大文字伝子が行く10

クライングフリーマン

大文字伝子が行く10

高遠と伝子は出版社に原稿を届けた帰り、モール内の映画館にいた。伝子の希望で「ワンダーウーマン」が出る「アヴェンジャーズ」である。

「伝子さん、スーパーガールもいいかもよ。」「私はマネキンでもモデルでもない。」

観終わった後、パトライトが点くと、続々と舞台に男達が上がった。「舞台挨拶の準備かな?」「どうも違うみたいですよ。」

「大文字伝子はどいつだ?」壇上に上がった男達の一人が言った。

「私ですが、何か?」と立ち上がった伝子が言い返すと、男は言ってはいけないことを言った。「そこの『としま』が大文字伝子か?」

怒りに目が変わった伝子はワンダーウーマンに変身していた。バッタバッタと敵をあっという間に片付けてしまった。観客から盛大な拍手が巻き起こった。

「だから、ダメだって・・・。」と、自分の声に目が覚めた。

「大丈夫か、学。ヨダレ垂らして居眠りして。何かおいしいもの食べていたのか?」

伝子の声に目をこすりながら、高遠は応えた。「伝子さんの夢を見ていました。」

「出るぞ。」伝子に手を引かれ、高遠は外に出た。

「喫茶店でも行きますか。2軒先に先日オープンした喫茶店があるんです。」

「いいよ。」

高遠は、お勧めメニューのサンデーセットをウェイトレスに注文した。

「サンデー?今日は月曜だぞ。」と伝子が言うと、高遠が微笑みながら、「違う単語です、伝子さん。」と応え、伝子の掌に『sundae』と書いた。

「学、変なこと知っているな。」と伝子は感心した。「それより、お前、『探偵局』、書き続けるのか?」「嫌ですか、伝子さん。」

「ううむ。嫌じゃないが、複雑な気持ちだな。」「いいんですか?」「この間は済まなかった。」「お前のデビューを心待ちにしていたのは、他ならぬ妻の私だ。なんか祝いやろうか?」「んー。じゃ、地味でない服着て下さい。それが最大のプレゼントです。」

「んー。分かった。後で買いに行こう。これ、案外上手いな。」「実は僕も初めてです。」「そうなのか?」「伝子さんと結婚したけれど、デートってしていなっかったでしょ。」

サンデーセットを完食した二人は、勘定を済ませにレジに向かった。

「月曜のサンデー、上手かっただろ、『としまちゃん』。」

「物部?」「副部長!」と伝子と高遠は口々に言った。「今、また『としま』って言ったな。」「伝子さん、こらえて下さい。」「なんだ、高遠だったのか。見たことあると思った。」「今は伝子さんの夫です。」「結婚したのか?はは、お似合いだ。結婚祝いだ。ただにしよう。」「ぐぬう。」「伝子さん、出ましょう。」

外に出た高遠は伝子に言った。「よく我慢してくれました。」

「いや。あいつ脚を引きずっていた。あれは骨折じゃない。病気だ。だから、強がり言ったんだ。」「流石だ。」

伝子にブティックに入った。すかさず高遠は、店頭の店員に声をかけ、「地味でない服を選んでやって下さい。妻は年下の私に合わせる積もりで地味な服を着ているので。年相応でいいと思うんですね。」「任せて下さい。」

店員は嬉しそうに中に入って行った。「高遠じゃないか。」と、福本と依田がやって来た。「いい所に来た。祥子ちゃん、頼みがあるんだ。」と、高遠は祥子に耳打ちした。

「喜んでー。」と、祥子は満面の笑顔になった。

10分後、祥子に付き添われ新しい服に着替えて伝子は出てきた。

高遠、依田、福本は「ほうううっ!」と声を出した。「に、似合わないか?」

「お似合いに決めってまあっす。」と3人は讃えた。

「あ、靴も新しいのにしなくちゃ。」と依田が言うと、「200メートル先ね。」と祥子が応えた。

一行が靴屋に向かおうとした時、事件は起こった。

皆で連れ立って歩く内、パンプスに小石が入った気がした伝子は噴水の縁に腰掛け、パンプスを脱ぎ、小石を出すべくパンプスを振った。伝子が側にいないことに気がついた高遠は振り返った。「伝子さん、危ない!」と思わず高遠は叫んだ。体を反転させた伝子は落ちて来た『三節棍(さんせつこん』を受け止めた。

