第15話

「あの、野球部の有名トリオって、なんですか?」






 ものすごーくものすごーく幸せそうにパンを食べてる木戸先輩に、友弥が不思議そうに聞いた。






 あ、それ、僕も聞きたかった。






 うんうんって、透も頷いている。






「え?知らないの?」






 今度はパックのジュースをちゅーーーっと吸って、首を傾げる。






 3年生、だよね?3年生だよね?



 校章赤だから間違いないよね?



 何か…………こう言っちゃなんだけど………この先輩、かわいい。






「光ちゃん説明して」

「何で俺が」

「いいじゃん」






 んふふって笑って、またパンにかぶりつく。



 美味しいなあ~って言ってる姿がやっぱりかわいい。






「顔に似合わず熱血の渡瀬、さぼってばっかなのに野球センス抜群の早佐、筋肉どこってぐらいほっそいのにびっくりするぐらい運動神経抜群の茶髪の新井」

「熱血」

「さぼってばっか」

「茶髪のって」






 3人三様に呟く僕らを、木戸先輩が笑う。






「新井ちゃんの髪の毛って地毛なの?」






 あ、新井ちゃんって………。






 思わず目をパチパチして、木戸先輩を見た。



 ん?て顔してる。






 ま、まあいいか。






 左手で自分の髪を触る。



 薄すぎる、色。






 小さい頃はよくからかわれたなー。がいじーんって。






「生まれつきですよ。こいつガキの頃それでからかわれてよく泣いてましたから」

「ちょっと、友弥!!余計なこと言わないでよ!!」

「色素が薄いっていうの?全然日に焼けなくて、夏でも白いんだよな」

「透も!!僕それ気にしてるの!!」

「友弥は野球部の練習サボりすぎて白いし、俺普通なのにお前らと居るとやたら黒い人に見えて嫌なんだけど」

「サボりサボりってさっきから!!やるときはやってるって!!」

「部室でゲームばっかじゃん」

「そうだよー」

「うっさいわ!!てか、透くんは黒いよ!!」

「黒くねぇよ!!」






 僕たちのやり取りを見ていて、木戸先輩が笑いだす。






「おもしれぇ、何だこいつら」






 涙を浮かべて、木戸先輩はひーひー笑っている。



 真鍋先輩もパンを口いっぱいに入れながら笑みを浮かべていた。



 そして、僕の視線に気づいて、僕を見る。






「ミルクティーだな」

「え?」

「新井の髪の毛の色」






 ミルクティー。






 その例えが、ギラギラしているイメージの真鍋先輩からは想像つかなくて。






 くすぐったくて。






 あんまり好きじゃなかったこの目立つ髪が、ちょっと好きになれそうな気がした。

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