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午後の空は快晴。
気持ちのいい風が吹いてる。
学校屋上の柵を握りしめて俺はため息をつく。
満十六歳、高校一年生。男。十和田深月。友達にはトワって呼ばれてる。
恋をしました。
「した、んだけどなぁー…」
好きになった人は一回り年上の先生。男。積極的に話しかけて仲良くなっても教師と生徒。せいぜいお友達ってとこ。更に同性とあってはどうしようもなく。今日は授業のことでもなく話し続けてしつこくしてしまい、苦笑しながらもう帰りなさい、なんて。かなしくてさみしくて。
思わず告白、しちゃって。冗談だろ、って。
教員室から出る間際、ちらりと見てしまった迷惑そうな困り顔に打ちひしがれている俺です。
「はあ~~~~…」
やっちゃったなあ。せっかく友達レベルにはなれたのに、あんな顔を見てしまえば気軽に話しかけることさえ躊躇ってしまう。だって、恋だから。冗談じゃねーし。ただ懐いてんのと違うんだよ。そりゃ最初っから可能性は低かったけれども!でも、失敗したなあ、と落ち込んでしまう。ただの仲良い生徒ポジションさえ失いそうでため息が止まらなかった。
帰りなさいって言われたけど直ぐ帰る気にはなれずこうしてうららかな天気の屋上でぼんやり空を眺めている。自分の部屋に入ったらもうため息どころか涙腺崩壊しそうなんだもん。まだ、もうちょっとでいいから好きでいたい。初恋、だし。
「どうして好きになっちゃったんだろう…」
面食いの自覚はあった。ちょっと顔がイイ人と目が合うと赤面する
「もう何も言えねえー」
って感じ。
高校デビューで初恋デビュー。
周りも彼女なんかできたりしてて恋ってどんなもん?って実は憧れてた。でもな〜。よりによって先生かよ~先生だよ〜って感じ。無理だよなー。うん。
帰って号泣して忘れよう。
そんなふうにやっと切り替えて、最後少し、柵に足をかけて伸びをして深呼吸。そしたら帰ろうって。
「死んじゃだめぇーっ!まだ若いんだからっ、一緒に頑張、あれっ?」
「ぎゃあああ!落ちッッッ」
思ってたのに突然背中に突撃されて視界がぐるんと回って、あっという間に宙に放り出されていた。
うん。なんか多分自殺しそうな危ないやつと間違われたんだと思う。いや死ぬつもりはなかったけどさ。でもちょっと、消えたい気持ちはあった。だから恨んでない。それより助けようとしてくれたのにごめんな。あんまり気に病まないでくれたらいいんだけどなあ。
青い空がぬけるようで綺麗だ。地面は見えない。空の中にふわふわ光る模様が見えた。丸い円の中に見たことない象形文字みたいな見たことない文字がたくさん並んで、真ん中に星が重なったみたいな絵が描かれてる。まるで魔法陣みたいなそれが二つ、重なってて…青い方の円に吸い込まれた。気がした。
「えええーっ、嘘、ごめ、やだあーっ!僕も落ちッアー!」
誰かの叫び声を背景に。
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