一方、一行の進行方向とは違う出入り口方面から突進してきた男がいた。伝子に近寄ろうしていた高遠は、その男のタックルを受ける形になった。

高遠は、吹っ飛んで倒れた。「高遠!」福本や依田が駆け寄り、声をかけた。

伝子は「きっさまあ!よくも私の夫をーーー!!」

手にした三節棍で、男に対峙した。男は懐からナイフを出したが、伝子の敵ではなかった。あっという間に相手の男のナイフを叩き落とし、後ろ手にしてから脱臼させた。

そこに、愛宕を含んだ4人の警察官が走って来た。「遅いぞ、愛宕。」「すみません。おい、連行しろ。」

「先輩。救急車呼びました。」と、蘭が言った。「いつ来たんだ?」

南原が応えた。「たった今です。高遠さんが倒れていて、依田さん達が止血していたので。」

「ご苦労。みちる、あいつは何だ?」「郵便局強盗です。モールの入り口近くの。丁度私たちが通りかかったので、追いかけて来ました。以外と脚が早くて・・・。」

「どうだ、ヨーダ。」「すみません、咄嗟に先輩の服使っちゃいました。肋骨折ったのかも。」「脱臼だったら、出血しないかも知れないしな。」と、福本が続けた。

救急車が到着した。依田が説明している間に伝子は三節棍をバッグにしまい、パンプスを履いた。

救急車に乗り込む際に、伝子は皆に指示した。「祥子、福本。私の服は捨てていい。ヨーダ、病院が決まり次第連絡を入れる。南原、暫くの間、この辺を撮影してくれ。愛宕、逮捕した奴の取り調べ経過を後で教えてくれ。」と。

本庄病院の待合室。伝子が出てくる。「ヨーダ、保険証あったか?」「バッグにありました。入院手続きしました。」

「担当医の話では、最低1週間は入院だ。ヨーダが言った肋骨だが、ヒビが入ったらしい。」と説明した。

「先輩。出版社には連絡しておきました。楠編集長が、おっつけお見舞いに来られるそうです。」と、福本が報告した。

祥子と蘭がやって来た。「こんな時になんだけど、先輩の靴買ってきました。」祥子は福本に領収書を渡した。「ありがとう。今度いつ行くか分からないからな。幾らだ?」

「いいです。」「・・・そうか。」

そこに、みちると久保田がやって来た。

「大変でしたな。過剰防衛だけど、場合が場合だから、問題にならないだろう、って伯父が言っていました。これはお見舞いです。今時のお見舞いはこれが一番だと聞きましたので。」と、TVカードを差し出した。

「恐縮です。」「それと、三節棍の話ですが・・・白藤から聞きましたが。」

伝子はバッグから三節棍を取り出した。久保田は子細に調べていたが、「やはり。」とマナスドライバーを取り出し、あるネジに当て、回した。フィルムケースが出てきた。

「実は伯父から連絡がありましてね。事情は話せませんが、ある事件の物証です。」

久保田はフィルムケースをしまい、みちるに言った。「これを届けてくれ。」

「了解しました。」と、みちるは急いで去った。

「強盗犯逮捕に関しては、非常に感謝しております。私だけでなく。多分今回は感謝状が出ると思います。高遠さんにも正式な見舞金と感謝状が出ると思います。では、私はこれで。あ、高遠さんの容態は?」「今のところは全治1ヶ月ですが。ありがとうございました。」

久保田刑事が去ると、「三節棍が何故、先輩のところに落ちて来たか?筒井先輩かな?」「恐らくな。私では無く、学を見付けたのだと思う。私を信じて投げたんだ。真上のシャンデリアから落下するように。強盗は偶然だろう。取りあえず、今日は解散だ。」

午後6時。病院の夕食は早い。何とか高遠に夕食を食べさせた伝子は、予備のベッドを用意してくれるよう看護師に依頼していた。

「伝子さん、帰ったら?」「何を言う。一晩中私にオナニーをしろと言うのか?」「そんなことは言ってませんよ。」「新婚の妻を放置していいのか?」

看護師はクスクス笑いながら、出て行った。代わりに物部が入って来た。

「物部!」「副部長!」「高遠。大丈夫か?って言っても、点滴繋がっているが。」

「物部、どうして?」「お前が見切った通り、俺は脚が悪い。ここに通院している。精算の順番を待っていたら、依田達を見かけて事件を知ったよ。大変だったな。大文字にやられとは、強盗も災難だったな。あ、ごめんごめん。大文字に喧嘩売りに来た訳じゃない。」「お見舞いありがとうございます。」と高遠が応えた。

