第27話 告白
「星よ我が指先にその光を与えたまえ」
【スタラ】
うっすらとした光がエレナの身体を包みだす。
「うわぁ…!」
その光がだんだんと指先に集まりビー玉程度の光の玉へと変わっていく。
「ハクトくん!出来ました!」
光に照らされ喜ぶエレナの顔には先程までの青白は感じられない。
「私!本当に出来ました!」
いい笑顔だ
椅子から立ち上がり喜ぶエレナは、まるで初めて花火を手にした子供のように、腕をぐるぐると回しはしゃいでいる。
「ハクトくんも一緒に魔法使いましょうよ!」
エレナに急かされ立ち上がる
加護が無くても魔法は使えることも分かったし、エレナがここまで喜んでくれるなら本当に良かった。
まぁそんなに派手な魔法ではないんだが。
「ほら!あんまりはしゃぐと危ないぞ!」
また転げたりしないだろうか…
「きゃ!」
「危ない!」
案の定、足を絡ませたエレナに駆けより手を引く。
…
顔が近づく。
転ばなかったのは良いが力を入れすぎて抱き寄せてしまった。
エレナの腕を挟んだ2人の顔の間には1つの光の玉が浮かび上がっている。
「あ…あの…ありがとうございます。あともう大丈夫です。」
「ご、ごめん!」
エレナを立たせ距離を置く
「謝らないでください、また助けて貰ってありがとうございます。」
優しく微笑んでくれたことに安心する。
また心臓がうるさい。
「明日、冒険者になったらハクトくんは旅をするんですか?」
明日からの話か、凄く恥ずかしかったんだがエレナは思ったより何も感じてないのだろうか?
そう思うと自分だけ意識してしまったようで恥ずかしい。
「そうだな…色々と情報は集めないといけないと思ってる。この世界を知らない…というか世間知らずだからさ」
「じゃあ近いうちにこの街も出ていくって事ですよね?」
「まぁそうなるだろうな!目標は暗黒竜討伐だからな。」
「そうですよね…分かりました…」
分かりましたと言ったエレナは1つ深呼吸をし言葉を続ける。
「ハクトくんが俺を信じろって言ってくれた時に決意したんですけど…聞いてくれますか?」
「あぁ…何でも聞いてくれていいけど、どうしたの?」
「大切な事なので真剣に聞いてくださいね…」
真剣な話…なんだろうか…
「ハクトくんにはドラゴンに襲われていたところを助けて貰って凄く感謝しています。戦ってた姿はかっこよかったですし。
それに魔法も優しく教えてくれて、私が知らない知識をいっぱい持ってて凄いなって。
だからもっと色々と教えて欲しいし、離れなくないなって…」
え…なんか凄く誉めてくれる!
かっこいいとか、優しいとか、離れたくないとか…それにエレナの顔赤くなってるよな!?
ちょっとモジモジしてる感じするし!?
「ハクトくんの気持ちは分かりません…でも…良ければ私と…」
まってくれ!心の準備が!でも期待には答えたい!
「パーティーを組んでください!」
「こちらこそ宜しくお願いします!」
…
ん?パーティー?
「本当ですか!ありがとうございます!私なんか足手まといになってしまいそうで断られると思ってたんですが嬉しいです!」
「あの…パーティーって何の事?」
「やだなぁ!一緒に旅する仲間の事じゃないですか!若輩ながら私も暗黒竜討伐に協力させて貰いますね!」
「あぁ…ナカマ…仲間ね!そう!仲間か!エレナが来てくれたら!ウルも喜ぶだろうし!もちろんだよ!」
「明日から改めて宜しくお願いします!では私はパパ…いや父に魔法見せてこようと思いますので失礼します!」
そう言うとエレナはそそくさと部屋を出ていってしまった。
告白だと思った俺はただのうぶ野郎なんだろうか…教えてくださいアテン様…
◆
ベッドの上ですやすやと眠るウルの側に横たわり目を閉じる。
思うと同じ年頃の女の子とこんなにしゃべったのは小学生の頃以来だ。
高校に入学してからは大和以外とはあまり会話をしてこなかった。
最初はクラスの皆と話していたが、魔法の話や【光の神】の話をすると、どんどんと周りから距離を置かれるようになっていた。
いじめという程ではないかもしれないが、クラスの一部の連中から面白おかしくいじられたことも沢山ある。
そう考えるととこの世界に来れたことは良かったことなのかもしれない。
この世界は想像していた世界と似かよっている事が沢山ある。
ずっと信じていた【光の神】や魔法がある世界だ。
想像していたことが現実にある世界。
この世界ならば前より楽しい生活が送れるかもしれない。
ただ心残りもある。
大和と癒真は大丈夫だったんだろうか?
アテン様は時間が足りないと答えてくれなかった。
それに母さんは…俺と癒真が居なくなったら1人にしてしまう。
セレネではない本当の母親の顔を思い浮かべると心が少し重くなる。
今は考えても仕方がないか…今日は本当に色々あったから疲れたよ。
遠くから虫の声が聞こえる、この世界に来る前に煩かった蝉の声に似ている。
あれほど煩かったのに今はなぜか心地よく聞こえるな。
そんな事を考えながら異世界に来てからの長い1日が終わった。
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