第12話 人気の弊害
「どこどこ?エレナはどれ?」
「あれじゃない?」
「あ、エレナ。エレナ」
学校の教室の廊下に、何人も集まって来る生徒たち。
教室で授業を受けているエレナ目当てで、見物に集まって来る。
「あれ?」「どれ?」「いた!」「可愛い」などと騒いでおり、
休み時間になると、いろんな手紙やプレゼントなどの品物を持って、教室に入って来て、エレナにサインをねだる。それが何人も列を作っている。
エレナは真面目なため、一つ一つにプレゼントにお礼いいい、頼まれたサイン一つ一つに名前を書いて渡していく。
学校に迎えに行き、エレナを連れて戻ったジュリアは、自分のマンションの入り口の郵便受けが、エレナ宛のファンレターで満杯にされて、使い物にならない状態だということ知る。
郵便受けの入り口に1ミリの隙間が無い程詰め込まれ、外に溢れ出て床に山になっている。
それを見てため息を漏らすジュリア。
「みんなに好かれるのはいいけど、これほど騒がれては困る」
「ごねんね、ジュリア」
「あなたは何も悪くない。気にしないで。・・・しかしどうしてみんなうちの住所とか知っているのかしら?誰かがリークしているとしか思えない」
持っていた鞄や紙ぶくろに、郵便物をぶち込み、広いエントランスを横切ってエレベーターに乗り、自分の部屋の7階のフロアーに上がっていく。
廊下を歩き部屋につくと、これまた部屋のドアの前にも、プレゼントが山のように置かれていて、
「どうやってここまで、運び込んだのよ。勘弁してよ本当に」
と、呆れるジャリア。
「まったく何やってんのセキュリティは。・・・あ、エレナ、とりあえず触らないで。何か危険物や不審なものがあると困るから。後で片づけるからそのままで」
そういってジュリア、プレゼントを足で押しやり、扉を開いて部屋に入る。
しかし部屋に入っても、まだまだ災難は続く。
部屋の中で、けたたましい音を立てて鳴り続けている電話。見ると留守電も入っており、軽く500件以上入っている。
「もう本当、気が狂いそう」
ジュリア、聞きもせず電源を落とし、留守電削除。そして鳴っている電話のコードを抜き、沈黙させる。
そこでやっと一息つき、リビングのソファに座り、大事な郵便物を助け出すため、いらない郵便物をゴミ箱に順番に放り投げていくジュリア。
「もういい加減にしてほしいね、まったく。疲れるよ」
エレナ、キッチンから飲み物を自分とジュリアの分を持ってくる。
「毎日ご苦労様です」
「人気者はつらいね。まあ嫌われるより、好かれたほうがいいけど、でもこれは行きすぎ」
ジュリア、ファンレーターを捨てていくが、その中に、『死ね』『殺す』などが書いてある郵便物も見つける。
「・・・こういうやつもいる」
溜息をつくジュリア。
「・・・・・・ねえ、エレナ。ここから出て、外国に行ってみない?」
「外国?」
「この国は貴方を幸せにしてくれないと思う。他の国だったら貴方の才能を伸ばしてくれる所があるかも知れない。どう思う?」
「私、外国のことを知らないから、判らない」
「そうか・・・でも行ってみたい外国って、なんかない?テレビで見たとか、友達が話していたとか・・・」
「外国・・・・ディズニーランド」
「あ、そうね。ディズニーか。・・・ディズニーランドか。いいね。行こうか?」
「うん行く」
すると突然、玄関の方から凄い音がする。
ガキッ、グギッ
何かを突っ込んで、こじっている音。
「なに?」
ジュリア、ただならぬ音なので、セキュリティのボタンを押す。そして最近入れた、警察直通のボタンも押す。
そのうち音が、ガキガキと剝がすような音になったかと思うと、玄関のドアをこじ開け侵入してきた覆面の四人組が、銃を持ってリビングに入って来る。
「静かにしろ。動くなよ」
覆面①が、銃をむけたまま。威嚇すると、手を上げて後ずさりするエレナとジュリア。
「どうやって入ってきたの?」
「ああ、こういう高級マンションっていうのはさ。大体、避難口があって、そこについている非常階段と繋がっているのね。だから乗り越えれれば簡単に入れる仕組みになってるの。動くなよ。手を上げてろ」
覆面②が自慢するようにしゃべりながら、リビングを確認する。そのほかの覆面は他の部屋に行き、二人以外の人間がいないか確認に散る。
ジュリア、エレナに逆らうなと小声でいう。うなづくエレナ。
覆面②であるモリオ、リビングをうろつく
「二人いる。どうする?なあ、どうする?」
確認から戻った覆面①のミチルが答える。
「連れて行くさ。こいエレナ」
エレナを名指しにして、銃で振って呼ぶ。あまりに自然な言い方なので、ジュリア、エレナに聞く。
「エレナの知り合い?」
首を振るエレナ。
「いいからこい。エレナ。俺たちといくんだよ」
そういいながら、覆面①が手錠を出す。
「何?誘拐?誘拐なら、今、お金を払うわ。エレナを連れて行かないで」