「ここには週2回通院しているんだ。通院のついでに寄ってもいいかな?」

「いいよ。それより、どこが悪いんだ。」「「脊柱管狭窄症。脚が悪いが、その病気が原因だ。大文字はいい夫を選んだ。庇った結果だと聞いたぞ。」「まあ、な。」

「じゃ、お大事に。」物部は出て行った。「副部長も本当は悪い人じゃないんですよ。」「分かってる。ああ。ヨーダ達が下着とパジャマを買ってきてくれたぞ。」

「みんなに迷惑かけて・・・。」「今は気にするな。水を買ってこよう。」と言って伝子は出て行った。

「大文字さん。」久保田刑事に呼び止められた。「南原さんに、現場に残って撮影するよう指示されたそうですね。」「ええ、妙な予感がしたもので。」

「先輩、これ見て下さい。」デジカメに映っていたのは、必死に噴水周辺で何かを探す男達だった。

「三節棍を探している?」「多分。」と久保田は応えた。

横から福本が言った。「先輩。やっぱり筒井先輩が三節棍を投げたんですよ。」

「この映像、というかデジカメお借りできますか?」「いやと言っても持って行くでしょ。いいか?南原。」「勿論。」

「あのー。」と愛宕が遠慮がちに言った。「久保田先輩。大文字先輩。郵便局強盗を追いけて来たら、向こうに高遠さんが倒れるのが見えたんです。それで、郵便局強盗を見失ってしまいました。モールはあちこち枝分かれしているでしょ。」

「うん。出入り口も多いよな。」「あの男、まっすぐ大文字先輩や高遠さんに突進したと思うんです。だから、高遠さんは大怪我をした。」

「違和感はそれか。私も一瞬、イノシシがやって来たと思ったんだ。」

「護衛をつけましょう。」久保田はどこかに電話した。

「今夜はもう帰れ。解散って言った筈だぞ。」「南原さんと愛宕さん、久保田刑事と合流しちゃったんですよ。」と依田が言った。

「今夜は帰宅。明日の朝集合だ。」「はい。」と口々に言った。伝子はミネラルウォーターを買って、病室に戻った。

「遅かったね、伝子さん。」「なんだ、寂しかったのか?おっぱい欲しいのか?ここは病院だぞ。」「大文字さん。夫婦でいつもこんな冗談言っているんですか?」と笑いながら看護師は尋ねた。

「僕と伝子さんは大学のクラブの先輩後輩でね。再会して『焼けぼっくい』に火が点いて籍を入れ、結婚した。まだ新婚。」

「ごちそうさま。後はご夫婦でごゆっくり。でも、節度を心がけて下さいね。」と笑いながら看護師は出て行った。

「学。一つ確認だ。犯人が突進するのを見て私を庇ったんだよな。」「それって、犯人が伝子さん目がけてだったか?ってことですか?」「そうだ。」「いや・・・まっすぐ突進してきた。イノシシみたいに。」

「よし。」伝子は独り合点した。

午前0時。高遠の病室に誰かが入って来た。

「遅いぞ。寝ちまうじゃないか。」と言いながら伝子が布団を跳ね飛ばして起きた。

伝子は相手の鳩尾にパンチを入れ、後ろ手にした。「明かりを!」

予備のベッドに隠れていたみちるが明かりを点けた。同時になだれ込む刑事達。

久保田刑事が、みちるに促し、手錠をかけさせた。「殺人未遂、家宅侵入、公務執行妨害。後は署で。」

刑事達が引き上げると、みちるは「病院のスタッフに・・・。」と走って行った。

「大文字さんのカンが当たりましたね。」と久保田が言った。

「久保田さん。愛宕に連絡してください。マンションが気がかりです」「はい。」

電話を切らずに「侵入の形跡はあるものの、荒らされてはいない、ということですが。」と、久保田は伝子に言った。

「念のため、鑑識さんに徹底的に指紋等を調べて貰った方がいいですね。」と、いつの間にか中津刑事が言った。

「侵入者がいたとすれば、金品を持ち去ったのではなく、監視カメラか盗聴装置の回収をしたのでしょう。」「中津さん、何故?殺人未遂の可能性があるから?」

「あ、今度2課に転勤になりましてね。久保田さん、どうも半グレが絡んでいそうですよ。」「そうだ、久保田さん。隣の町屋さんに聞き込みとかいうのをして貰って頂けませんか。何か聞いてるかも知れない。町屋さんはあの犬嫌いのおばちゃんですよ。」「ああ。犬がダメだとか盛んに言っていた。」久保田は愛宕に電話で指示を出した。

そこへ、車椅子に乗せられ、点滴を繋いだ高遠が、看護師とみちるに付き添われて来た。「伝子さん、帰宅して下さい。」「いや、しかし、学。」

「僕はもう襲われませんよね、久保田さん。」「分かりました。念のため張り番を残します。行きましょう、大文字さん。行くぞ、白藤。」

1時間後。伝子はPCを調べていた。「ハッキングまではされていないが、コピーはされた形跡がある。」「そんなこと分かるんですか?」と久保田が言うと、「伯父が作ったプログラムで、起動履歴とコピー履歴は隠しコマンドでプログラムを起動させて確認出来るんんですよ。」

井関が近寄って来て言った。「流石の名探偵さんも、監視カメラには気づいていなかったんだね。」「監視カメラ?」「そうだよ、久保田。奴さんたちは『家探し』したんじゃなくて監視カメラを回収したんだよ。」

