オタギャル☆ロマンス

銀星石

オタクに優しいギャル

 僕は漫画が好きだ。自分で描くほどに。

人に好かれるような趣味じゃないと自分でもわかっている。

 ほとんどの人にとって、漫画はその場限りの暇つぶしだ。そんなものに本気でのめり込んでいる僕は頭のおかしい異常者として扱われる。

 特に、オタクとは真逆の人種とも言えるギャルからすれば、攻撃すべき対象で、優しくするなんてもっての外だろう。


 でも何事も例外はある。それを僕は知った。

 その日、僕は学校の図書館でこっそりと次のイベントに出す同人誌を書いていた。よくある二次創作じゃない。完全に僕オリジナルの作品だ。

 なんで学校の図書館で書いているかと言えうと、特に深い理由はなく、単なる気分転換にすぎない。

 いつもは家で描いているけれど、環境が変わればちょっとモチベーションが上がる、ような気がした。

 そんなわけで、図書館の隅っこで、家からこっそり持ってきたタブレットを使って漫画を描いていたわけだけれど、その日の僕はちょっと集中しすぎて、後ろから誰かが覗き込んでいるのに全く気づかなかった。


「なにそれ、漫画?」

「!?」


 後ろから女の子の声がして、僕は口から心臓が飛び出しそうなくらいに驚いた。図書館じゃなかったら大声を上げていただろう。

 振り返ると、いかにもギャルって感じの女の子がいた。

 僕は何度も、こういう陽気な性格の人たちに自分の趣味を何度も馬鹿にされた。

 さすがにみんながみんなではないけれどね。隣に住んでいる子供の時からの幼馴染みなんかは逆に褒めてくれたりはしたけれど、それは幼馴染みだからというお情けによるものだろう。

 ともかく、これからやってくるだろう侮辱の時間に僕は身構える。


「へえ、うまいじゃん。こういう事できる人、凄いと思うよ」

「えっ」

 

 僕はもう一度、びっくりした。ギャルが僕みたいなオタクを認めるような事を言えうと思わなかったからだ。


「ねえ、この漫画、読んでも良い?」


 そう言えわれて断る人は、漫画描きにはいない。


「描きかけでいいなら」


 僕が見せるとギャルの子は真剣に読んでくれた。


「なんか、こうエモいね。良いよ」


 ギャルの感想は単純で短い。でも、本心で褒めているのだとわかる。


「他にも描いているのがあるなら、読んでみたいな」

「うん、良いよ」


 ちょうど、前のイベントで刷った同人誌のあまりがある。僕はそれを明日持ってきて、ギャルの子に見せると約束した。

 僕はその時が凄く楽しみだった。

 オタクに優しいギャルはいたんだ!

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