火力強めで一騎当千のやつ


 何で一介の伯爵家の息子に過ぎないルシウスが王宮に来れて王女様たちに会えるかというと。



 まず、グレイシア王女様はルシウスのお兄ちゃんの学生時代の先輩である。


 ルシウスは幼い頃から兄にくっついていたので、自然と王女様とも仲良くなっていた。



 何で王女様のお父様の国王様と、おじい様の先王ヴァシレウス様とも仲が良いかといえば、こちらは父メガエリスが魔道騎士団の団長だった縁からである。


 メガエリスはルシウスが物心つく頃に妻を亡くしているので、母親のいない幼いルシウスを連れて子守り代わりに騎士団員たちに相手させていた時期があった。


 それで自分の鍛錬や執務の気分転換のために騎士団の練兵場へやってくる国王様や先王様とも親しくなっていったわけだ。




 それ以外にもひとつ、大きな理由がある。



「ルシウスー。他国の国境で魔物が大量発生してて、うちの国にも救援要請が来てるんだ。でも今の時期、他国にあんまり人員出したくないんだよな。どうしたらいいと思う?」



 王女様が書類片手に聞いてきた。



「何人欲しいとか人数の指定がないなら、火力強めで何人分も働ける人を少人数派遣したらいいんじゃないですかー?」



 ルシウスはとても勘がいい。


 具体的にはステータスに“絶対直観”という珍しいスキルを持っている。

 物事を正しく直観する能力で、絶対と付いてるわりに絶対でもないが、なかなか精度が良い。


 本人は好き勝手に言ってるだけなのだが、きちんと受け止めて聞いてみると妥当な内容なことが多い。


 悩んでいるとき、とりあえずおみくじを引いて吉凶占うかぐらいのお手軽感覚で使える。


 なので、役に立つからと、王女様たちはルシウスが来たときは王宮や執務室へフリーパスで通すことにしていた。




 ルシウスの、変声期前の高めの声でのアドバイスを聞いて、黒髪黒目の王族たち三人は一斉に本人を見た。



 いるじゃん。火力強めで一騎当千のやつ。



 ルシウスのおうちはリースト伯爵家といって、魔法の大家である。


 代々、魔法剣士を輩出する家だ。


 彼の父メガエリス、新婚の兄カイル、そしてこの次男ルシウスも魔法剣士だった。


 魔力で魔法剣を創り出して浮かせて飛ばし、敵をぶっ刺す戦闘スタイルで、強い。




 ニヤーリ。


 王女様が笑った。



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