カードを出そうとソファにある鞄から財布を出そうと動くジュリア。
怯えるモリオが、威嚇で食器棚に銃弾を撃ち込む。
砕け散る食器棚のガラスと中のグラス類が割れてはじける。
「急に動くんじゃねえ。打ち殺すぞ」
その音に驚き、他の部屋に散っていた覆面2人もみんなリビングに集まる。
「どうした?」
「勝手に動くと、次は身体にぶち込む」
ソファに向かったまま、固まっているジュリアは頷き、ソファのカバンを指さして覆面②のモリオに言う。
「財布よ。鞄の中にある・・・」
モリオ、ソファ脇にある鞄からジュリアの財布を出して、ポケットしまう。
「身代金でしょ。お金が目的なんでしょう?払うわよ。いくら?」
「・・・・・・」
覆面の男たち、もうジュリアのペースに乗せられて、話し合いが始まる。
「どうする?金を貰えばいいんだよな」
覆面②モリオが尋ねると、覆面①のミチルが答える
「とにかくここじゃだめだ。グズグズしててもしょうがない。連れて行こう」
その会話に加わるジュリア。
「お金を払うのは私よ。連れていくなら私を連れて行って」
「うるさい。おまえは関係ない」
「エレナはお金を持ってない。だから私が・・・」
ジュリアの発言にミチルがいらだち、
「うるさい黙れ」
銃を撃つミチル。今度は壁にかけていた絵に穴があいて、床に落ちた。
「でもよ。そう言われれば、そうだよな。エレナ誘拐して連れて行って。金、要求して引き替えるって面倒だな」
モリオが言うと、ミチルも考え直す。
「そうかもな。こっち連れて行って、金だけ取ったほうが早いか」
そういうとミチルは、覆面の③と④に手錠を渡し、ジュリアにかけるように指示を出す。
ジュリア、モリオがしまった財布を要求して受取ると、中のカードをミチルに渡す。銀行のキャッシュカードが3枚。うなづくミチル。
そして財布は再びモリオに渡すと、モリオはポケットにしまう。
「待っていてねエレナ。騒いでは駄目よ」
覆面③と覆面④に引っ張られて連れていかれるジュリア。
そしてミチルが去り際、エレナに念を押していう。
「エレナ、警察に連絡したら、あの女、殺すからな」
そしてジュリアを連れて部屋から出て行く覆面の集団。
廊下からエレベーターに乗り、1Fのエントランスに降りる覆面集団とジュリア。扉が開くと、ミチルとモリオが先に歩き、ジュリアをはさんで、覆面③と④が続く。
エレベーターから出て、出口扉までのエントランスの中央まで進むと、突然、武装した警官が、前に現れ行くてを阻む。
そして周りに配備されていた他の武装警察も現れて、ジュリアたち覆面集団を取り囲んだ。
「動くな。そのまま銃を捨てろ」
銃を構えた警官が、360度、一斉に並んで狙いをつけて迫ってくる。
「うわー特殊警官だ」
慌てるモリオたち。後づさりして中央にかたまる。
「包囲した。逃げられないぞ。銃を捨てろ」
警察隊が銃を示したまま範囲を縮めて、にじり寄ると、ミチル、やけになり
「近寄るんじゃね、・・・畜生」
銃を一発、警官に撃つ。
その銃弾は一番中央にいた命令している警官に当たり、のけ反り倒れるが、警官たちは防弾チョッキを来ているので、全く何ともない。
攻撃開始で投降なしと判断されて、すぐさま警官の反撃が始まる。
「撃て」
と命令が下され、一斉攻撃を喰らう覆面の集団。
警官に連続射撃されて、硝煙立ち込めるなか、覆面の集団は床に崩れ落ちる。
全員、倒れたので警官たちは射撃をやめて、逮捕のため近寄る。
すぐに生存確認をするが、ミチルやモリオたち覆面の集団は、全員、数発の弾を撃ちこまれており死亡が確認された。そして覆面たちの中央にいたジュリアにも弾が当たってしまっており、巻き添えをくったジュリアも息を引き取っていた。
警官隊は無線で話す。
「犯人グループ4人組。説得を聞かず発砲のため、防衛処置ため4人射殺。同行していた人質、一人死亡」
マンション内にすさまじい銃声がしたので、エレナ、部屋から出て下をうかがう。下で起きていることが収まっているようなので、エレベーターで降りる。
1階につき、エントランスの方へ行こうとするが警官に止められる。
「すみません。今、現場検証中です。部屋に戻ってください」
その止めている警官たちの隙間から、エントランスで人が倒れているのが目に入った。
「誰?」
エレナ、警官に止められるが、
「駄目だよ。中に入らないで」
しかしそれを振り切ってエントランスの中央に走る。そこで銃弾で撃たれ血を流して死んでいるジュリアを見つける。
「ジュリア・・・」
エレナ、ジュリアに縋りつき、揺するが動かないジュリア。
目を開き、死んでいるジュリア。
ジュリアをみつめ、泣き出すエレナ。
「ジュリア、ジュリア。ダメ、死んじゃダメ。ジュリア」
ジュリアにしがみつき泣きじゃくるエレナ。
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