「犬はダメなのよう。あ、大文字さん、どうなっているの?」と、隣のおばさんが入って来て言った。

「引っ越し業者らしき人達を見かけたそうです。」と愛宕が報告した。

「4人くらいかしら?引っ越し?って言ったら、『いや、ちょっと』って言って。何かおかしいと思って、大文字さんの番号知らないし、警察に電話しようかな?って思っている内に警察が来て。泥棒ですか?」「ええ、多分。」

「どんな格好だったか分かりますか?引っ越し屋さんの恰好って。」「よく判らないけど、紺色の服に何かのワッペン付けていたわ。」

「大文字さん、一応調べておきましょう。それで、何で高遠さんが襲われるような気がしたんですか?」「突進に迷いがなかったから。しかし、この手口は違う。PCのコピーは『何とかの駄賃』ってやつだ。私や高遠の書いたデータは常に他にバックアップして、あまりPCに残さない。」

そう言って、伝子はAVルームに久保田達を案内した。「愛宕。何が並んでいる?」

「VTRデッキに地デジチューナーとかHDD/DVDレコーダーとか、ですか。」

伝子は地デジチューナーの一つに繋がっているHDDドライブを地デジチューナーから外して説明した。「この外付けHDDドライブは、実は地デジチューナーの外付けHDDじゃない。さっきのPCの外付けHDDだ。勿論、テレビでPCのデータは確認出来る訳じゃない。フォーマットが違うから。」

「なるほど。『木を隠すには森に』という訳ですか。」と、久保田は言った。

「間違いなく、あの事件(「大文字伝子が行く9」参照)が関係している。敵はヤクザと半グレ両方か。」伝子はため息をついた。

鑑識や警察関係者が出ていった後、伝子は仮眠をとった。

午前9時。伝子の後輩達は集まった。「という訳だ。迂闊な行動は出来ないな。」

「先輩。俺たちに自粛しろ?と。」「そんなことは言わない。狙われている限り、じっとしていても同じことだ。迂闊な行動ではなく。計画的な行動が大事だ。」

「その計画、聞かせて貰えますよね。」いつの間にか、久保田と管理官が入って来ていた。「誰だ?鍵かけ忘れたのは?」と伝子が言うと、「まあまあ、大文字さん。あなた方の護衛の話をしに来たのですよ。一ノ瀬商事といちじく会から守る為のね。」と管理官が言った。「いいんですか、我々に機密事項漏らして。」と怪訝な顔で伝子が尋ねた。

「共同戦線を取らないとね、相手がヤクザと半グレ両方だから。ヤクザVS半グレVS中年探偵団。映画のタイトルだね。」「止めて下さいよ。」と伝子は抗議した。

「例の事件。やはり取引に奴らの全員が集まった訳じゃないんです。ヤクザはヤクザで、半グレは半グレでいざという時の遊軍や見張りを用意していたんですよ。詰まり、大文字さんのワンダーウーマンも着替える前から撮影されていた可能性がある。まずいことに、愛宕は制服だった。」

「詰まり、愛宕を尾行して、このマンションがばれた。」と、伝子は愛宕を見た。

「すみません、先輩。粗忽者で。」「説明しなくても知ってる。睨むなよ、みちる。取り敢えず、ヨーダはあの時はいなかったし、久しぶりにこのマンションに来た。間違いないな?」

「はい、先輩。」「じゃ、お前、司令塔。このマンションでみんなからの連絡を受け、他の者に伝える。」「はい。」

「愛宕は仕事の振りしてうろつく。」「警邏ですね。」「警邏だな。」

「みちるは、以前行ったスーパーに買い物に行く。」「おびき出す訳ですね。姉から店長に連絡して貰い、協力を仰ぎましょう。あ、言うのをすっかり忘れていましたが、先輩が投げ飛ばした時にいたレジ係は私の姉です。」

「愛宕はいい嫁さんを貰った。」と、伝子が言うと、「全く、同感です。」と久保田が続けた。

「南原は離れた所にいたから大丈夫だろうが、学校の行き帰りには気をうけろ。」「はい。」

「問題は、福本だな。」「無駄かも知れませんが、劇団の仲間に協力をして貰います。」「うん。家にいない方がかえっていい。私同様、『おとり』だ。」「目立たないよう、我々もバックアップします。あの空き家はまだ借りているそうですし。」

「いざとなればマッチーにも応援頼もう。」と管理官は言った。「マッチー?」と久保田が尋ねると、「サチコの後輩だよ。相棒組んでたこともあるんだ。」と管理官が説明した。

スーパーまんまる。伝子とみちるが店長室で店長と高峰くるみとに事情を説明していた。

「あの時以来(大文字伝子が行く5参照)、ウチも警備会社からの派遣で私服警備員を雇いましてね。あ、丁度来ました。彼らにも万引き同様、不審な人物をマークさせましょう。高峰君もレジ係を外して商品整理係をさせます。レジ係は既に他の者が入っています。婦警さんが、いや、女子警察官の方が高峰くんの妹さんとは知らなかったなあ。よろしくお願いします。」

