第44話 霧の中
王命により、魔王軍討伐へ向かった第7騎士団と別れ、駿助とガイアは、近衛部隊に護衛されて、深い森の中をメイグルの街へと向かっていました。
順調に進んでいた駿助達一行は、突然、霧に包まれてしまい、霧の中からカエル頭が現れました。
「ゲロゲロッ、我が名はボケイ・ダ・ゲーロ、魔王軍のエリート工作員だゲロ」
「くっ、魔王軍か!? 総員警戒態勢、勇者殿を守れ!」
近衛部隊隊長の指揮の下、近衛騎士達は素早く前へでると、ボケイ・ダ・ゲーロに対して大きな盾を構えます。
「ゲゲロッ、お前達は罠にかかったゲロ~。この霧の中では視界が奪われるゲロ。そして我の呼び寄せる魔物に食われるのだゲロ~!」
ボケイ・ダ・ゲーロは、おどけた調子でそう言うと、手にした法螺貝を吹きました。
プァオ~、プァオ、プァオ~~・・・。
「あれは魔物寄せの法螺貝でござる!」
「何それ!?」
「魔物を呼ぶって、やばいじゃん!」
冷静に相手の様子を伺うデビットの隣で駿助とガイアの顔が青ざめていきます。
法螺貝の音色の後に、霧の中から多くの魔物の鳴き声が聞こえてきました。
「ゲロゲロ~、この法螺貝は特別製ゲロ~。魔物を呼び寄せると同時に狂暴化させるゲロ~」
「くそっ、魔物の鳴き声がどんどん近づいて来る」
隊長の声に焦りが感じられます。
鳴き声と共に魔物が木々を掠める音も聞こえてきました。
どうやら、魔物達が近くまで迫って来たようです。
「ゲゲゲッ、魔物共よ、蹂躙を始めるゲロ~!」
プァ・・・、
ドカッ!!
ボケイ・ダ・ゲーロが再び手にした法螺貝を吹き始めたその時です。
彼の背後から現れた恐竜型の魔物が、彼を大きく突き飛ばしました。
「ゲ~ロ ゲ~ロ ゲ~~~・・・」
哀れ、ボケイ・ダ・ゲーロは、ピュイ~っと霧の彼方へと飛んでゆくのでした。
「・・・何だ、あれ」
「まさか、自身が呼び寄せた魔物に突き飛ばされるとは、思わなかったでござるな」
「いいボケかましてくれたじゃん・・・」
冷たい風が吹く中、駿助達は呆れた顔でそれぞれ呟くのでした。
ギャオオォォォォーーー!!
小寒い沈黙を打ち破るように、ボケイ・ダ・ゲーロを突き飛ばした魔物が遠吠えのように雄たけびを上げました。
「突撃サラウスだ! 気を引き締めろ!!」
「「「はい!」」」
我に返った隊長の声に、近衛騎士達が呼応します。
突撃サラウスが、真正面から勢いよく突撃してきました。
ガキィッ!!
突撃サラウスが近衛部隊の大盾に頭からぶつかり、大きな衝撃音が響きます。
しかし、近衛騎士は強烈な魔物の突撃を大盾でしっかりと受け止めると、グイっと押し返し、隣の近衛騎士が剣を突き立て魔物を仕留めました。
ギャウ! ギャエ! ギャオ!
ほっとする暇もなく、霧の中から、次々と突撃サラウスが突撃を仕掛けてきます。
何とか、大盾で凌いでいましたが、受け損なって尻餅をつく近衛騎士が出ました。
すぐに隣の近衛騎士がフォローに入りましたが、戦況は苦しいようです。
「くそっ、霧のせいで、何処から来るのかわからない」
尻餅をついた近衛騎士が起き上がって呟きます。
深い霧のため、どこから来るのか直前まで見えない相手は、防ぐのが難しいのでしょう。
「この霧を何とかせねばならぬでござるな」
「何か手があるんですか?」
デビットの呟きを拾って駿助が尋ねました。
「どこかに霧を発生させている魔物がいるはずでござる。そいつを倒してしまえばよいのでござる」
「でも、この視界の悪い中、どうやって倒すんですか?」
「霧の流れを辿って近づくでござるよ。見つけてしまえば、倒すのは難しくないでござる」
デビットは、自信満々に言ってのけると、早速、近衛部隊へと声を掛けます。
「近衛隊長殿! 誰か霧の流れを辿れるものは居らぬでござるか!」
「デビット殿、遺憾ながら、我らの中には、そのような者はおらぬのです」
近衛隊長の声には、悔しさが滲んでいました。
「わかったでござる。ならば、某が霧の魔物を倒してくるでござる。それまでの間、2人を頼むでござるぞ」
「了解した。デビット殿、ご武運を!」
「行ってくるでござる」
「デビットさん・・・」
「なぁに、5分で戻ってくるでござるぞ」
心配そうな顔をするガイアに、デビットは余裕の笑みを浮かべてそう言うと、単身 霧の中へと駆けて行きました。
近衛部隊は、駿助とガイアを中心に置き、前後にそれぞれ弧を描くように陣取り、大盾で守りを固めています。
そして、近衛の騎士達は、大盾をしっかり構えて魔物の突撃を防ぎ、剣で応戦しながら魔物の猛攻を何とか防いでいました。
「もう少しだ! デビット殿が、霧の魔物を倒してくれる。それまでは、なんとしてでも持ちこたえろ! 視界が開ければ、こんな魔物共、我らの敵ではないぞ!」
「「「「おう!」」」」
隊長が激を飛ばし、騎士達を鼓舞します。
近衛騎士達も、気合を入れなおして、防衛に臨みます。
グワオオオオオ!!!
怒号のような大きな雄たけびと共に、ひときわ大きな突撃サラウスが突っ込んできました。
ドガガッ!!!
「「「うわぁ!!」」」
今まで凌いできた突撃サラウスより二回りは大きな巨体の突撃を、近衛部隊の大盾では防ぎきれずに、騎士達が数名吹き飛ばされてしまいました。
そのとき、騎士達に巻き込まれる形で、駿助もいっしょに吹き飛ばされてしまうのでした。
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