トリセツ
青甘(あおあま)
第1話 出会い
「好きです!付き合ってください」
またある男子が学校の聖母と呼ばれる
「ねえあの人ってサッカー部のエースの先輩だよね?」
「やっぱり今度こそOKしちゃうのかな?!」
そんな風に盛り上がっている女子たちをよそに俺はその告白が成功しないことを祈ることしかできない。
「ごめんなさい」
そう言って彼女はサッカー部のエースという男を振った。
「まあ、予想通りの展開だな」
昼食を食べている俺の親友、
「そんなこと言って本当は気になったんだろ〜」
まるでお見通しのように笑っている。
「はあ?俺が気にするはずないだろ」
「そうはいいながらも、八重桜さんのことずっと不安そうな目で見てたぞ」
「なっ!」
「バレていないとでも思ったか〜?」
やれやれとでも言わんばかりに首を振る。
「でも、親友だから言わせてもらうけど諦めな。あれは高嶺の花だよ。春みたいなやつがOKされるはずがない」
ムッ!
「春みたいなやつって失礼だな!?そんなの分かんないだろ!」
思わず親友に言われた言葉に声が大きくなる。
「そうは言っても春は女子の気持ちわかるのか?今まで八重桜さんと話しかけに行くこともしてないだろ」
「…………」
何も言い返せなかった
なにせ和樹は今までに十人以上の女子と付き合ったことのある、いわゆるチャラ男だったからだ。女子の気持ちなどお手の物とでも言わんばかりに常にだれかと付き合っている。
何も言い返せない…
「仕方ない。春みたいな陰キャでも俺みたいに女子のことがわかるようになるものを紹介してやろう」
「陰キャは関係ないだろ」
反論をよそにスマホを取り出し、画面を見せてきた
《《近年流行の恋愛シミュレーションアンドロイド「アムール」
それは15歳以上なら誰でも買えるシミュレーションアンドロイド。その役割は、あなたたちの好きな人への気持ちを伝えるための準備のため、女の子の気持ちが理解できるようになるため
また、付き合ったあとにどうすればいいかの予習ができる!!
単にこの「アムール」と一緒に過ごすために買ってもOK
購入したお客様次第です!
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「今このアンドロイドが流行ってるだろ?学園の男の半分以上が買ったことがあるらしいぞ。これを買ってみたらどうだ?これなら女の子のことも少しはわかるし可能性が出てくるはずだ」
「…でも買うってなっても高すぎるだろ。足りねーよ」
「貯金十五万くらいあるんじゃなかったか?」
「なんで知っているんだ?!」
「自分から言っていたの忘れたか。小さい頃からお年玉貯めたり入学祝いの金も貯めたりしたらそれぐらいになったって」
「でもまだ五万足りないから無理だよ」
「それだったら俺が貸すよ。春だったら信用できるから返せる時に返せばいい」
「いやいや!五万だぞ?さすがに金額が大きいわ」
「いんや、これは春が大人になるための必要なことだ‼︎だから受け取ってくれ」
大人って。和樹を見ると真剣そのものだ。こうなったらこいつは譲らない。
「そうはいっても……うーーん……………分かった。受け取るよ。でも必ず返すから!」
「ああ、気長に待つわ」
キーンコーンカーンコーン
ちょうど昼休憩が終わった
放課後
俺はお金を貸してもらい「アムール」を買った。
サイトを開くといくつも種類があったが、迷わず直感に任せ、真ん中に載っているアンドロイドを選んだ。直観とは言ったが本当は見た目だ…。
一週間後
ピンポーン
遂に届いた。
この瞬間をずっと待っていた。
「こちらが恋愛シミュレーションアンドロイド「アムール」になります」
配達の人はあまりの大きさに台車を使っている。まるでドッキリの箱みたいだな。俺は台車ごとアムールを受け取った。
「ありがとうございましたーー」
扉が閉まり部屋にダンボールを持っていく。とても重い。運ぶのも一苦労だ。
ついに届いた!興奮を抑えながらゆっくり近づくと勢いよく段ボールが開く。
「はじめまして!私は恋愛シミュレーションアンドロイド アムールNo.396 です。不束者ですがよろしくお願いします。」
「あっ、ああ、こ、こちらこそよろしくお願いします」
唐突な光景に唖然とする。まさか勝手に開くなんて…
思わず敬語で返してしまった。
その声はなんだか心地よく機械的な音声ではない。見た目も人間そのもので綺麗な黒髪が背中に伸びており身長も俺と同じくらいの可愛い顔だった。
本物の人間みたいだ。
だが、奇妙なことに口元は笑っているのに目は笑っていないように見えた。まあロボットだしそんなものか。
「こちらが私の取扱説明書になります。よくご覧になってください」
アンドロイドから取扱説明書を受け取り目を通す。
これが俺とサクラの出会いだった
トリセツ 青甘(あおあま) @seiama
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