「こちらこそ。よろしくお願いいたします。」とみちるが言った。伝子は、「私を観察しているようなら、万引きではないが、私を狙っている可能性があります。その時は合図をお願いします。」

「了解しました。」と私服警備員達は言った。伝子は「じゃ、みちる。夕飯の材料探しに行こう。」「はい、先輩。」と店長室を出て行った。

遅れて、高峰くるみが店長室から出て行った。

店内。伝子とみちるは「カレーがいいかハヤシがいいか?と談笑しながら、買い物に回っていた。1時間半。もう現れないかと思っていた矢先、みちるのスマホにくるみから電話が入った。「23番通路にいる男が、それとなくみちる達の後を追うような買い回りをしている。買い忘れがあったみたいな風に装って、引き返してみて。」

小声でみちあるは伝子に伝えた。「えー。お母さんたら、お寿司も買ってこいってえ?もう通り過ぎちゃったじゃない。あなた、取ってきてよ。」と、伝子が大きな声でみちるに言った。「分かったわ。ちょっとここで待ってて、おねえさん。」と言って、みちるはお寿司のコーナーまで早足で歩き出した。

23番通路にいた男性客が、みちるが離れたのを確認すると、懐に手を入れながら伝子にそっと近寄ってきた。

伝子が正面から向かい合い、「何か私に用?」男はぎくりとして立ち止まった。反転して立ち去ろうとした男に私服警備員たちが立ち塞がった。

男は違う通路にいたくるみの方に突進した。横から出てきたみちるが足を引っかけたので、男は持っていたナイフを落として、前につんのめった。

みちるはすかさず、伝子が投げた手錠を男にかけた。「窃盗未遂及び殺人未遂及び公務執行妨害で逮捕する。」

近くにいた客達が拍手をした。みちると伝子と共に両側から挟まれ、男は店長室へ。入れ替わりに店長が出てきて、私服警備員たちに場内整備を指示した。「高峰君も手伝って。」と、くるみに店長は叫んだ。

店長室。愛宕を含む警察官達が到着した。警察官達が行くと、愛宕は「おけがは?先輩。」「んんもう。誰に向かって言っているの?ワンダーウーマンよ、先輩は。」

「ああ、そうだった。みちる、先輩と先に帰ってくれ。」「了解。買い物は後で姉に届けて貰うわ。」

その頃。福本家を出た福本夫妻は、『煽り運転』に悩まされていた。

「間違いないな。祥子。ヨーダに連絡だ。」「はい。もしもし、依田さん?」

「何かあったのか?」「煽り運転です。インターチェンジ出てからずっと尾けられています。」「了解。警察とチーム前方とチーム後方に連絡する。気をつけて。絶対逆らうな。」「了解しました。」

その時、最初の一撃があった。後続車が福本の車のバンパーに接触したのである。

福本はややスピードを上げた。後続車は更に距離を縮めて来た。「後方チームは間もなく追いつく。前方チームは一旦コーン出して路肩に駐車する。警察チームはサイレン消して反対車線に侵入した。」と依田から電話が入った。突然、後続車は福本の車体を擦りながら前方に急発進して、50メーター先に停車した。福本は急ブレーキをかけた。

「今、前に出て停車しました。」「了解。前方チームに知らせる。パトカーにも知らせる。」

後続車だった車から、ヤクザっぽい男が出てきた。いちゃもんつけに近づくかと思ったら、まずボンネットに乗り、屋根の上のドライブレコーダー用のカメラを、そして、リアウインドウ近くのドライブレコーダー用のカメラを壊して、福本の車から飛び降り、運転席の福本のドアの窓を叩いた。福本は怖がる演技をした。元々俳優だから、幾らでもアドリブで対応出来る自信はあった。

「出てこいやー。」と、有名な格闘技選手のような台詞を男は怒鳴った。後方から1台の車が抜き去り、男の車の向こう側から降りて男に近寄った。福本の車の後ろにタクシーが止まった。

男に向かって、並び立った男が尋ねた。「どうしました?」「この車に擦られてね。逃げようとするから止めたんですよ。」後から来た男は、福本のドアの窓を叩いた。「降りてきてください。逃げようとするのは良くないでしょ。」

