-Winter 前編- 彼氏、告白、心の膿-1

 俺らの街には、木枯らしが強く吹くようになり、綿化粧をした雪虫も雪のように飛び交い、季節は冬を迎えようとしていた。


 雄介も出逢った頃のように、秋仕様の格好から冬仕様の格好に変わり始めていて、俺もゲーセンに忘れそうになったマフラーを首に巻いて…冬の訪れを待っていたんだ。


 手術も無事に終わり、体調も少しずつ戻ってきていて、職場にも無事に復帰する事が出来た。

 職場のみんなも「おかえり、待ってたよ!」と笑顔で、そして涙ながらに帰りを待っていてくれたんだ。


 顔と腰には、生々しい傷跡と軽めの後遺症が残ってはいるけれど、左目は、左右上下に動くし、視界も良好。


 数ヶ月経てば、若さもあってか、すぐに馴染んでくるから大丈夫!と主治医の先生も俺の事を笑顔で病院から見送ってくれたんだ。


 そしてjubeatも、いつも通り出来るようになった。

 久しぶりに拠点で筐体に触れた時は、本当に嬉しくて堪らなくて…筐体に向かって「ただいま……帰ってきたよっ…!」なんて言ってしまう始末で…


 jubeatに出会えたからこそ、巡り会えた…jubeatには、感謝してもしきれない。

「これからも、よろしくね…?」

 そうjubeatに一言残して、今日もjubeatに明け暮れていったんだ。


 ◇ ◇


 -とある日


 いつも通り、みんなでjubeatをしていた時、一通のメールが俺の携帯に届いたんだ。


《もし良ければ、今度お会い出来ないですか?》


 文章の他に、その人の写真も添付されていて、送り先のURLは【恋人募集の掲示板】からだった。


 何気なく、彼氏が欲しいなと思っていた俺は、夏前ぐらいに、この掲示板へ書き込みをしていた。


 その後は、掲示板に書いたことすら忘れてjubeatにどっぷりとハマりこんでいたんだけれど…

 まさか今になって、誰かから連絡が来るなんて考えてもいなかったから、正直驚きが大きかったんだ。


 でも、添付されてきた写真を見て、その男性が俺のタイプだったことは紛れもない事実…


 それと…翼さんのことも、退院してから俺たちの関係は、何一つ変わっていなかった。


 

 

 の気持ちがなんなのか、分からなくなってきて…好きになりたいはずなのに…


 この関係だけで、十分に幸せだったから…やっぱりを翼さんには言いたくなかった…


 俺の心になんて、どこにもなかったんだ…


 だから俺は、どこかで心の逃げ道を探していたのかもしれない…

 他の誰かを愛せたら、翼さんとも今のままでいられる気がする…

 そうだ、傷口は…もう、身体にも心にも作りたくない…


 そんな、身勝手な思いのまま俺は

《良ければ会いましょうか、よろしくお願いします》

 とメールをくれた彼に返信をして、実際に会ってみることにしたんだ。


 これで、きっと良かったん…だよね…?

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