる雷のように瞬間的に風に形が作られて


「ピシュウウウン!!」

瞬時にまっすぐにその指をさした先に向かう


「  」(・・!)

それは今までリズが見たのとは明らかにランクの違う魔法の力だった


「ズシャア・・・!」

その術は馬車の離れた先の少し脇の森の茂みの部分に

思い切り突き刺さり 嫌な音を立てた


すると


その術が直撃した茂みから人の腕が見えて

だらりとさがって


「ドサ・・」

その茂みの下の地面に落ちて倒れて

そこから隠れていた?人の血が地面を流れているのが見えた



( え・・・?)


「や、やばいぞあいつ」

「人間を・・、殺したのか?!」


その時

馬車の前でそれまで必死に避難を誘導をしていた聖ソウル法典の牧師さんが

怪物の現れた夜空を見上げて呆然とひとこと呟く



「 さ、「災厄」は大滅の星と、め、目覚めた悪魔が連れてくる・・ 」


・・

それは聖ソウル法典の黙示禄に記された

滅びの予言の一節の言葉であった


「あ、あ、悪魔だ・・っ!! 目覚めたんだあ!」

その一言を聞いて

今まで落ち着いてゴブリンに対処していた一部の用心棒のおじさんたちまで

積もっていた不安が決壊してパニックを起こす


「!」

「おい落ち着け! ・・牧師さんよお!今は教えは勘弁してくれよ

悪魔なんているわけねえだろ!」

「す、すみません・・!そんなつもりでは」


「だがどうすりゃいい、特級の魔物の化け物かあれは?

よりにもよってこんな場所で・・」

「なにも装備なんてねえぞ

いや装備で何とかなる相手じゃないんじゃないか」


「残りの魔力を全部使っちまうが・・出し惜しんでる場合じゃねえ」

「アロー・レイン!」

「アイス・レイン!!」


(ボシュ、 ボシュウ・・!)


普段魔物がいる郊外でも身を守るために

道具で補助してなんとか放つことができる低級の魔法くらいなら

使える素質のある人は普通の人でも割といる


突如現れた災いの塊ような存在に向かって

ありったけの抵抗の術を放つものの

まるで化け物のような強い風の嵐にさえぎられて

へし折られるようにして流れていく用心棒のおじさんたちの攻撃魔法


「だめだ! 全部あの風に阻まれてはじかれる 

俺たちの力じゃ全然届きすらしねえぞ!」


「この中にあれを破れる上位魔術師はいないか・・?!」

「いるわけねえだろ!」

「うああ、ゴブリンだって・・、まだこんなにいるんだぞ・・!」


「みなさんこっちです けが人は馬車の中へ!」


「なんとか人数を集中して対策するんだ」




「 ・・・・ 」


漆黒の黒い翼を広げた鬼のような大天狗の怪物は

人々が混乱して逃げ惑う様子を観察するようにゆっくりと上空から眺めている


辺りを回る竜巻が地面を巻き込んで 

焚き木の火や馬車の拠点の物資など いろいろなものが吹き上げられていく


そこで大天狗がその大きな翼の羽ばたきを止めた


「(パラパラ・・)」

羽ばたきを止めると

ゆっくりと風で吹き上げられていたものが地面に落ちていった


だけど大天狗は羽ばたきを止めたのに

不思議なことにその巨体は上空に止まったまま

謎の力でその場所を維持していた



大天狗はその場で黙って腕を組み

一言、なにかの命令のような合図を発する



「 お前たちはここに結界をはっておけ・・ 」


すると

大天狗の背後からさらに配下の魔物だろうか


(グオン・・!)

不気味なカラスのような魔物や黒いまだらの毛並みの犬のような魔物が

人のいる馬車の方に向かって解き放たれる


そしてその解き放たれた魔物たちは人々に抵抗されない位置に回り込んで

馬車の周りに細工をしはじめる


「うわあ あいつからきた変な魔物が馬車の周りから

 結界を張りだしたぞ! もう退路がないぞ!」

「こ、このままじゃ全滅だ・・!」


張り巡らされた結界によって逃げる道も塞がれて

馬車の前に集まった人たちは追い込まれて身をすくませて怯える



・・・

その様子を眺めている大天狗


「 フッフッフ・・大丈夫だ・・お前たち・・

あまり怖がるんじゃない・・一瞬だ・・一瞬ですむ・・ 」


馬車のおじさんたちの魔力も

ずっと山の中で続いていた戦いの疲れから切れ始めて

抵抗する力はもうかなり弱くなっていた



「 さて・・次だな・・」



弱った人間たちに嵐のごとく降りかかった災いのような怪物


渦の中心の大天狗は強い風で表情が隠れてよくわからないけど

鬼の形相の仮面の鋭い目の中の強い光が

今度は2番目の馬車に向けられていた


「(ギロリ・・)」


「ひいい・・」

今の2番目の馬車の中には襲撃に怯えている避難した人々が

身を寄せ合うように震えていた


だが大天狗は 

その時 に気が付く



「 ・・・何?」





滅拳爆撃メギラバースト

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る