その時、後から来た男の車の前方に、バックしてきた前方チームの車が止まった。

前方チームの車から福本の仲間の松下が降りて、出てこいやー男に尋ねた。

「どうしたんです?」「え?ああ。この車がね、私の車擦って逃げようとしたんですよ。」

続いて、タクシーから福本の仲間の本田が降りてきた。「どうしました?エンストですかあ?」

出てこいヤー男が困っていると、パトカーがサイレンを鳴らしてやってきた。パトカーから降りた警察官の一人の女性警察官はコーンを出し、交通整理を始めた。

そして、後から降りた警察官二人が中央分離帯を跨いで近寄ってきた。内、一人がコーンを並べ、交通整理を始めた。

最後の一人が警察手帳片手に事情聴取を始めた。出てこいやー男の話を聞き終わると、警察官は福本に話を聞いた。福本は煽り運転され、車を傷つけられたと訴えた。

「話が大きく食い違いますねえ。何か物証があればなあ。」と警察官が言うと、福本日出夫は言った。「多分、ウチのドライブレコーダーに映ってますよ。」

「ウチのドライブレコーダーにも映っているかも。」と松下が言った。

もう1台のパトカーが到着した。「じゃあ、皆さん。ここでは交通の邪魔だから、署まで『移動』しましょうか?」と警察官は言った。パトカー2台に挟まれる形で5台の車は警察署に移動した。

会議室のスクリーンに映し出された映像には、福本の車に煽り運転する車が映し出され、福本の車のドライブレコーダーに連動したカメラから映像も映し出され、男達の蛮行が暴かれていった。実は、福本の車には隠しカメラもあったのだ。

男達二人はすぐに逮捕され、取り調べ室で警察官が「殺人未遂罪で起訴する」と言ったら、素直に背景を白状した。

いちじく会の下請けのチンピラだった。派遣の請負だった。

連絡を受けた依田は、伝子達に伝えた。「なるほどな。直接痛めずに間接的に痛める。ヤクザのやりそうなことだ。取りあえず、夕方集合だ。ヨーダ。ピザでもいいから出前取っておいてくれ。預けた金で足りないようなら、後で精算する。」

「了解しました。発注しておきます。」

その時、伝子のマンションの電話が鳴った。「もしもし。」と依田が出ると、男の声が「あ、その声は依田か?」「物部副部長。予想通りでしたか?」「ああ、高遠が誘拐された。4人組の男達だ。正面から搬入車横付けしてな。中津刑事が車体にカラーボールぶつけてくれたから目印になるかも。腹に『池上病院』って書いてあったけどな。ペイントで消す位なら乗り換えるだろうが。」

「分かりました。ちょっと待って。南原さん、今どこです?」「病院に向かう途中です。」「高遠が誘拐されました。追って連絡しますから、捜索に加わってください。」

依田は南原へのスマホを切ると、福本日出夫に電話した。「福本さん。今、高遠が誘拐されました。」「見ていたよ。管理官の久保田に合図を送って、サチコを同乗させた。」

「ありがとうございます。入り口近くに、私たちの先輩がいます。物部と言います。杖を突いています。合流してください。物部先輩、聞こえましたか?」

「聞こえた。」「福本さんは、僕らの同輩の福本の伯父さんです。車椅子に乗っています。」「了解した。依田、見直したぞ。」

依田は固定電話を切ると、伝子と福本に連絡をした。「すぐに病院に向かう。福本にも連絡を。」と伝子が言ってスマホの通話を切ると、依田は福本に連絡をした。

「取り調べは長引くらしいから、こちらも久保田刑事の車の誘導で病院に向かう。じゃ、後でな。」

依田は深呼吸をすると、コーヒーを入れた。玄関チャイムが鳴った。ピザ屋だ。しかし、念のため用意したスタンガンを携えて出た。幸い、ピザ屋だけだった。ピザ屋が不思議そうな顔をするので、「ああ、これ。今西部劇観てたから。」と言い訳した。

幸い持ち金で精算は足りた。隣のおばさんが顔を出した。犬嫌いのおばさんだ。ピザの一部をおばさんに分けて、依田はおばさんに尋ねた。「どうでした?」

実は、変な人物を見かけたら教えて欲しい、と頼んでおいたのだった。

「今のところ、大丈夫。ねえ。終わったら教えてね、何が起こっているのか。」「勿論ですよ。」と言い、依田は部屋に戻った。

「さて、と。」高遠のことは勿論心配だが、成り行きを見守るしかない。前回の事件に関与していないのだから、依田が一番安全だし、情報本部としてはうってつけだと伝子が言った通りだ。しかし、あの物部副部長まで巻き込んでしまうとは。予想外のことが多いな、と依田はコーヒーを飲みながら考えていた。

久保田管理官から電話が入った。「今、サチコを乗せて追跡している。予め仕込んだガラケーの信号が高遠君の体と、ストレッチャーからGPS発信している筈だ。PCのマップを起動してくれ。」

「ああ。点滅しています。それから、管理官。救急車のパトライト付近にオレンジが散乱している筈です。」「ん?分かった。いざという時に目印になるかも知れんな。」と久保田管理官は応えて通話を終了させた。

依田は、冷めたコーヒーを啜ってから、別のPCからLinenを起動させ、Linen事件(「大文字伝子が行く」参照)のメンバーにメッセージを送った。

『突然で済まない。我々が巻き込まれている事件で君たちの協力が必要だ。協力というのは、簡単だ。白い大型のバンで側面には『池上病院』とかいてある車を見かけたら場所を教えて欲しい。車体のどこかにカラーボールぶつけた後の赤いペイントが着いている。事情は後から南原先生から話をして貰う。』

メンバーから次々に承諾のメッセージが入った。学校の他のlinenを利用しているグループにも声をかけた、というメッセージも返ってきた。

本庄病院。伝子たちが到着した。物部と福本日出夫が近寄ってきた。

「大文字君の読み通りだった訳だ。病院関係で内通者がいるから、高遠君の病室が特定され、襲われた。失敗しても簡単に諦める筈がない、と。」

「高遠を、学を囮にするのが一番だと思い、転院の話をわざと流した。やはり、私か学は何かの為に狙われている。」

「予想より早かったが。久保田の提案で発信用ガラケーを仕込んだが、いつ発見されるかは分からないが。」と福本日出夫が言うと、

「予め公安が特定したアジト候補のどこかに向かってくれればいいが。」

「今、依田からGPS発信していたガラケーの信号が途絶えた、と連絡が入りました。」と、伝子は言った。」

「じゃ、高遠はどうなるんだよ、大文字。」と物部は勢い込んで言った。

「最終的には、連中は人質の高遠を餌に私にコンタクトしてくるだろう。」

「そんな暢気な。」

伝子のマンション。依田が必死にlinenの情報の位置を入力していた。PCの一つには、専用のマップアプリが展開されており、依田が入力した地名付近がマーキングされていく。依田は共通点を見付けた。

「管理官。高遠のガラケーのGPS信号が途絶えた場所から、目撃情報を加えていったら、アジト候補Aの方向に向かっていることが分かりました。」

「了解した。警察各方面に伝える。君は大文字君達に伝えたまえ。」

「了解です。」依田は伝子のスマホを鳴らした。「先輩。第3浄水場近くの一軒家です。多分空き家です。今管理官が向かいました。」

「分かった。我々も向かうことにする。」

本庄病院。「第3浄水場といえば、みなとも町付近だな。物部、どうする?いくか?」「ああ。付き合うよ。でも、車は?」伝子と物部はみちるのミニパトに同乗するのは難しいので、みちると中津の車に分乗した。

アジト付近。南原兄妹、久保田刑事と久保田管理官、福本姉妹、愛宕、サチコを含む犬たちが待機した。そこへ、伝子がやってきた。

「先輩。これを。」南原兄妹が防弾チョッキを伝子に着せた。続いて女性警察官の一人が隠しカメラや隠しマイクをセットした。

「敦子。」とみちるが驚いて言った。愛宕が不思議そうに尋ねた。「知り合い?」「うん。警察学校の同期。今は警部殿だけど。」

「活躍は聞いているわよ。突入の時は組もうか。」「オッケー!!」

女性警察官が防弾チョッキを運び、敦子とみちるに着せ、ダミーの服を着せた。

管理官が言った。「公安からの情報によると、あの廃工場の南西側に明かり取りの窓があり、下に荷物が積まれていて、恐らくやつらがたむろしている場所より上方に降りられる。渡辺敦子警部は、その窓から侵入する。白藤巡査は正面から出前を装って入場。大文字君が正面から入場した5分後に決行だ。よろしく頼む。民間人を巻き込むのはどうか?という意見もあったが、ワンダーウーマンだから大丈夫と説得した。」

「ええ?」「半分冗談で半分本気だ。」

管理官の合図で伝子は廃工場に突入した。「私の夫はどこだ?」と伝子は言いながら見渡した。3方向に10数人ずつ集団がいた。中央のボス格らしき男が言った。

「流石、三節棍を使いこなせるだけあって、堂々としているな。そこにいるよ。」

集団とは離れた場所にストレッチャーに乗っている高遠が見えた。拘束具で固定されている。「三節棍を出して貰おう。」右側のグループの中国人らしき男が言った。

伝子は中国人に三節棍を投げた。中国人はすぐに調べていたが、「ない。」

先ほどの男が尋ねた。「中身はどこへやった?」

「中身が必要だったのか?警察にあるぞ。そもそも、お前らがここへ来いと取引の連絡をしてきた訳じゃない。中身が大切のものなら、中身を入れて、どこどこに持って来いと連絡するのが常識だ。三節棍を探している位は分かっていたから、ここを探り当てたついでに『お土産』で持って来ただけだ。取引の連絡を怠ったのが、どのグループか知らないが、その間抜けは後でしっかり絞ることだな。」

その時、正面入り口が開き、ピザの出前の格好をしたみちるが入場した。

「こんにちはー。ピザの宅配です・・・お取り込み中でしたか?」

「誰だ?こんな時に注文したのは?」ざわざわと各集団が騒いだ。

三番目のグループからボス格の男が言った。「お嬢ちゃん、場所間違えたみたいだぞ。上手そうなピザだから、頂こうか、ただで。ついでにお嬢ちゃんもな。」

ガラスの割れる音がした。すかさず、みちるはストレッチャーに移動し、荷物の陰にストレッチャーごと滑り込んだ。

天井から敦子が飛び降りてきた。各集団が敦子の方向に向かった。

正面入り口が開き、サチコを含めた犬が入って来た。男達に向かって行く。一方、集団の中から三節棍を持った中国人が伝子に向かって来た。声が聞こえたような気がして伝子が目を向けると何かが飛んできた。思わず出した左手にそれは収まった。ヌンチャクだった。伝子と中国人は三節棍とヌンチャクで決闘することになった。

数十分後。伝子が相手をしている男以外は全て取り押さえられていた。決闘は続いていたが、やがて伝子が一瞬で倒した。敦子が取り押さえた。愛宕刑事が手錠を渡した。

敦子が手錠をかけ、「確保!」と叫んだ。拍手がどこからか始まった。

1時間半後。伝子のマンション。すっかり冷めたピザを3台の電子レンジで忙しく祥子や蘭、みちる、敦子も加わって温めて配っている。3台目の電子レンジは、隣のおばさんの行為で借りたモノだ。依田が事件の当たり障りのない部分をおばさんに話し、ついでに借りたのだった。

「先輩。高遠はまだ退院できないんですか?」と、依田が伝子に尋ねると、来週末、通院に変わる。」と伝子は応えた。

「お前ら、いつもこんな危ないことやってんのか?警察公認か?」と今度は物部が伝子に尋ねた。「成り行きでな。後輩の一人が警察官なのも原因かな。紹介しよう。中学の書道部後輩、愛宕寛治とその妻みちる。こっちは高校コーラス部の後輩の南原龍之介と妹の蘭だ。ヨーダと福本は説明不要だな。福本の隣にいるのが福本の妻の祥子だ。ああ、この人は後輩じゃない。」

最後に紹介された敦子は、「渡辺あつこです。お見知りおきを。」と言った。みちるが「警察学校の同期なんです。」と説明を足した。

「ふうむ。大文字の世話好きは知っていたが、色んな人間の面倒見ているんだな。感心した。蘇我が生きていたら、この光景見てどう思うかな?」

「やっぱり部長を譲っとけば良かった、とか。」「いやあ、『としまの貫禄』とか・・・済まんすまん。禁句だったな。」「危うくセーフでしたね、副部長。もう少しでまた修羅場でした。」一同は笑った。

「相変わらず盛り上がってますなあ。」と言いながら、久保田が中津と入って来た。

「おや、警部殿もご一緒でしたか。前回の事件のヤクザいちょう会と半グレ株式会社アナグロと、もう一つ中国マフィアの小さな組織アネモネが三つ巴で複雑に絡んでいました。大文字さんの復讐を兼ねて、新しいコネクションを作る積もりだったようです。三節棍に入っていたのは『バイオテロ』の為の設計図だった。結果的に巻き込んでしまった、と筒井さんから、お詫びの伝言です。」

「やはり、あのヌンチャクは・・・。」と伝子が言うと、「おい、まさか筒井ってお前の元カレの?」

「知ってるんですか?副部長。」と依田が尋ねた。「一度デートに出くわしてな。口外すると殺すって脅された。」「やりかねない。」と福本と依田が期せずして唱和した。

「お前らなあ。」みちるが伝子の口にピザを押し込んだ。「久保田先輩も中津刑事もどうですか?」と、みちるはピザを差し出した。

「中国マフィアってまた襲ってくるんじゃあ・・・。」と物部が言うと、「その筒井さんの情報によると、大きな組織じゃないらしい。『海賊』程度だとか。」「海賊。」

「そうそう。サチコに表彰状が出るそうですよ、福本さん。いずれ連絡がくるでしょう。」

「分かりました。」

本庄病院。スマホでマンションの様子を見ている高遠。「楽しそうですな、高遠さん。今回はご迷惑をおかけしました。情報を漏らしていたのはやはり清掃会社のアルバイトでした。池上病院のスタッフも怪我はさせられましたが、かすり傷だったようです。」と、本庄医師は説明した。

「いや、ご迷惑おかけしたのはこちらの方です。ところで物部さんの具合は?」

「ううむ。長いリハビリが必要でしょうね。当面は先輩後輩で通院仲間ですね。」と、本庄医師は言い、出て行った。高遠はスマホを切り、看護師が点滴の準備にかかった。

高遠は幸せを噛みしめていた。

―完―


























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大文字伝子が行く10 クライングフリーマン @dansan01

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